Posts Tagged ‘福島第一原発 原発事故’

原発事故はリスクではなく不確実性

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山口巌氏のリスクと不安を読みました。大変興味深い内容でした。基本的な主旨には賛同します。ところでこの記事が福島第一原発を代表例とする原発事故について述べているのであるとすると、事故や被災による異常状況のすべてを「リスク」として確率を計算する事は難しいのではないでしょうか。山口氏が触発された池田信夫氏のこの記事の他に、池田氏は下記のような記事も書いています。

主観的確率というレトリック*

福島第一原発のある場所に8メートル以上の津波が到来する確率は、周辺の地層を広い範囲で調べるなどの地質学的調査により、津波の高さと年代をまとめれば、その確率を計算する事ができます。しかしながら14メートルの津波が到来した場合に発生する外部電源喪失や、2次冷却系や、その他の致命的な設備機能不全は、リスクではなく不確実性であると考えます。

これらをリスクではなく不確実性と考える理由は、施設の設計やメンテナンスや改善は人間の意思により決定され、実施されるものですから、その結果を機械的な確率論で計算する事は困難だと考えます。

要するに、津波が明日来る確率は計算可能だが、それにより施設がどんな障害を受けるかは不確実だという事です。これは福島第一原発と第二原発の損傷程度が違う事をみれば明らかではないでしょうか。

重箱の隅をつつくような突っ込みで恐縮ですが、リスクと不確実性の違いについて気になりましたので指摘してみました。


Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/04/18 at 19:32

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低量の放射線被爆が発癌リスクを下げる根拠

今日の「たかじんのそこまで言って委員会」は有意義な内容でした。前に出演した日本放射線学界の中村仁信理事が、「放射線は微量ならむしろ健康に良い」という発言が番組終了後に物議をかもしたようで、中村氏にちゃんと説明してもらおうという事になりゲスト出演となりました。また中村氏はもとICRPの委員でもあり、、直線しきい値なし(LNT)モデルへの意見も述べられました。

まず最初に、放射線被爆するとなぜ癌や白血病になるのか、その理由について考えます。放射線被爆が健康に悪いといわれる原因は、被爆により体内で活性酸素が作られるからです。

ところで活性酸素は放射線被爆以外にも、日常的に大量に体内に生じています。喫煙で活性酸素が増える事や、活性酸素が老化を促進する事は周知の事実といえます。活性酸素は体内に必要な物質ですが、余った活性酸素は細胞内のDNAを壊して癌や生活習慣病や老化の原因となるといわれています。

体内の余剰な活性酸素が細胞内のDNAを壊しても、壊れたDNAを自動的に修復する機能が備わっています。更に修復されなかった細胞が癌化しても、その多くは細胞が自壊するようになっているそうです。自壊しなかった癌細胞は、免疫機能に捕捉され壊されます。それでも生き残った癌細胞も、極めて少数では頑として発病しないそうです。人間にはこのように、活性酸素から癌が発病しないように、何重ものフェイルセーフ機能があります。

ところで人間が持つ免疫力にしろ活性酸素の対処機能にしろ、適量範囲において使えば使うほど能力は向上します。適量の運動が筋力や心肺能力を高めるのと同じです。低量の放射線に長期被曝していると、体内で発生する活性酸素のアベレージが適量に高まり、それにより対処能力が向上するそうです。

以下は台湾の例ですが、コバルト60が鉄筋に混入したアパート住民の健康影響調査において、一般人の発ガン率3%に対して、長期被爆した住民の発癌率が大幅に低かったという疫学調査研究例です。

これは非常に興味深い研究結果といえます。

運動と健康の関係を考えた場合、心肺機能や筋力を高めるに、スポーツ選手は激しい運動をします。運動により身体は一時的に損傷しますが、それが回復すると身体機能は前より高まります。身体に運動というストレスを与えないと、身体は損傷しないかわりに機能向上しません。

外でよく遊ぶ子供は怪我する機会も多い。怪我をすると化膿菌が体内へ侵入して、一時的には細菌感染した状態になる。細菌が侵入すると免疫機能が細菌と戦う。これ自体は健康に悪い。しかし日常的に傷口から化膿菌の侵入が繰り返されると、体内の免疫能力は高まり、外傷によって化膿し難くなる。実際に外でよく遊ぶ子供は、大人にくらべて、外傷で化膿し難い。これは私の経験(小学生の頃は平気だった擦過傷が、中学校高学年では容易に化膿してしまった)とも一致する。

放射線の健康への影響が活性酸素によるものだけであるならば、低量長期被爆は、体内の活性酸素への対応能力を向上させると考えられるので、活性酸素由来による癌、白血病、生活習慣病、老化への対応能力を向上させる事が期待できると理論的に考えられるという事になります。

最後に、ICRPの委員の中にも、直線しきい値なし(LNT)モデルは古い考え方であり、閾値があると考える委員も増えてきていると中村氏は述べていました。ただ、現在のモデルは世界中に広範囲に広がっており、(筆者の受けた印象ですがICRP内部の政治的な問題により)別のモデルに変えるのは現状では難しいとの事です。

4 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2011/04/17 at 17:21

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東電株主が遭遇したブラックスワン

原発事故というブラックスワンがありましたが、より投資的な意味において、今回の原発事故は東電の株主や社債へ投資していた人にとってブラックスワンであったのだろうと感じました。

まな板の鯉のゆくえによれば、長期保有できる安全資産の代名詞であった東電の株は、一夜にしてハイリスクなビジネスであった事が分かり、株価は暴落しました。まさにブラックスワン。

(引用開始)
原発事故が勃発する前まで、東電の株式は長期保有ができる安定配当株、東電が発行する社債(電力債)は、国債に並ぶ安全資産の代名詞でした。このため、60万人以上いる個人株主は、安定配当狙いの長期保有者が多かったでしょうし、社債権者も元本保証を最優先する資金を債券購入にあてていたことでしょう。こうしたリスク回避型の投資家に甚大な被害をもたらしているという意味で、今回の東京電力の経営危機の影響は、個人投資家にとっても深刻です。

(引用終了)

大震災の後の今であれば、原発事故が深刻化するリスクは明白であった訳です。東電の株や社債を「安全」と言われて購入した人たちは、津波の危険について改善を怠った経営陣に対して、はたして株主代表訴訟を起こすのでしょうか。国営化を防ぎ、放射能汚染の補償金を政府から引き出す事ができたとしても、東電の経営陣が歩く道はかなり険しいようです。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/04/07 at 11:30

Categories: 1.政治・経済   Tags:

二兎を追うもの一兎を得ず

福島第一原発の1・2・3号炉からの広域放射能汚染がはじまった主要な原因は、圧力容器の破損です。しかしメルトダウン=圧力容器の破損ではありません。なぜ圧力容器が破損したかといえば、バッテリーによるECCS稼動が停止(推定11日23時)してから海水注入(12日20時)まで21時間もの時間を要したのと、圧力容器の減圧に失敗したのが最大の理由です。

21時間の理由は、東電経営陣が高価な原子炉の廃炉を認めなかったからというのが、今のところ有力な仮説となっています。菅首相は津波で冷却機能が喪失してからすぐに海水注入を要求したが、東電は認めなかったと。

これが正しいとすれば、東電は1・2・3号炉の廃炉を渋った為に、当時は停止中であった4・5・6号炉も一緒に失う羽目になりました。なんとも皮肉な事ではありませんか。そしていまは、福島第二原発の4基の原子炉も風前の灯のようです。

東電経営陣は、いまさら悔やんでも悔やみきれないでしょう。もし津波で冷却機能が喪失した時点で、1・2・3号炉の圧力容器へのホウ酸注入と、海水注入を即時開始していれば、こんな事態まで進行しなかったでしょう。

東電の運命の分岐点は、11日の15時から23時までにあったと考えられます。この時間内で、3つの原子炉を安全最優先で対応するべく、潔く廃炉を認めなかった事。つまり、東電のウェブサイトに明記されているリスクマネジメントや企業倫理遵守がしっかりと実行できなかった事が、この事態を引き起こしました。池田信夫氏や藤沢数希氏は原発を擁護していますが、東電のこの致命的な経営判断ミスによって、福島原発だけでなく、いまや世界の原発が危機に瀕しています。

参考:
原発の常識
原発を擁護する

8 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2011/04/05 at 00:58

Categories: コンピュータ及び科学全般ネタ, 1.政治・経済   Tags:

チャイナ・シンドロームは起きるか?

結論から言うと、福島第一原発の沸騰水型原子炉(BWR)では、最悪の事態である圧力容器の破壊と炉心の完全なメルトダウンが生じても、建物の構造が炉心が冷えるまでいつまででも受け止め続けられるので、チャイナ・シンドロームは生じないと、MITのJosef Oehmen博士は述べています。(こちらを参照

本記事で述べている、炉心溶解後しても大丈夫な理由を下記に引用します。

The containment structure is a hermetically (air tight) sealed, very thick structure made of steel and concrete. This structure is designed, built and tested for one single purpose: To contain, indefinitely, a complete core meltdown. To aid in this purpose, a large, thick concrete structure is poured around the containment structure and is referred to as the secondary containment.

(以下は簡単な訳)
containment structureは、密閉して(気密)封印された、非常に厚い鉄鋼とコンクリートで作られた構造です。この構造は、ただ一つの目的の為に設計され、建設され、テストされました : 完全な炉心溶融を無期限に含む事です。この目的を支援するために、大きくて、厚いコンクリートの構造は、containment structureの周りで注がれて、二次格納施設と呼ばれます。

この記事が正しい事を願っています。

また、池田氏のブログで紹介されたイギリス政府による福島原発事故の影響評価によれば、仮に炉心が完全にメルトダウンした最悪の事態が生じた場合でも、発電所から50キロ離れれば、健康にはほぼ問題ないようです。

追記(2011/3/17 16:37)
Josef Oehmen氏は本記事で引用した最初の記事に対して、毎日のようにupdate記事を掲載しています。そちらの記事もぜひご参照ください。

追記(2011/3/18 21:24)
執筆者の名前をBarry BrookからJosef Oehmenへ修正しました。元のブログがpost by Barry Brookになっていたので勘違いしました。

【お勧め記事】
MIT原子力理工学部による改訂版・福島第一原発事故解説
MIT原子力理工学部による1、3号炉の水素爆発に関する解説
大地震後の東電福島第一原子力発電所の状況(推定)早稲田大学 岡芳明教授
原子炉・放射線に関して:豪州SMC発・専門家コメント

2 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2011/03/16 at 17:45

Categories: 1.政治・経済, 2.科学技術   Tags:

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