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日韓併合の客観的事実を検証する

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私も松本氏と同様に日韓関係は改善されるべきだと考えますが、その為のアプローチは少し異なります。戦時中の慰安婦問題や強制労働問題を含めて日韓間で政治問題化する歴史問題はすべて、大韓民国の初代大統領である李承晩が日韓併合時代を全否定する歴史修正の上に国家を作った事が原因です。ならば日韓間の関係を根本から正常化するには、日韓双方が併合時代を正しく評価し直す事が必要になります。具体的には、日本国民は日韓併合がなぜ起きたかという事を歴史的な事実に基いて正しく認識する事が必要です。また韓国政府は、意図的な歴史に修正と反日プロパガンダと自国民への親日狩りを止めて、国民に対して事実に基づく正しい歴史の教育を行う事う必要があります。これによって日韓双方の政府と国民の「日韓併合時代の認識」のすり合わせが初めて可能になると考えます。その第一歩として、まずは松本徹三さんの「日韓併合」の正当性を唱える人たちへの最終メッセージについて、以下に反論を行います。

 

私は、「日韓併合条約」は「日本が自らの利己的な目的(国益)の為に、独立国であった大韓帝国の主権者の意志に反して、武力による威嚇を背景に強制的に締結したものである」と理解している。この理解が正しくないと考える人は、上記に含まれる「利己的な目的」「主権侵害」「武力による威嚇」の三要素がなかったと主張されるのだろうから、もしそうであるなら、その根拠を示して頂きたい。先ずは、「それが事実だったかどうか」のみに絞って議論して頂き、その上でその事の「善悪」についてのコメントが欲しい。

 

この理解は間違っています。それを明らかにする為の「事実」を以下に列挙しますので参照ください。

 

1)1904年、一進会は日韓合邦運動を開始。(*1)

2)1909年12月4日に一進会は韓国皇帝・曾禰荒助統監・李完用総理大臣に対して、日韓合邦に関する上奏文と請願書を提出し、合邦声明書を国民に配布。(*1)

3)1910年(明治42年)8月28目、日本側から韓国政府へ「条約案」を提示。(*1)

4)1910年8月8日に「条約案」が韓国閣議を通過。(*1)

5)同年8月22目、李完用総理大臣と寺内正毅統監との間で「韓国併合に関す条約」が締結。(*1)

6)併合直後に一進会は他の団体とともに解散を命じられた。(*1)

7)李容九は併合後に「日本にだまされた」と述べたと伝えられる。(*2)

8)併合10年後に、旧一進会会員から同会の顧問だった日本側リーダーの杉山茂丸に対して、「併合の結果は日韓国民の聞に著しい差別をもたらすものであり、無差別平等の対等合邦ではなかった」と、その責任を問う問責状が送付されている。(*2)

 

また、上記2における一進会の合邦声明書の和訳(*3)があるようなので、下記の引用します。

 

日本は日清戦争で莫大な費用と多数の人命を費やし韓国を独立させてくれた。また日露戦争では日本の損害は甲午の二十倍を出しながらも、韓国がロシアの口に飲み込まれる肉になるのを助け、東洋全体の平和を維持した。韓国はこれに感謝もせず、あちこちの国にすがり、外交権が奪われ、保護条約に至ったのは、我々が招いたのである。第三次日韓協約(丁未条約)、ハーグ密使事件も我々が招いたのである。今後どのような危険が訪れるかも分からないが、これも我々が招いたことである。我が国の皇帝陛下と日本天皇陛下に懇願し、朝鮮人も日本人と同じ一等国民の待遇を享受して、政府と社会を発展させようではないか。

 

上記の事実をそのまま受け止めれば、日韓併合条約は日韓それぞれが国益の為に自ら進んで締結したものであり、たとえ日本の主権侵害や武力による威嚇があったとしても、それが条約締結の主な理由とはいえないと考える事は合理的といえます。私が「事実」と述べた上記の1から8について、もし別の事実があるという事であれば文献をご提示ください。入手可能であればぜひ参考にさせて頂き、改めるべきは改めます。

善悪についてコメントせよとありますが、善悪という価値判断はそれを判断する人が属する時代や文化によって異なります。キリスト教は善か悪かと問うのが無意味なのと同様に、酒場の与太話以外の目的で、日韓併合を善悪で語る事はまったく意味がないと考えます。

 

最後に道義的な面について考えてみましょう。松本氏の問いを記事中から引用します。

「インカ帝国を滅ぼして大量の金を奪ったスペインの行為をどう思うか」「清国に対してアヘン戦争を仕掛けた英国の行為をどう思うか」という質問も同時にすればよい。肯定であれ否定であれ、この二つの質問に対する答えは、「日韓併合」についての質問に対する答と同じであるのが当然だ。

この二つの問いに対する答えは、日韓併合はスペインやイギリスの植民地と「同じではない」という事です。日韓併合の主目的はロシアの南下を防ぐ為の政治的な対策である事は周知の事実です。その為に、日本政府は朝鮮へ20億7892万円もの投資を行い(*7)、行政の整備、インフラ投資・農業や教育の振興などを重点的に行い、結果として朝鮮半島の民は極貧の状態から大きく改善し、経済発展しました。スペインやイギリスのような植民地の搾取を日本は行いませんでした。下記に表したそれらの事実によって、日本の日韓併合が現代の価値観に基いて道義的に責められる理由はないと考えます。

1)1920ー30年代の朝鮮半島のGDPが4%に増大した。これは日本の資本により発電所・鉄道・港湾施設・肥料工場・重化学工場などが建設され、農業振興により米の収穫量が(1910年に1617千町歩の耕作面積が1918年には2800千町歩に)増大したなど、朝鮮半島全体の経済発展による。(*4)

2)1910年に1313万人の人口が、上記1の経済発展により1942年には2553万人と倍増した。(*5)

3)1911年に公布された朝鮮教育令(後に2度改定)により、併合時に100校しかなかった小学校が1943年には5960校となり、学校では日本語・漢字・ハングルの教育を推し進めた。1910年に6%程度だった識字率が1943年には22%に増大した。(*6)

繰り返しになりますが、日韓が「公正で偏らない判断をベースにした是々非々の議論」行うには、日本側は自虐史観でねじまげた日韓併合の歴史を葬り去って、事実に基づく正しい歴史認識を行う必要があります。同時に韓国側は、反日史観でねじまげた歴史を葬り去って、歴史的事実を直視して受入れ、正しい歴史に基づく歴史認識を行う必要があります。双方がこれを行う事ができなければ、日韓関係を根っ子から正常化させる事は難しいでしょう。

その手始めとして、本記事作成でも資料として引用した2冊の参考文献を一読される事をぜひお勧めします。「韓国併合への道 完全版」は、李氏朝鮮時代から日韓併合へ至る歴史的事実が比較的淡々と述べられており、筆者の価値観による色付けが比較的少なく読みやすい本です。「歴史再検証日韓併合」は統計的な数字や表をもとにいろいろな考察が述べられていて興味深い内容ですが、筆者の価値観がちょっと強くでているので、その辺は割り引いて読む必要があるでしょう。「金完聾 – 親日派の為の弁明」も読みましたが、筆者の価値観が強く出すぎているのと、内容がかなり重なっているので、前の2冊を読んだ方にはお薦めしません。もし他に、手頃な値段で入手可能な朝鮮半島の近代史についてお勧めの文献がありましたらぜひお教え下さい。参考にさせて頂きます。

 

参考文献:

1)呉善花 – 韓国併合への道 完全版 207ページを参照。

2)呉善花 – 韓国併合への道 完全版 208ページを参照。

3)韓日合邦を要求する声明書

4)崔基鏑 – 歴史再検証日韓併合 83ページ 朝鮮の耕地面積の推移を参照。

5)崔基鏑 – 歴史再検証日韓併合 32ページを参照。

6)呉善花 – 韓国併合への道 完全版 240ページを参照。

7)崔基鏑 – 歴史再検証日韓併合 25ページの表3を参照。

石水智尚

艾斯尔计算机技术(深圳)有限公司 総経理

本記事はアゴラへ投稿いたしました。


6 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2013/10/30 at 17:25

Categories: 韓国, 1.政治・経済   Tags: , ,

セカ就を直球ど真ん中から考えてみた

最近はセカ就という言葉が流行っているようです。日本の将来が見えにくい、海外の方が刺激的、成功する機会が多いなどと言われ、日本を飛び出して外国で就職しようと言うことのようです。昨日、Podcastのオンザウェイ・ジャーナルで、米QED社の藤田浩之氏へのインタビューを聞きました。藤田氏はまさに、米国で医療機器メーカーを起業してグローバル化に成功した「セカ就」の代表選手といえます。だれもが彼を目指すのは難しいのでしょうが。一方で、BLOGOSで紹介された森山たつおさんの海外就職という選択肢をもっと知ってもらいたいという記事は共感を持つ事ができました。

 

かく言う私も85年に日本を飛び出して以来、香港・フィリピン・大陸中国で5回転職し(いづれも現地採用)、会社()も6つ以上作りました。就職したり起業したりして今に至っています。以前に、海外脱出を敗者復活戦として考えてみるというブログ記事を書いていますが、今回はセカ就を直球ど真ん中から語ってみたいと思います。大学で就活をしている方、就職したが現状に満足していない方、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。

 

1)海外で働きたいと考え始める時期:

私の場合は、大学を卒業して就職した年(1985年)の夏でした。従業員1000人ほど(9割弱は客先へ派遣で不在)の中堅ソフトハウスで、プログラマとして就職し、入社1ヶ月目で某電気メーカーの次期ミニコンOSの開発プロジェクトに配属されて、田町の本社と客先の間を、開発とデバッグで数ヶ月間行き来していました。客観的には、そこそもおもしろい仕事だったのだと思います。しかし、実機が完成するまでの数年間、いまの日常がずっと続くのかと思うと、その安定感が我慢できなくなりました。そんな時に、田町の駅前で人材バンクの登録ハガキをもらったのをきっかけとして、「海外勤務希望」と書いて郵便ポストへ投函したのが海外転職のはじまりでした。ハガキを出してから数日後、人材バンクの方から電話があって、「あなた、これ、真面目に希望されているのですね?」と念押しされた事をいまでも覚えています。

 

現在はインターネットで(この記事も含めて)いろいろな情報を豊富に集める事ができます。ゆえに、日本の大学で就活の最中、留学中、就職した後など、海外で働きたいと考え始める時期は広がっていると思われます。

 

2)海外転職へのアプローチ:

この記事の主旨は「直球ど真ん中」ですから、対象を就活中の大学4年と社会人に絞って話します。昔も今も、(凄い学歴、キャリア、特殊技能などの無い)日本在住の普通の人が海外で働きたい場合、日本国内の人材バンクへ登録するというのが「王道」でしょう。そのメリットは、「本社採用」の駐在員として現地へ派遣され、現地採用の日本人とは比較にならない高い待遇を得る事ができます。本社採用の具体的メリットは下記の通りです。

 

ー現地での就業ビザの取得が容易(現地採用の就業ビザ取得は必ずしも容易ではありません)

ー国内就労と同等の給与額(現地採用の給与は駐在員よりはるかに低い)

ー国内の健康保険や社会保険へ加入(現地採用は、会社では面倒を見てくれない)

ー現地での住宅手当(現地採用の場合も皆無ではないが金額におおきな差がある)

ー駐在員用の医療保険(現地採用の場合は一般的に無い)

ー家族を含む年1回程度の帰省費用を会社負担(現地採用の場合は一般的に無い)

 

アジアには多数の日本企業の工場や事務所が進出していますが、その多くは地方の中小企業です。そのような会社では、社内の生え抜きに海外勤務希望者が極めて少ない為、外部から募集する事が少なくありません。

 

余談ながら、留学中の学生が現地で就職活動をする場合は、本社採用ではなく待遇の悪い現地採用になります。現地採用の待遇は本社採用よりはるかに悪いと書きましたが、良い面もあります。駐在員は、いつかは社命により帰国させられますが、現地採用は解雇されるか転職しない限り、その会社で働き続ける事ができます。現地採用でペーペーからはじめて副総経理になった友人がいます。その会社では、総経理は3年程度で新任に交代して帰国しますので、駐在員が交代しても現地ノウハウが継続されるように、現地採用者を現地のエキスパートとして抜擢してナンバー2にしたようです。

 

また、多くの日系現地企業は、現地採用の日本人は現地の人材バンク経由で求人しており、わざわざ日本国内で求人していません。最近は<a href=”http://www.r-agent.com/info/lp/global/001/?vos=evpvrag1012x0003530″ target=”_blank”>リクルート</a>など国内大手も海外展開を始めていますが、海外現地での力はまだ強いといえません。ゆえに、国内では見つからなかった求人が、現地の有力な日系人材バンクで見つかったという例は多いでしょう。どうしても特定の海外都市で働きたいという場合は、現地の人材バンクへ登録するのが早道と言えます。

 

3)語学が先か業務能力が先か:

本社採用を考える場合は、まずは「海外で働きたい」という意思、次にその会社の求める業務能力、最後に現地の会社内で使う外国語の会話能力(読み書きは最後の最後)となります。既に海外で稼働中の会社である事が多いので、ある程度の業務知識が要求されます。同業他社から即戦力としての転職でない場合は、国内で1−2年間研修させられる可能性もあるでしょう。語学がなぜ最後になるかというと、日本にいる経営者の目線は業務の継続性にあるからです。候補が複数人いる場合には、現地で働いた経験や現地語を習得している事は選考時に有利となるでしょう。

 

4)外国との距離を狭める:

世界といってもロンドンの都心から四川省の奥地まで生活環境はピンキリです。社畜も厭わないプロのサラリーマンは、どんな辺鄙な場所へでも辞令1枚で単身赴任していますが、そういう生活を望んでセカ就を考えている訳ではないでしょう。できるだけいろんな国へ旅行して、自分が住めそうな生活環境のボトムラインを見つける努力をしましょう。こんな国・都市で仕事をしたいという希望が膨らめば、その場所へ何度も通ってみて、どんな日系企業がそこにあるのかを調べてみましょう。具体的な勤務地の希望があれば、国内にしろ現地にしろ、人材バンクはより強力なツールとなり得ます。

 

5)海外就業経験はキャリアになるか:

日本のメーカーは中小零細も含めて20年以上前から工場を海外展開しており、現在もその流れは続いています。大企業は基本的に人材の調達と育成は社内で完結していますが、中小企業では(大陸中国やフィリピンへ進出した中小企業を見るにつけ)きちんとできていないところが圧倒的に多いと感じています。海外勤務経験者、特に現地法人の管理職経験者は今後更に需要が増えるでしょう。そういう意味では、本社採用されて現地へ駐在し、何度かの駐在と帰任を繰り返す事で最終的に現地責任者になる事が、海外就職経験を付加価値のある普遍的なキャリアにする最短距離である事は間違いないでしょう。

 

 

まとめ:

海外へ就職するというのは、私の経験から言っても、とても刺激的であり興味深い経験です。しかし、セカ就を単純なキャリアアップのツールとして考える事には無理があります。海外で生活するというリスクもありますし(国内で生活していても全てのリスクから逃れるという事はできないのですが)、現地の生活に馴染めずにストレスを溜めるかもしれません。私が香港で最初に就職した会社は、なんと半月後に倒産してしまいました。たいしてショックを受ける事もなく、「さて次はどうしようか」と考えながらブラブラしている時に、アパートの大家さんの紹介で中国人経営(私のボスは日本人)の貿易会社への転職が決まりましたが、もし私が気弱な精確なら、すぐに帰国してしまったでしょう。

 

外的刺激をストレスと感じるかエキサイティングと感じるかは、最後はその人の気質次第です。仕事にしろ生活にしろ、いろんな問題を前向きに考えて楽しめるような方に、セカ就をお薦めします。

 

石水智尚

艾斯尔计算机技术(深圳)有限公司 総経理

本記事はアゴラへ投稿致しました。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2013/10/26 at 09:19

Categories: 1.政治・経済   Tags: , ,

オープンソースERPによる中小ソフト会社の生き残り戦略

日本では、業務システムの開発案件というのは、一部のゼネコン的な大企業に集約され、実際の作業は下請けの中小零細企業へ丸投げされる傾向があるようです。その大企業が最近、下請けを海外へ切り替えているそうです。そうなれば国内の中小零細のソフト会社が生き残るには、何らかのパラダイムシフトが必要だと主張するのは黒田啓一氏です。

もはや日本は『ものつくり』大国ではない – 黒田 啓一

私は業務システム関係の仕事をしており、香港で受注して中国で開発したり、中国で受注してフィリピンで開発したりを98年からやっているので、システム開発のアウトソースやリモート開発のメリットもデメリットも良くわかります。そういう意味で言うと、黒田氏が指摘された国内受注の海外(特に中国への)アウトソースは今後更に増大してゆくでしょう。アジアでも特に中国人は日本語と漢字との親和性が高く、黒竜江省には日本語学校がたくさんあり、毎年多数の、日本語検定一級者を出しているようです。

では国内の中小零細ソフト会社が生き残る道は無いのかといえば、最近私は、オープンソースERPソフトに道があるのではないかと考えています。中小零細ソフト会社は、資本力や人的資源が弱い関係で、総合的な機能を有する標準パッケージソフトを事前に開発して用意するのが難しいという問題があり、経営的にITゼネコンから独立するのが難しいという問題があると考えます。

こういう会社が、受発注から財務まで総合的な機能を有するオープンソースERPソフトを担ぎ、カスタマイズを自社でやれば、システムの営業から納品まで、1社でできるようになり、収益性が高まり、下請け地獄からの脱出の道も開ける可能性があります。あとは営業力をどう付けて行くかという事ですが、これは会社の経営者が、会社が立地する地元社会とのつながりを深めて行けば、ある程度のビジネスチャンスを掴む事は可能ではないでしょうか。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/09/30 at 13:10

Categories: コンピュータ及び科学全般ネタ, 1.政治・経済   Tags:

国家は永続する存在か?

借金をどんどん借り換えてゆけば、借金の総額はどんどん膨らんでゆく。早晩、信用力の限界がきて、新しい借り主が見つからなくなれば、その時点で破綻します。サラ金地獄の典型例のような話ですが、今日は国家の借金についての話をします。日本政府は膨大な借金を抱えていますが、もっともっと借りる事ができると主張する経済評論家がけっこう多いようです。国家は永続的な存在だだからです。しかし、別の理由でお金が借りられなくなる事もあります。。。と続けているのは経済学者の池尾氏です。

「いまさら聞けない経済学」の予習

記事の内容は私のような経済学素人でもわかりやすい内容ですし、基本的に異論もありませんが、「国家が永続的な存在」という部分がちょっとひっかかりました。たしかに日本民族の国家という意味では永続的であるかもしれませんが、お金の借り主としての国家は、永続的とは言えないかもしれません。

1945年8月15日に日本が無条件降伏した後、日本がアジア各地で発行した軍票は、文字通り紙くずになりました。最近ではカダフィー政権のリビアに貸した大金が、政権崩壊で貸し倒れになりかけています。外からみた国家は永続的であるかもしれませんが、政権の交代の仕方によっては、前政権のお金が無効になってしまう事があり得るかと思います。

こうして考えると、日本国政府というのは、お金の貸し手として永続的存在とはいえないような印象があります。

より大きな問題は、理論的にこれが正しいか否かではなく、国債の買い手である借り主の多くが、いつか、このような印象に左右される時がくるだろうか、という事かと思います。なぜなら借り主とは理論ではなく感情に支配された人間であるからです。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/09/24 at 23:43

Categories: 1.政治・経済   Tags:

世代別選挙における小幡氏の勘違い

日本は超高速で、人口に占める老人の比率が増加しています。このように特定の年齢層が増大すると、政治家を選ぶ選挙では、特定の年齢層の利益を代表する政治家が選ばれやすくなるという考え方があるようです。たとえば年金の場合、老人の有権者は、現在受け取っている年金を維持または増大させてくれる政治家を選ぶインセンティブがあるという事です。そこで、ドメイン投票法という「世代別選挙区」を小黒氏が紹介しました。

ドメイン投票法:なぜ20歳未満は選挙権をもてないのか

それに大して異を唱えたのは小幡氏です。選挙における投票とは、自己利益を最大化するために、自己の利益を実現してくれる代理人を選ぶのではなく、日本全体、世界全体、将来の日本、世界について、一番いい社会を実現するための、社会全体の代表として誰が良いか、という観点で、議員を選ぶのであると述べています。

選挙権と少子化の関係の誤解

これは間違いなく小幡氏の仕掛けた「釣り」でしょう。しかしまあ、無邪気に釣られて反論してみると、こんな感じになるかと思います。

すなわち、若者も老人も、意識としては日本の為、世界の為に選挙で政治家を選んでいるというのは(百歩譲って)正しいとしましょう。ところで各年齢層の有権者が「日本の為」と考えている理想は、その年齢層に共有する価値観(そんなものが有るとすれば)から生み出されています。年齢層によって価値観が違ってくるので、各自が「日本の為」と信じて投票しても、結果としてはその年齢層に都合の良い「利益」の代表者を選ぶ事になってしまうのであります。

ちなみに、「みんな平等」という欧米的な平等思想に照らすと、未成年者に選挙権が無いというのは原則に反する事であり、その点でドメイン選挙法は興味深いアイデアかと思われます。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/09/20 at 15:31

Categories: 1.政治・経済   Tags:

企業は今も成長している

日本国内の経済は、「失われた20年」と言われるように、横這いか下降線の状態でした。デフレの理由は経済が成長しない為であり、その理由は「生産性の低下」が原因だという人もいます。

先ず目指すべきは「生産性の向上」

しかしながら日本の企業はこの20年間、日本の外で成長を続け、いまや国外には1.8個分の資産があるそうです。日本企業の生産低の低下と経済停滞は国内だけの話しで、海外では生産性を向上させ、成長を続け、資産を増大させて、アジアの人たちを養ってきたのです。

日本の経済がかくもアジアへ資産拡散させ、鎖国する事もできない時に、国内だけの経済の話しをしてどんな意味があるのでしょうか?日本の資産とインカムがアジアに拡散しているのであれば、経済政策も汎アジア的なものであっても良いのかもしれません。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/09/19 at 13:15

Categories: 1.政治・経済   Tags:

放射能入り食べ物をどう考えるか?

武田邦彦氏はブロゴスやそこまで言って委員会で、福島第一原発事故による放射能汚染がはじまった後から、人間の低放射能被爆の影響は未知であるから、0.1ミリシーベルトを20ミリシーベルトへ「勝手に」変更したのは違法であり、放射能汚染された東北の農産物は食べるべきでないと、かなり強硬に主張しています。たしかに医療の観点から見れば、未知のものに対しする予防対策としては、過剰なくらいにマージンを取るべきだという主張は理解できない訳ではありません。

東北のノート、トイレットペーパー、CDは買えるか?

一方で池田信夫氏は、ICRPが科学的根拠もなく決めた安全基準が50年以上も変わらないのは不合理であり、その後の研究の発展を踏まえて、慢性被曝の上限は100ミリシーベルト/月、生涯の障害線量の上限としては5000ミリシーベルトとすることを彼は提言している著書を紹介しています。

放射能と理性

武田氏は自然科学者ですが、彼の論点は科学ではなく臨床医療あるいは予防医療の視点に固着しているようです。池田氏は経済学者ですが、彼の視点は自然科学です。お互いが、自分の分野とは別の分野の視点で放射能について意見を述べている事は興味深いですね。

私はシステム屋ですが、私の意見は、平時は予防医療の視点で規制値を決める事で問題ないが、ひとたび大規模な汚染が発生したら、現実的な数値に改めるべきだと考えます。

子供は放射能に弱いと考える人が多く居るように感じますが、科学的に考えれば逆だと思います。地球の生物は数十億年のスパンで、ながらく放射線に曝されながら繁殖してきました。その過程で、放射能によるダメージを修復する機能を、生物学的なレベルで発達させたという意見は極めて合理的だと考えます。子供の身体は成長過程にあり、細胞の新陳代謝が高い分、放射能が生み出す活性酸素によりダメージを受けた細胞やDNAは、新しいものに置き換わりやすいと考えています。

もう一つ、放射能汚染により異常児の出産が増えるという話も、科学的にどうなのだろうと思います。たしかICRPの実験でも、放射能と子供の異常との関連は非常に低かったのではなかったでしょうか?

2 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2011/09/05 at 16:52

Categories: 1.政治・経済, 2.科学技術   Tags: ,

ダメージコントロールができない日本人

日本人は、リスクに対する考え方が希薄だという事は、確かにあると思います。その根っ子のところにあるのは、自己責任意識が希薄で、なんでも「お上」頼りの文化に問題があるのではないでしょうか。しかし、ふつうの上場企業は、市場があり、株主がおり、グローバル化している事から、一定のリスクに対する一定の備えを行っているものと考えます。問題は電力業界のように、独占市場で、なんでも政治家頼みで解決できる規制業種は、今回の津波被害への対策が疎かであった事を見ても、リスク管理が極めて甘かったのではないかと言えるのではないでしょうか。

日本でのリスクに関する考え方と、業務に与える課題とは 石川 貴善

日本人に圧倒的に足りないのは、私はむしろ、状況発生前のリスク管理よりも、状況発生後のダメージコントロールの方ではないかと思います。江戸時代の火消しの主な仕事は、火事の拡大を防ぐ為に、火の進路方向にある家を「事前」に取り壊して、延焼を防ぐ事でした。燃えてない家を壊すというという事は、おおきな「割り切り」が必要です。

日本人のダメージコントロールが苦手である事を示す代表例は、日航機ハイジャック事件ではないでしょうか。福田首相は、「人命は地球より重い」と述べて、身代金の支払いおよび、超法規的措置としてメンバーなどの引き渡しを決断したそうです。ハイジャック事件への対応としては、末代まで語り継がれる酷い判断でした。

ダメージコントロールとは、状況を悪化させない為に、一部を犠牲にして残りを助けようとする「割り切り」。しかし日本人は、この割り切りが非常に苦手なようです。

東電の福岡第一原発では、状況発生からかなりの期間、東京にいる経営陣は原子炉の存続を前提とした被害対策を行った為に、かえって被害が深刻化したと伝えられています。初動から「廃炉」を前提とした被害対策を行っていれば、飛散した放射線廃棄物の量はかなり抑えられ、被害総額ももっと低く抑えられたでしょう。

ダメージコントロールが苦手な原因は、責任の所在が不明瞭な組織と、リーダーシップの欠如になるのではないでしょうか。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/09/04 at 09:10

Categories: 1.政治・経済   Tags:

何を守る戦争か?

終戦記念日に日本人は「なぜあんな勝てない戦争に突っ込んだのか」と自問していると、池田氏がアゴラ記事で述べています。確かに国力差も戦力差も明白な米国に戦争を仕掛けるのは、いまから考えれば愚行でした。また、戦況が不利になり、勝つ事が不可能と判断された時点で停戦あるいは降伏しなかった事も悔やまれるでしょう。戦前の政府やマスコミは、米国を鬼畜と呼び、米国に占領されると国民は陵辱されると言い続けたようですが、それが大嘘であった事は終戦後に明らかになりました。

私がアゴラに国を守るという意味を投稿した時には、もし中国が日本の領土目的に開戦しようとした場合(日米同盟が日本の防衛に役立たない状況になっているからこそ、中国がおおっぴらに日本の領土を狙おうとしているという事を前提とすると)、日本は防衛戦争するべきか、その場合の防衛とは何を守ろうとしているのか、あるいは戦争しないで降伏するのか、という話をしましたが、ほぼすべてのコメントは、「戦争するべし!」でした。中国が日本を占領すれば、日本人は(文革前後の時代のチベットのように)大量虐殺されるだけだという意見が大勢を占めました。この「脊髄反射的」な反応は、第二次大戦前の「イケイケ」状態と変わらないのではないかと、いまでも危惧しています。

また、いまだ解消されない疑問は、戦争時に守ろうとしている「国」とは、国土や民ではなく、時の「政府」なのではないか、という事です。太平洋戦争で日本が無条件降伏した時には、大日本帝国という政府が解体されて、現在の日本国という政府に置き換えられただけでした。国家運営をゼロから組織する事は不可能ですから、旧政府から新政府へ移った議員や官僚も多く、結局は政府の「経営方針」が変更されただけでした。

私は、国家という名の「政府」維持のために領土防衛の戦争を行うのであれば、それは多くの国民にとって「無駄」な事であろうと考えます。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/08/18 at 14:00

Categories: 1.政治・経済, 3.中国ネタ   Tags:

大学院の価値

小幡績氏井上晃宏氏が大学院の存在価値について議論を行っています。最近、アゴラも少しずつ投稿者同士の議論が増えてきた感じです。アグレッシブかつスマートに議論をふっかける小幡績に注目しています。ところで大学院については、実は私も意見があるので以下に述べます。

中国にある私の業務アプリ・チームは私と現地採用の2人だけでしたが、昨年暮れから本格的に人員増強を開始して、いままでに3名を採用。うち2人は大学院卒と大学院在学のインターンです。この期間の経験から、学卒と院卒を比較して感じる大きな点は、専門教科の知識の理解度です。学卒は、専門教科と実務が直結している場合でも、かなりベーシックなところから再教育する必要があります。大学院(在学と卒を含む)の場合には、理論面で教える必要性を感じる事はほとんどありません。

わたしが中国でやっている事は、工場の生産性向上や中国特有のリスク低減の為のコンサルを主目的として、その為の道具としてERPや通関管理ソフトなどの導入を行っています。ですので、担当するコンサルの「知識」の深さは非常に重要です。

知識の応用(≠技術の応用)を職業とするあらゆる業種では、専門教科の教育レベルはより高い方が良いと断言できます。恐らく、工学・理学・化学・農学・海洋学など自然科学を実社会へ応用する分野では、同様の事が言えるのだと思います。

その一方で、自然科学でも実社会で利益向上に直接的に役立たない分野(たとえば蝶の研究)、人文などの非自然科学分野においては、「高度な教育や研究」は個人の道楽の延長線上にあり、就職のアドバンテージも皆無である事から、必要最小限で十分であろうと考えます。

判断が難しいは、臨床医療と弁護士と学校教師(小から高まで)でしょう。

臨床医療は、専門的に高度な診断を行う一部の医師には、大学院の修士あるいは博士課程でより専門的な教育と研究を行って、深い知識が要求されるべきだと感じますが、外来患者と直接対面する一般の意思は、学卒程度の知識に、専門的な臨床経験を上乗せするだけで十分ではないかと考えます。

学校教師はそもそも、非協力的な対象に対して知識を与えて理解させる事を目的する職業なので、「教科」の内容を高度な次元で理解している事だけでなく、対象である生徒・学生の心理や挙動、教育そのものについての最新の知識、深い理解がある事が望ましいと考えます。しかし、すべての公立学校の教師を高度な専門化にする事は非現実的な気がします。私学の場合には、院卒や博士をたくさん採用する事は経営判断に任せて良いと思いますが、公立学校の場合、管理職教師は少なくとも引率か博士レベルであるべきかと感じます。

短く結論を述べると、大学院は存在する価値はある。しかし定員については、各分野が持つ知識を売るマーケットの市場規模に応じて、大学院の定員の増減を行うべきかと考えます。増員して市場を膨らまそうという行政や大学による「根拠のない願望」によるPUSHではなく、市場の求めに応じで増員するPULLで対応するべきです。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/08/07 at 08:41

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日本と中国のリーダー

池田信夫氏小幡績氏がアゴラにて、日本リーダーシップの欠如についての記事をアップしました。両者の意見は似ていながら、細部で微妙な違いを見せて、なかなか興味深い記事になっています。

ところで私は、日本と似て非なるお隣の中国との比較をしてみたいと思います。互いに似ていると言うと、双方の国民で怒り出す人が多いかもしれませんが、以下にいくつかの重要な共通点を見出す事ができると考えています。

1)多くの国民は政治(選挙)に興味が薄い。
2)多くの国民は民の問題を「お上」に丸投げして思考停止している。
3)政府が国民を管理しようという意識が非常に強い。
4)政府は国民が愚民である事を前提としている。
5)特定の国民を何時でも逮捕できる理由をつくれる法律になっている。

しかし、日本と中国を見た時に、リーダーシップの点で大きな違いがあります。池田氏と小幡が言うように、日本には政府にも企業にも、強いリーダーシップを発揮するトップが非常に稀です。お隣の中国は、その歴史の大半が強いリーダーの歴史と言えます。最近でも毛沢東や鄧小平など、強いリーダーシップを発揮して国を引っ張ってゆくトップが頻繁に現われます。鄧小平が1979年の暮れに改革開放をはじめてから、30年以上の長期に渡り、歴代の政権が基本的に一貫した政策(国家資本主義政策)をベースとした富国強兵政策をブレずに続けており、GDP世界2位という結果を出した事は特筆すべき事と言えます。

この違いは、池田氏が指摘しているように、民が優秀かそうでないかと大きな関係があるかと多いに関係があると言えるのではないでしょうか。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/08/05 at 21:38

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メールがなくならない実務的理由

阪上健生氏のメール引退の記事は、日本の企業文化や実務者の視点が欠けていると感じましたので私の意見を述べます。

プロバイダー側から見ると現在のメール方式は、大量メールの送信や、スパムメールの問題などに効率良く対応できません。また、メールは業務の中に非常に浸透していますが、相手に到着したか、開封しかどうかを確認する標準手段もありません。送信後に行方不明になるメールがしばしば発生します。このようにメールとはかくも不安定な情報手段にも関わらず、新しいサービスへ置き換わるのは難しいのではないかと感じています。それは単に、プロバイダー側の技術的な問題というだけではありません。

私の経験によれば、企業間の業務上の通信プロトコルは、各業界のヒエラルキーの最上位(最終ユーザー)となる企業群が事実上決めていると考えます。たとえばエプソンが社内でエクセル(表計算ソフト)を使うと決めれば、製品情報をエクセル表で受取る下請け業者群は、エプソンと直接取引をしない下請け群最下層の企業に至るまで、社内ではエクセルを使わざるを得ません。

そして、それらの企業群のIT部門は一般的に言って非常に保守的なので、IT部門(経営者)が中央集権的に管理できない新しい技術は「リスク管理」の名のもとに排除しています。たとえばskypeやTwitterのようにサーバーを企業が所有・管理できない通信手段は、企業内の情報漏洩の危険を回避する為にファイヤーウォールで「遮断」しているのが実情です。

別の意味でも、facebookのような個人相手を主とするソーシャルネットワークサービスを企業間の通信手段にするのは難しいと考えます。遊んでいるのか仕事をしているのかを経営者や上司は容易に判別できない場合、経営者は社内で「ソーシャルネットワーク・サービスを会社のパソコンで利用する事は禁止」とするでしょう。今後、企業向けのソーシャルネットワークが「一流企業」群で普及すれば、それが企業社会全体でメールに代る通信のプラットフォームとなる可能性は検討の余地があると思います。

通信手段と同様に、企業間の儀礼様式についても、最終ユーザー企業群が「儀礼廃止」を行わなければ、それを廃止するのは難しいかと思います。しかし最終ユーザーは儀礼を受ける立場にあるので、「儀礼廃止」で得るものが少ない(=モチベーションが小さい)ので、これもやはり難しいかと思います。

故に、メールの引退も儀礼様式の廃止も、現状では難しいと考えます。しかしながら私は、個人的にはメールには早く引退してもらいたいし、儀礼様式も簡略化してほしいと願っておりますので、この批判を乗り越える意見が坂上さんから出て来る事を期待しております。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/07/27 at 23:30

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香港の価値・シンセンの価値

この記事は、アゴラへ投稿した「香港を基準とした中国ビジネスモデル」に加筆しました。

関電の15%節電は、各方面へ大きなインパクトを与えたようです。以降、ブログやメールニュースなどで評論家の方々が、国内企業が日本脱出する可能性に言及するようになりました。5月に日本へ帰省した時に、四国のデータセンターへ機材を販売している知人から、関東にある大量のサーバー類を松山などのデータセンターへ移転させる大口の引き合いが増えたと聞きました。それがいまや西日本を飛び越えて海外へ出て行こうとしています。電力供給の不安は、あらゆる産業にとって大きな問題という事なのでしょう。

小谷まなぶさんはアゴラ記事で「中国やアジア進出する際の、窓口会社として香港法人を活用する日本人経営者が今、増えています」と述べています。筆者のところにもこのような問合せが来るようになりました。香港は、商業都市として、また物流中継地として発達してきましたが、リーマンショック以降は、世界一の消費市場である中国内地の「入口」としての価値を高めています。

しかしながら日本国内の経営者にとって、中国内地への「入口」といえば、まだまだ北京か上海という認識が強いのではないでしょうか。香港といえば、賞味期限の切れかけた委託加工生産の拠点としての印象が強すぎて、「内地の入口」としての価値は十分に認識されていないのではないかと感じています。そこで、筆者の経験をもとに、香港経由で大陸中国へアプローチするメリットについて述べてみたいと思います。

1)CEPAは参入障壁を低くする
中国の国内市場は今でも多くの分野で、外資企業に対して大きな参入規制を行っています。これら海外からの直接投資に較べて、香港企業へ大幅な規制緩和の優遇措置を行ったのがCEPA(経済貿易緊密化協定)です。2004年にCEPAが開始されて以来、規制緩和される営業範囲は毎年拡大されています。たとえば金融・流通・観光・医療・サービス業のような規制業種へ外資が参入する場合に、CEPAを利用する事で得られるメリットは大きいと考えます。

ところでCEPAにおける香港企業とは、香港人であれ外国人であれ、香港で設立された会社という意味です。故に日本企業は、香港で会社設立する事により、CEPAのメリットを享受する事が可能です。私が一昨年にシンセン市に設立した時もCEPAを利用しました。

2)タックスヘイブンに統括会社を置くメリット
香港は税率が低い(16.5%)のですが、なんと昨年3月に日本と香港間で租税条約の基本合意が成り、11月に署名されました。この結果、タックスヘイブンである香港法人(実体を伴う必要有り)から本社へ配当金を送金しても、日本側では5%の課税となりました。詳しくは香港で会社設立は難しくないタックスヘイブンを利用した海外展開戦略をご参照ください。

具体的にどういうイメージになるかを理解する為に、ソフトウェアの開発と販売を例として、中国での売上のできるだけ多くを、タックスヘイブンである香港で利益計上して、税引き後の利益を本社へ配当するモデル図を作成してみました。

手順として下記の通りです。
 1)日本本社が出資して、香港へ現地法人をつくる。
 2)香港法人が出資して、中国内地のシンセン市に、
中国本社として機能する現地法人をつくる
 3)香港法人が出資して、大連にソフトウェアの開発会社をつくる。(外注でも可)
 4)香港法人から大連のソフト会社へ、中国で販売する為のソフトを発注する。
 5)香港法人は、大連のソフト会社が開発したソフトのライセンスを買い取る。
 6)中国本社は、華南、上海、北京で販売網を作り、エンドユーザーへソフト販売を行う。
 7)受注があると、中国本社は香港法人と、ライセンス販売契約を結ぶ。(税務署の認可を得る)
 8)中国本社は、販売店へ卸価格で販売する。(中国本社から販売店へ増値税発票を発行し、代金回収する)
 9)香港法人は、中国法人へSales Invoiceを発行し、売上計上する。
 10)中国本社は、販売契約に従い、香港本社へライセンス料を外貨送金する。
 11)香港法人は、ソフトのライセンス料を入金する。
 12)7から11までを繰り返し、香港法人の年度末監査を経て、税引き後の利益を確定する。
 13)日本の本社へ配当金を送金する。

3)中国本土のヘッドオフィスをシンセンに置くメリット
中国本土で外資企業を経営する者にとって、本土ビジネスが生み出す利益をどうやって中国本土(税率25%)でなく香港(税率16%)で計上するかという事は、常に困難の伴う厄介な問題の一つです。また、外貨送金は役所が厳しく管理しており、中国で利益を計上してしまうと、配当を海外送金(送金額に5%が更に課税)する以外にまともな回収方法が無いという問題もあります。

本土の売上げを香港側でより多く利益計上する為には、本土側の会社が香港側の会社へ支払う何らかの販売コストを創出する必要があります。しかし(香港側の会社との)販売コストの契約書を、前例に固執する石頭の役人に認めさせる事は大仕事です。これができなければ、販売コストを合法的に香港へ送金する事ができません。このような場合、起業家精神旺盛な香港人が、大小様々な会社を設立・運営しているシンセンでは、香港-シンセン間の売買契約書や、それに基づく代金の送金を行った前例が多数あるので、国税や外貨管理局の役人との交渉が比較的やり易いという事がシンセンにヘットオフィスを置くメリットと考えられます。

4)上海と比較した場合のシンセンのメリット
上海には、表向きには存在しない上海特有のビジネスリスクがあると聞きます。安徽省生まれ(いわゆる外省人)の私の知人は、IT関係のビジネスで比較的成功していましたが、昨年、会社を売って家族でカナダへ移民しました。友人(やはり外省人)の会社が、営業範囲の違反を問われて高額の罰金を支払って倒産したそうです。彼は、外国人や外省人の会社が、上海で目立たずに成功し続けるのはなかなか難しいと私に話してくれました。上海にいる別の知人は、上海でビジネスをするのなら、上海の有力な弁護士事務所とぜひ提携するべきだと忠告してくれました。このような話は都市伝説の類かもしれませんが、良く聞く話なので無視する訳にも行きません。

シンセンも広東人が幅を利かせているところは多分にあると思われますが、香港経由でシンセンへ設立した会社の場合、もとの資本がどこであっても、登記上はみな香港企業です。シンセンは香港経由の投資で繁栄してきた歴史があり、シンセン経済特区の政府は香港企業を大事にしています。故に、香港企業であるという理由で、行政から狙い撃ちで意地悪をされたというような話は聞いた事がありません。一昨年に私がシンセン市に会社を作った時の経験でも、香港企業がシンセンへ進出しようとする場合、役人は前向きに支援してくれているという印象を強く持ちました。

この記事が機会となって、日本のより多くの経営者が、中国本土への「入り口」としての香港・シンセンの価値を再認識して頂ければと思います。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/06/20 at 16:09

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あえて被災者というタブーを破ってみる

4月末から5月6日まで、四国山中の田舎へ帰省していました。1月に亡くなった母の、生前の希望をかなえる為に、お骨を山へ散骨する為です。イベントが5月の連休中であった為、東京からたくさんの親族が集まり、20名近くの親族と友人(そのほとんどは70歳を越える老人)が参加して、山の急斜面の雑木林に穴を掘って散骨し、その上に「クコの木」を植樹しました。クコは秋に赤い実をたくさん付けるので、小動物に好まれます。実のなる植物をたくさん植えて、山の動物を増やしたいというのも母の願いでした。しかしながら慣習やしきたりにうるさい田舎で、様式が確立されていない散骨という儀式を行う事は、えらく気疲れしました。

散骨も終わり多くの親族も出発してひと段落したある日、70歳を越える叔母が朝の茶の間で、テレビに写る東日本大震災の避難民の報道を見ながらこんな事を言いました。

関東大震災や戦時中の大空襲の時には、政府はこんなふうに助けてくれなかったし、そんな事を期待もせず、私らは自力で立ち直って来た。五体満足そうに見えるあの人たちは、いったいいつまで避難所にいて、あそこで何をしているのか?

日本の社会では決して口に出して言えないけれども、被災地(特に福島第一原発の避難民)の人たちに対して、被災しなかった多くの人たちが、心の中で密かに持っている疑問ではないでしょうか。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/05/15 at 12:39

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原発事故はリスクではなく不確実性

山口巌氏のリスクと不安を読みました。大変興味深い内容でした。基本的な主旨には賛同します。ところでこの記事が福島第一原発を代表例とする原発事故について述べているのであるとすると、事故や被災による異常状況のすべてを「リスク」として確率を計算する事は難しいのではないでしょうか。山口氏が触発された池田信夫氏のこの記事の他に、池田氏は下記のような記事も書いています。

主観的確率というレトリック*

福島第一原発のある場所に8メートル以上の津波が到来する確率は、周辺の地層を広い範囲で調べるなどの地質学的調査により、津波の高さと年代をまとめれば、その確率を計算する事ができます。しかしながら14メートルの津波が到来した場合に発生する外部電源喪失や、2次冷却系や、その他の致命的な設備機能不全は、リスクではなく不確実性であると考えます。

これらをリスクではなく不確実性と考える理由は、施設の設計やメンテナンスや改善は人間の意思により決定され、実施されるものですから、その結果を機械的な確率論で計算する事は困難だと考えます。

要するに、津波が明日来る確率は計算可能だが、それにより施設がどんな障害を受けるかは不確実だという事です。これは福島第一原発と第二原発の損傷程度が違う事をみれば明らかではないでしょうか。

重箱の隅をつつくような突っ込みで恐縮ですが、リスクと不確実性の違いについて気になりましたので指摘してみました。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/04/18 at 19:32

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デスマーチの理由 – 石田氏への反論

わざわざ批判記事を書いて頂いた石田氏へ、まずは感謝の言葉を述べます。それでは、下記の①と②について反論を開始させて頂きます。

①現在の福島第一原発での事故への対処プロジェクトにおいて、このプロジェクトをデスマーチ化させたのは、政府、であるという点について。

石田氏記事のコメントで述べておられた「リーダーシップがあればデスマーチにならなかった」という事に絡めて意見を述べます。経産省の原子力安全・保安院(以下保安院と省略)の3月12日の午前0時30分のプレス発表を見ると、福山第一原発では「電源車3-4台が敷地内で待機中」とあるので、緊急炉心冷却システム(以下ECCSと省略)が夜半に停止する事を掌握していました。12日の午前7時の時点で、「電源車のケーブル繋ぎ込み作業中」であり、電源接続作業がうまくいってない事も理解していました。その後のプレス発表を追いかけ続けてみて感じたのは、驚く事に保安院は、その場凌ぎの対応を東電に続けさせていたという事です。

沸騰水型原子炉の技術解説記事を読むと、ECCS無しで炉心の冷却を行う場合に容易に想定されるのは、炉心の崩壊熱により、圧力容器内の水蒸気圧の上昇、炉心の溶解、そして可能性は低いものの、圧力容器の底へ落下した燃料の再臨界というシナリオです。「廃炉」の決意なく、全停電状態を続けるのが無謀である事は明白であり、東電と保安院は、極めて危険な綱渡りをしている事になります。

政府首脳が福島第一原発問題の評価や対策を保安院へ丸投げせず、危機的状況を管首相にまで報告していれば、早ければ11日深夜、遅くても12日早朝にも、チュルノブイリ化を何よりも恐れている管首相が、早期の「廃炉」決定を行う事はできたと考えます。(格納容器を持つ福島第一原発がチュルノブイリ化する事は実際には無い筈ですが...)

②東電の災害時対応マニュアルの想定外の事態が起こった場合、それ以外の対応については政府の責任であるから、政府が直ちに現場の指揮権を奪い、介入すべきであったという点について。

福島第一原発とその周辺の災害対策を、統合本部が管理する重要性について述べます。私はサブプライムローンのようなブラック・スワンを管理せよと言っている訳ではなく、石田氏の指摘はポイントがずれています。そうではなくて、いまそこにある危機を管理せよと述べています。レベル5とか6を想定した原子炉障害対策においては、単に原子炉そのものへの対応が要求されるだけでなく、最悪のシナリオをも想定した、原子炉と周辺住民へのダメージ制御を統合的に準備し運用する必要があるという考えを統合本部に要求する機能で述べました。福島原発周辺住民の避難範囲が、3キロ、10キロ、20キロと短時間にエスカレートして、避難住民に大きな混乱をもたらしたのは、東電と政府が対策組織として分離している弊害の典型例かと思われます。

原子炉そのものへの障害対策について述べます。これが極めて専門性の高い内容である事は石田氏が指摘する通りです。統合本部の責任者(経産省大臣?)が無理に理解する必要はありません。政府側が東電の指揮系統や個々の対応に口を挟む必要もありません。大臣は全体的な方針を決定し、原子炉への対応は、先に述べたように、東電へ任せれば良いでしょう。大枠の策定や東電の作業内容の妥当性評価については、大臣の下に支援チーム(危機管理の専門化、原発の理論や設計の専門家、原発開発メーカーの技術責任者など)を招集すれば良いでしょう。統合本部は現場を混乱させるのが目的ではなく、現場が実現可能な方向性を定め、必要な資源を集めて供給し、現場で起こる状況の最終責任を負う事を現場に明確化する事です。

想定外の天災における東電と政府の責任について述べます。電力会社は公共性の強い企業ですから、自動車会社のリコールと同列で語るのは正しいとはいえません。また東電は天災によるダメージの他に、原子炉が廃炉になる事で大きな経済的損失を負います。法律に別段の定めなく、東電の障害対応に大きな過誤がない限り、東電の責任はここまでにするべきと考えます。障害対応の為に東電以外の資源を利用した経費や、周辺住民の避難に関する費用や補償、原発外へ拡散した放射能汚染に対する補償などは、他の災害対策費用と同様に政府が負担するべきと考えます。また、それを法的に明確化する為にも、東電の現場組織は、政府主導の統合本部の下に置くべきです。

最後に申し上げたいのは、デスマーチの責任は、「悪魔の後出しじゃんけん」で東電や政府を批判する為に書いた訳ではありません。現在進行中の福島第一原発の原子炉障害への対応について、東電が一貫性のある明白な戦略のもとで、現実的で、よりリスクが低いと思われる障害対応活動を行うように、統合本部の下で改善を求めること事が目的です。

この記事はアゴラへ投稿したものです。

参考資料
1)危機は避けられたか
2)MIT原子力理工学部による改訂版・福島第一原発事故解説
3)MIT原子力理工学部による「崩壊熱」についての解説
4)MIT原子力理工学部による「最悪のシナリオ」予測に関するコメントと解説
5)遅きに失した統合本部に要求される機能
6)非常用炉心冷却装置
7)内閣安全保障室
8)原子力安全・保安院 プレス発表

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/03/22 at 13:56

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国を守るという意味(続編)

昨日の私の記事に対して、池田さんからもう「平和ボケ」から覚めようという反論を頂き、そのコメント欄にて、下記のご指摘を頂きました。

「日米同盟を強化すべきだ」という話と「中国が攻めてきたら戦わないで降伏すればいい」という話が、論理的にどう両立するのか、まったく理解できない。戦う必要がないのなら、日米同盟も自衛隊も必要ないでしょう。

このネタでの投稿はもう止めるつもりでしたが、上記の指摘に対する説明をさせて頂く機会をもう一度だけお許し頂き、続きのネタで投稿させて頂きたいと思います。これでもう終わりです。

まずは下記の図をご覧下さい。(軍事の専門知識を持つ方で、下記の図に適正な数値を入れて頂ける方がおりましたらぜひお願いします。)

軍事力比較曲線

1)現在はAがBより十分に大きく、日米同盟を強化して中国を抑制する事は合理的です。

2)xの時点でAとBの差が縮小すると、日米同盟の効果は小さくなり、日本は中国の圧力に対して危険な状態となります。

3)y以降はAとBの軍事力が逆転し、日米同盟は無意味となり、中国が攻めてきたら日本は戦わないで降伏する事が経済的に合理的な判断とされ得る状況になると考えます。

池田さんは「論理的にどう両立するのか」と指摘されましたが、回答としては、両立するのではなく、上記1の条件では日米同盟を強化するのが合理的、3の条件では戦わずに降伏する事が合理的、という事です。

では、上記3の状況になる可能性はあるでしょうか。

米国は東西冷戦以降、一貫して軍事費と軍事力の削減を続けており、極東へ展開できる戦力も年々減少していると考えられます。またアフガンとイラク戦争の失敗で、世界の警察でいる事に疲弊しており、中国に対して軍事力(軍事費)の大幅増強で対抗するというのは考え難い。

日本はバブル崩壊後の経済低迷と1000兆円に迫る政府債務(今後益々増大)の問題を抱え、中国の軍備拡大に付き合う余裕があるとは思えません。

中国は高度成長期の最中にあって軍備増強に邁進しています。「 Anti-access / area-denial strategy(接近阻止・領域拒否 戦略)」により原子力潜水艦や空母(建造中)、ステルス戦闘機(開発中)、陸上から空母を狙う「対艦弾道ミサイル(Anti-Ship Ballistic Missile:ASBM)」などの軍事力の近代化と増強を行い続けています。この戦略の特徴は、米軍の空母を中国の防衛ラインへ近づけない事です。その防衛ラインを、日本列島と台湾をラインへ押し広げるのが中国の当面の目標です。ところでASBMに核弾頭を積む事ができれば、米空母は日本周辺へ接近できません。空母が来なければ航空優勢を得られず、他の軍艦は空爆されるのでやはり日本へ接近できません。すると日本周辺へ投入できる米軍の軍事力は著しく減少します。つまり上記3の状態は、米軍の軍備縮小だけでなく、中国軍の技術革新によって自力で一気に到達する事も可能だという事になります。

結論は、上記3の状態が来ないと決め付けられる適切な理由は無く、Politically Incorrectである事は承知の上で、「戦わずに中国に降伏するのはどういう事か」というのも議論の対象になるべきではないだろうかと考えた次第です。

この記事はアゴラと同時に投稿しています。

7 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2011/02/22 at 16:10

Categories: 1.政治・経済   Tags:

国を守るという意味

朝まで生テレビに出演した堀江貴文氏が、「国を守る」という事について異論を発し、集中砲火を浴びました。中国や北朝鮮が、「何の為に日本に攻めてくるのか?何をしに来るのか?かという疑問に答えられた人はいませんでした。というか、中国や北朝鮮が、日本に来て何をするのかなど、だれも考えた事もないのかもしれません。これは、「侵略」という恐怖が先立ち、合理性を無視した感情論以外の何者でもありません。

堀江氏の主張について、東浩紀氏は番組中で次のように述べました。(筆者による部分的な書き起こし)

「主権国家と主権国家の話しに全ての政治の問題を還元させて、国境の問題なんとかでやると、すごく単純な問題になるわけですよ。中国の軍事力対日本の軍事力と。でも実際に、仮に中国が沖縄を占領したとしてもですよ、沖縄の人民もですよ、Twitterとか持っている訳ですよ今。そこには世界中から支援も集まるし、当然中国も変な事はできなくなる。そういう意味で言うと、主権国家と主権国家、軍事力対軍事力で、すべてのパワーバランスが決まるような単純な時代ではないという事を堀江さんは言っていると思うんですよ。この認識は基本的には正しいと思います。」

「国民国家のバランスで全部が動くと考えている方が全然楽観的だし、今の状態から合ってなくなってきているんですよ。だからこそ、今回のエジプトでも革命が起きてきている訳じゃない。」

私も同意です。

以前に、国家とは何かということ事について議論しました。現代の人民主権国家では、建前上は国民が国家の主体(であり客体)という事になっています。ところが現実には、国家の主体が実際は政府(司法・立法・行政組織)である事は、戦時を考えれば明白です。

侵略戦争の表面的な目的は、相手国の領土を自国に取り込む事です。戦争のターゲットとする領土に政府組織がある場合、(軍事基地を別にすれば)真っ先に標的になります。侵略しようとする国から見れば、領土も国民も軍隊(自衛隊)も、政府の付属品に過ぎません。政府を統制下におけば、国軍や警察や国民に「武器を置いて家へ帰れ」と命令でき、戦争は終わります。

現代において、戦争という大きな政治的・経済的リスクを負ってまで、日本の領土を欲する真の理由については、下記の3つが考えられます。

1)経済的理由。
 天然資源(地下資源、海底資源、海洋資源、農耕地)の確保。
2)政治的理由。
 主権回復。
3)軍事的理由。
 自国の生存を危うくするリスクの軽減。
 
国家が受ける戦争の影響についてはどうでしょうか。21世紀の現代において、日本のような経済大国に対して、略奪や殺戮やあからさまな植民地化を目的とした侵略戦争を行う事は、米中のような大国を含めて、どんな国であっても世界の先進諸国を敵に回す事になり、非常に大きな軍事的・経済的な制裁を受けます。それを最小限にするには、世界世論(と国連)に対して、日本への侵略戦争を正当化する為の、開戦にあたっての大義と、併合後の人道的な統治政策が要求される事は明白です。仮に非人道的な統治があった場合、国民はTwitterやFacebookで世界の人たちへ知らせて、世界世論を見方につけるという手段を持っています。

では、日本を侵略して併合する実力を持った国はどこか、について具体的に考えて見ましょう。自衛隊を上回る軍事力(を獲得できる潜在力的経済力や技術力)と、世界世論と国連に対して併合を正当化する大義の得やすさ、国連への影響力などを考えると、米国、中国、ロシアの3国が考えられます。その中でも中国は、日本の併合を「主権の回復」と強弁できる可能性を持ち、大義を一番得やすい国かと思われます。また中国とロシアにとって、日本は太平洋の出口にあるので、世界経済が長期的に極めて悪化し、「何事もお金で解決」できなくなった時には、軍事的理由により併合される可能性も残されていますが、現在の世界では、これは考慮の対象外と言えます。そして北朝鮮ですが、日本へ攻撃を仕掛ける事は可能としても、総合的に考えれば、日本を占領・併合する力はとうていありませんので、これも考慮の対象外とします。

上記の点を考慮に入れて、日本が中国にに併合された場合に一般の日本人が遭遇する状況について考えて見ましょう。大きく変わるのは下記の4点であろうと思われます。

1)国名(国歌や国旗やパスポート)が変わる。
  統治を円滑に行う目的で、象徴としての天皇制が残る可能性は高い。
2)公用語が2つになる。
 学校教育で、中国語(北京語)の教育が加わる。
 上級統治機関の公文書は、日本語と中国語の2言語併記されるようになる。
3)物価が安くなる。
 併合により中国と日本市場の関税がなくなり、市場が接続される。
 中国側で価格優位な工業製品や農産物が流入して、日本の物価が安くなる。
4)経済発展して賃金が上昇する。
 中国は非常に大きな経済市場を持っており、上記3の理由で、日本企業は大きな市場を獲得する。
 中国大陸の市場へ進出を行う企業は大きく業績を伸ばすので、経済発展して、日本企業の賃金が上昇する。

一般の日本人から見て、変わらないのは下記の6点であろうと思われます。
1)生命財産。
 新政府があなたの土地や財産を接収するような事は、一般人には起こらないでしょう。
2)人権。
 香港の例に倣い分離統治を行う事が予想され、「日本特別行政区」一般国民の人権については何も変わらない。
3)治安。
 中国政府が面子にかけて、日本の治安維持を行うと予想される。
 もし、分離独立運動が起きた場合には、テロや暴動や過剰な暴動鎮圧により、一時的な治安悪化の可能性はある。
4)社会保障。
 日本の統治政府は大きな自治権を維持するので、社会保障制度が短期間で大きく変わる事はない。
5)文化的な行事。
 日本は現在も政教分離されており、天皇制も進駐軍によりに政治的に無力化されているので、文化的な行事に大きな制約を受ける事はないと考えられる。
6)選挙権と被選挙権。
 一般の日本人に影響の大きい地方選挙は基本的になりも変わらない。

それでは、日本が国家=政府を守る為に、国民を動員して防衛戦争を行った場合には、どのような事が起こるのでしょうか。勝って独立を保つにしろ、負けて併合されるにしろ、政府(体制)を維持するために、多くの日本国民の生命・財産が失われる事が予測されます。

本記事の主題である「国を守る」とは何か、という事について考えて見ます。人民主権国家の理論上の主体は、その他大勢の、一般の国民です。これら国民の生命・財産を守る事が、国を守るという事と同じ意味となります。その結果、政府=体制の「看板」がすげ変わる事になったとしても、「国を守る」目的は達せられた事になります。

中国に併合されたら長期的に日本固有の文化が失われるので、「大和民族の文化を守る」為に防衛戦争を行うべきという意見もあるかと思います。しかしながら日本の文化は、長い歴史の中で大きく変化してきました。縄文時代から弥生時代に大きな変化を遂げ、明治維新で大きな変化を遂げ、第二次大戦後に大きな変化を遂げました。たとえ他国に併合されたとしても、日本人が日本語と日本文化を保持しようという個人的努力を放棄しない限り、国籍や体制がどうであるかは問題ではありません。

誤解の無いように強調させて頂きますが、本記事の主旨は、積極的に中国(あるいは他の国)に併合される事を勧めているのでは決してありません。(故に、その点を誤解したコメントについては、今回は一切無視させて頂きます)しかしながら政府=体制の維持を目的とした防衛戦争は、人民主権国家においては本末転倒であり、そのような戦争は行うべきでは無いという事を、本記事の結論として述べさせて頂きます。

人と物が大規模に移動し、グローバリゼーションが進む21世紀において、民族主義的な考え方に基づいて国家を維持しようとする事も、日本文化の維持を日本国という枠組みに依存しようとする事も、時代に適合しずらくなっているのではないかと考えます。

グローバリゼーションを駆動する石油や電気エネルギーが枯渇しない限り、その進路の先には、EUの目標である経済ブロックが統合された巨大政府があり、その果てには世界がひとつの大きな政府へと統合されてゆくのであろうと推測します。そのような大きな流れを意識すれば、日本国という看板を維持する為の戦争というのは、実に無意味な損失ではありませんか。

この記事はアゴラと同時に投稿しています。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2011/02/21 at 12:08

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尖閣諸島をどうするべきか

アゴラに投稿したもともと我々の領土という愚のコメント欄で、尖閣諸島問題の経済面について述べた内容を、こちらのブログにも残しておきます。

結論から言うと、日本が名実ともに実効支配できている間に、海底資源のプレミアをつけて中国へ売り切るのが得策と考えます。仮に将来、政府の多大な努力の結果として尖閣諸島を完全支配できたとしても、メリットを受けるのは少数の漁民と、一部の石油関連企業だけであり、大多数の国民は経済的メリットを受けません。逆に中国へ売り切る事で、島の租借料や海上警備に投じている税金を節約できるだけでなく、漁業資源や海底資源を中国から買う事ができ、都市部の大多数の国民は経済的なメリットを得る事ができます。

1)居住の問題:

尖閣諸島や(仮に返還された場合に)北方領土のような、経済活動における収支がマイナスになる事が明白な場所に、日本人が恒久的な集落や好況インフラを構築しその為に貴重な税金を投じるのは愚かと言えます。

2)漁業資源の問題:

ロシアと中国の漁民の人件費が日本よりかなり低いのは明白です。都市部にすむ大多数の日本国民にとって、日本の漁民から高い魚を買うより、安い魚を中国とロシアから輸入する方が経済的メリットが高いのも明白です。これは、現在議論されているTPPの農業問題と同じです。詳しくは、藤沢氏の「農業と安全保障に関する私見」を参照下さい。

3)海底資源の問題:

油田の開発は高リスクの商売です。商業的に成功する油田になるかどうかは、掘ってみるまで不明です。仮に大規模な油田があっても、石油は世界的な市場価格がありますから、価格面において、国産石油の有利性はありません。逆に、石油の市場価格が下がった時は、国産石油は税金で補助を要するリスクもり、「納税者兼消費者」にとっては、必要に応じて中国から買う方が低コストかつ低リスクであるといえます。

4)妥協案:

経済的に考えた場合、尖閣諸島は共同統治案より、売り切り案の方が、国民が得る利益が高いと良いと考えます。推定される海底資源をプレミアにして、なるべく高く売りましょう。つまり中国は名を取り、日本は実を取ります。その上で、中国から石油や安価な買えば、「一粒で2度美味しい」状態になります。

現在の日本国憲法を改正しない限り、誰が首相になろうとも、日本政府の弱腰外交を根本的に変える事はできません。この状況で中国が尖閣諸島に軍隊を送り込んで、短期間で実行支配体制を構築すれば、日本政府は手も足もでなくなります。米国に泣きついても、たかが離島の為に、戦争覚悟で日本の為に実力行使を行うとは思えません。つまり竹島の二の舞です。そうなってから交渉をしようとしても鼻で笑われるのがオチです。交渉を始めるなら今のうちです。

10 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2010/12/04 at 21:01

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民主主義は魔法の杖か?

嫌中派の方が中国を批判する理由の一つとして、民主的な政治体制でない事をあげる方が多いようです。日米を含む先進国においては、国家を経済的・文化的に発展させる土台として、民主主義は重要な制度の一つであると考えます。しかしながら民主主義が完璧な制度でない事は、民主化されたロシア連邦政府がチェチェン共和国などの連邦国家の独立を武力阻止している状況を見れば明らかです。そういえば、日本の東条内閣も、ドイツのヒットラー政権も、民主的なプロセスによって誕生しました。

中国に高いレベルでの民主化を要求する米国ですが、誕生した瞬間に現在のレベルの民主主義を実現した訳ではありません。植民地時代には、非民主的手段で江戸幕府の鎖国をこじ開けました。また奴隷制度という歴史があり、南北戦争後もタスキーギ梅毒実験のような問題があり、それらを自らの力で乗り越えて、現在の民主的レベルに達しました。民主主義というのは、現代の米国人や日本人にとっては自明と感じられるかもしれませんが、初期には形式的な民主主義の時代があり、政治や人権など、国内のいろいろな問題を乗り越え、国民自身の文化的成熟のレベルに応じて、民主主義のレベルアップが行われてきた事を忘れるべきではありません。

民主主義政府ができる前は、政治を国(=独裁者とその政府)が独占しているので、行政に不満があっても、国民自らがなんとかしようという積極的な参政意識は希薄です。独裁から民主制へ形式的に移行しても、大多数の国民の参政意識が自発的に高まるまで、一部の人間による政治の独占は続きます。参政意識が高まっても、大多数の国民の文化的成熟度が高まるまでは、長期的に民主主義を維持できるようになる迄にはいくつもの落とし穴があります。強い民族主義や利己主義のぶつかり合いによって合意形成が困難になり、イラクのようにグループ間で内戦に突入する可能性があります。あるいは多数派の国民の民族主義的エゴを達成しようとする、ロシアのような政府を生み出すかもしれません。こうして考えると、国民の文化的成熟度と無関係に民主主義や自由主義を導入する事は、当事国の国民にとって更なる不幸を生み出す可能性があります。

中国は清の滅亡から毛沢東の時代が終わるまでの長い混乱と停滞の時代がありましたので、現代の中国という社会が、民主主義とか自由主義という概念を十分に理解しているとは考えられません。鄧小平が改革開放の結果、最近になって2億人くらいの国民が文化的な生活を享受できるようになりました。彼らは民主主義というものを理解しつつあると考えますが、残りの大多数(11億人)はいまだ、そこに到達していません。民主主義の基本は多数決です。一部の人権活動家の意識が高まるだけではどうしようもありません。国民の大多数が文化的に未熟な状態で、形式的な民主主義を与えられたら、いったいどうなるでしょうか。世界最大の民主的社会が生まれるか、漢民族の独裁政権が生まれて「もともと中国の領土」を回復する為に韓国やベトナムへ侵攻をはじめるか、あるいは国家が細かく分裂して21世紀の戦国時代がはじまるか、誰にも予測できません。もし内戦が始まれば、欧米の武器輸出産業にとっては絶好の商機でしょうが、中国国民と、日本を含む周辺国家にとって、非常に困った状況になるのは明らかです。

世界のある地域の政情が安定している時、それを納めているのが独裁者であれ共産党であれイスラム原理主義者であれ、パワーバランスが保たれている必然的な理由がある事を忘れるべきではありません。民主主義は魔法の杖ではありませんから、議会制民主主義に移行した国が、たちまち日本や米国のようになる訳ではありません。無責任な民主主義のプッシュは、単にパワーバランスを壊して、当該地域の国民を不幸にするだけかもしれません。中国は毛沢東の時代にチベット民族を激しく弾圧し、その後も2度の天安門事件を起こしました。しかしながら現在の政府は、国の発展(=経済的発展)という戦略的目的の為に、段階的な民主的レベルの向上(=治安維持を目的とした規制の緩和)を行っている事実を認識するべきです。

中国政府が民主的レベルを向上させる必要がなぜあるかですって?合理性を重んじる中国人にとって、規制を緩和しなければ経済が発展しない事は自明だからですよ。

*)本記事は、アゴラへ投稿した記事です。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/11/29 at 11:14

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中国の治安維持規制と緩和状況

アゴラに投稿した記事で、kaku360さんから下記の質問を頂きました。内容がすこし長くなるので、アゴラのコメント欄ではなく、こちらで回答します。下記内容は、私が思い出せる限りのもを列挙しており、体系的な資料をもとにしていない事をご了承下さい。

>「治安維持を目的とした規制の緩和」とありますが、本当にそのような緩和が起きているのでしょうか?

私がはじめて香港(当時は英国統治領)から中国大陸に足を踏み入れた1989年当時は;

1)中国人が遠距離移動する為に飛行機のチケットを買うには、役所の許可が必要だったようです。
2)外国人は、開放都市以外への出入りが認められていませんでした。
3)一般人の外国旅行は極めて困難でした。
4)中国ではじめてできたシンセン市の中のシンセン経済特区は、第二国境と呼ばれるゲートで人の」出入りを管理しており、中国人が経済特区へ入るには専用の許可証が必要でした。
5)外国人を宿泊させる許可を持つホテルは限られており、外国人がビジネスホテル級の安ホテルに泊まるのは比較的困難でした。
6)外国人が一般の民家を訪問して宿泊したり居住するには公安警察への届出が必要で、民家に外国人が出入りすると、周辺の家から公安へたちまち通報されていました。
7)個人が公的な場所で意思表示する事は、壁新聞であろうとビラであろうと極めて困難でした。
8)中国人の労働者による労働者の為の労働組合は事実上禁止されていました。

2010年11月現在は;

1)中国政府が発行する身分証があれば、だれでも、国内の何処へでも、飛行機のチケットを買って、移動する事ができます。
2)チベットのように暴動など治安上の理由で出入りを制限されている場合を除き、中国全土が開放されています。
3)沿岸部都市に戸籍を持つ一般人などの比較的多くの人が海外旅行を行うようになりました。
4)シンセン経済特区の第二国境は事実上なくなりました。
5)地方都市の安いビジネスホテルの非常に多くが、外国人を宿泊させる許可をもっています。
6)外国人の民家への滞在には公安への届出が必要なルールは今でもありますが、大都市の公安は、平時は黙認しているところが増えているようです。周辺家庭からの通報もあまり無いようです。(みつかると罰金を取られます)
7)ネット上の掲示板やブログでは、1日に膨大な数の更新があり、日常的な行政への不満など含まれていますが、おおくの更新についてはいちいち削除される事はありません。一部の中国人がわざわざVPNなどでTwitterへアクセスして情報交換する事も黙認されているようです。
8)労働者による労働者の為の労働組合が認められています。

ちなみに、今でもけっこう厳しく規制されていると感じるのは;

1)言論の自由や、民主化を目的とした集会やデモ。
2)政治的な意見を伴うデモや集会。
3)多くの注目を集める、ブログや掲示板の政治的記事。
4)大企業や地方行政への苦情の意思表示を、街頭などで行う。

1と2は、主に民主活動家によるもので、予防的措置と推測。
3は、一般人の記事が、たまたま多くの注目を集めた場合で、予防的措置と推測。
4は、地方名士の企業や地方政府の不正・腐敗を、地方政府の公安が庇う場合。本来これは中央政府的には不正対象が処罰されるべきだが、中央政府のポリシーから逸脱した地方政府が自己防衛的にもみ消そうとし、そういう不法な処理に中央政府の目が届かないケースと推測。私は常々、実世界で不正対象に対して直接的な活動を行うよりも、ネットを使って、世論と中央政府に対して効率良くアピールする方が、抗議者のリスクを小さく保ちながら不正の暴露と処罰という目的を達成しやすいと考えますが、抗議したい当事者達はネット・リテラシーが低い人たちが多いのを歯がゆいと感じています。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/11/24 at 22:48

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中国は一党独裁の資本主義国家である

尖閣諸島問題に端を発して、俄か愛国心が国内に高まるなか、間違った前提に基づく対中戦略の議論が行われていると感じています。間違った前提から出発して、正しいゴールにたどり着く事はできません。「大量破壊兵器が有る」という前提でイランへ侵攻した米軍は、ついに大量破壊兵器の倉庫へたどり着く事ができませんでした。正しい前提条件で議論をする事は大変重要です。

テレビの政治討論番組やブログで中国脅威論を唱える方の多くが、中国を脅威と感じる理由のトップに、中国が社会主義国家である事を掲げているようです。wikiによれば、中国共産党は「産主義を実現するための初級段階として社会主義を行っている」とあります。しかしながら私は、中国が社会主義国家である事に大きな疑念を抱きました。

そこで、社会主義の定義をwikiで調べてみました。

社会主義は、資本主義の原則である自由競争を否定または制限し、生産手段の社会的所有・管理などによって、生産物・富などを平等に分配した社会を実現しようとする思想と運動の総称。

つまり社会主義の要素とは、
1)自由競争の否定あるいは制限
2)生産手段の社会的所有・管理
3)富の平等分配

確かに昔の中国は、大企業はみな国有で、自由競争の代わりに、第○次5カ年計画とかいう計画経済であったと記憶しています。

鄧小平は1978年12月に、改革解放という国内体制の改革および対外開放政策を開始し、それは現在に至るも中国共産党によって続けられていると理解しています。改革開放とは社会主義経済から資本主義市場経済への移行です。その要素とは、
1)市場における自由競争
2)資本と生産手段の私有
3)資本家への富の集中

次に、資本主義の要件をwikiで調べてみましょう。
1)私有財産制
2)私企業による生産
3)王道市場を通じた雇用、労働
4)市場における競争を通じた需要、供給、取引価格の調整、契約の自由

私は昨年、深圳に販売会社を設立して、パソコンやソフトウェアの販売を行っていますが、上記の要件をすべて満たす企業活動を行っています。

1972年以降の経済体制を、中国共産党は社会主義市場経済と呼んでいるようですが、これは共産党が国民に対して面子を保つ為の詭弁といえます。いまでも国有企業は計画経済を名目的に行っているようですが、その国有企業の多くはシンセン・上海・香港等の株式市場へ上場して資金調達しており、計画より企業の利益を優先するようになっているようです。

つまり、いまや中国の経済は基本的に資本主義市場経済と言えます。

「社会主義」とは社会主義的手段に基づき、富みの平等分配を行おうとする運動を表す言葉です。「社会主義国家」とは、それを行う政権を持つ国家の事だと考えます。この前提が正しければ、改革開放を続ける中国は、たとえ共産党の一党独裁国家であれ、理論的には社会主義国家ではありません。

なるほど、やっと私の疑念を晴らす事ができました。やはり中国は既に、社会主義国ではなかったのです。

故にみなさんも、中国について議論を行う場合、共産党の一党独裁ではあるが、資本主義市場経済を行う国家資本主義国であるという前提で、正しいゴールにたどり着くように、実り有る議論を行って頂きたいと願っています。

*)本記事は、アゴラへの投稿した記事です。

16 comments - What do you think?  Posted by bobby - at 15:48

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経済繁栄と円安は矛盾するか?

齋藤和英氏の日本的社会保障観を読んでいて、「通貨を安くしたいならそんな国家になればよいのだ。ところが日本政府がバブル崩壊以降行ってきたことはその真逆なのである」の部分に、思わず目から鱗でした。

市場に特殊なギミックが無い場合、魅力の無い国の通貨は売られて安くなり、魅力のある国の通貨は買われて高くなる。グローバルに見た場合、そういう事になるのかと思われます。日本円が自由化したとたんに、円がどんどん高くなったのは、日本が右肩上がりで経済成長し、魅力がどんどんと増していたからという事でしょう。

2000年代前半からリーマンショック迄は、日本は輸出産業が稼いでいたのでそれなりに魅力が有りましたが、日本政府の政策(超低金利と金融緩和)および米国のバブルという市場のギミックによって円キャリー取引が生まれ、円ドルの為替市場が大きく歪んでいただけだったという事のようです。

藤沢数希氏は現在の円高について、グローバルインバランスの調整(円キャリーの巻き戻し)を要因として述べておられますが、その他にも、欧米市場の魅力が減少し、日本の絶対的な魅力は緩慢な減少傾向にあるものの、日本の魅力が相対的に高まり、その為によけいに円が買われているという事もあるかと推測します。実際に中国は、日本の短期国債を(米国債よりマシという理由で)大量に買っているというニュースがあります。

Twitterで円安誘導による経済政策を主張する人を私のタイムラインでしばしば見かけますが、「より経済繁栄」=「より円高」であるとすると、そもそもの命題が矛盾しているという事になります。

なにぶん為替には素人なので、上記の説に間違いがありましたらお手柔らかにご指南下さい。

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/10/18 at 20:10

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日本が中国を無視できない理由

To be determinedさんが質問削除の中で、「日本以上に中国人に対する入国制限が緩い国は、どこかにありますか?」という質問への私なりに回答したところ、コメント欄で再度の質問を頂きました。

「ところでビザの件ですが、ご紹介のビザ発行条件を見ると、bobbyさんによれば他国より特に緩いということはないとのことですが、欧米先進国とその他の国の差のようにも見えます。この件に関しては日本は先進国側から離れて、発展途上国よりの態度に変わったという見方もできます...単なる個人の体験例ではありますが、こういうことをどうお考えになりますか?」

かなりの長文になってしまったので、コメント欄ではなく、こちらで以下に回答させて頂きます。

中国(と中国人)が関心を持つ途上国の多くは、ビザ無しであったり、到着後に空港で取得可能であったり、申請条件が非常に緩い(資産証明も所得証明も不要)ようです。これは中国政府の外交力と、相手国政府が期待する経済効果が主因と考えます。

中国(と中国人)が関心を持つ先進国の中で、日本政府は財産証明と所得証明の両方を要求しているが、(紹介したページにある)米・仏・カナダでは所得証明を必要としていないところに着目し、日本の申請条件が他の先進国に較べて緩くない根拠と考えました。

中国人が入国拒否される理由ですが、米国は中国人に限らず欧州以外の国に厳しいようです。たとえばホリエモンも経済犯罪で係争中なので、米国には入国できません。(カナダはOK)たぶん国際テロの対象になり易いという理由で、フィルター条件が非常に厳しいのだと思われます。中国はいまだに社会主義政権で、軍事大国で、産業が急速に発展していますから、欧州各国が警戒する事も理解できます。(欧米の先進国が中国に対して「民主的」とか「人道的」という言葉で非難したり制約条件を持ち出す時には、多くの場合、別の目的を達成する為の道具として使われているのだと思います。)

中国が直面している問題は、日本が明治から昭和にかけて欧米先進国から受けた「問題」に近い面があると感じています。白人主体のロシアは別として、大きいとはいえ黄色人種の東洋の国が、欧米中心(日本と韓国もやっとの事で仲間入りした)の先進国社会へ、かなり強引に割り込んできているのですから、既得権を守る為に、欧米諸国がいろいろな面で過剰に警戒するのは仕方が無いかと思います。

そういう壁を「外交力」で突破する為に、中国は大きな軍事予算を長期的につぎ込んで、陸・海・空・宇宙への軍事力を高めているのでしょう。中国はそういう長期的な戦略を実行できる国だと理解しています。また中国には、それを行うだけの国内資源(国土、人民、資源、技術)があります。中国の指導者(鄧小平)が1970年に改革開放へ国の舵を切り、それから40年間、中国の歴代指導者はブレずに、国の繁栄の為にこの長期戦略を実行してきました。その結果がGDPで世界第二位です。

日本は残念ながら、そういう資源が極めて限られており、憲法で軍事力(敵地攻撃能力、核武装)にも制約がかけられ、輸出産業がなければ国内経済の維持もできません。また、リーマンショック後の日本の税収の落ち込みを思い出してください。日本から輸出産業(と海外の支店や工場から吸い上げる利益)が無くなれば、税収が一気に減り、世界一素晴らしい社会福祉(医療、年金など)は10年以内に崩壊し、まもなく日本は途上国の仲間入りする可能性が極めて高いと感じています。

米国が今後、世界経済を牽引する極端な消費市場に戻ると考えている人は少ないようです。とすれば、中国が世界最大の消費市場を維持し続ける可能性が高い。そういう状況で、すぐ隣国で「領土」や「歴史」問題を抱える日本が、中国に対してとれるオプションの中に、領土や経済で敵対したり、無視する事は、日本の没落を招くだけであり、政治的に困難であろうと考えています。私を含めて、多くの人がそういう日本の未来を望んでいない事は理解していますが、現実は現実として直視しなければ、日本にとって建設的な道は開けません。

9 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2010/10/07 at 13:16

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尖閣諸島における合理性

アゴラに立て続けに投稿された記事を見ると、領土侵犯の問題は、普段は合理的な判断力を持つブロガー達をも、盲目的な愛国心(=間違った愛国心)に駆り立てる危険なエネルギーを持っていると感じています。その中で池田信夫氏は、愛国心とは異なった視点で、船長釈放は「合理的」な判断であると述べておられるのが印象的でした。

以前に愛国心の種類について書いた時、政治的な意味での「国土」を愛国心の対象にする事で、国家という仮想利益団体の「利益」が優先され、人民のリアルな利益が紛争により失われるリスクが高くなると述べました。今回はそれに該当するケースかもしれません。

国益=民益と定義すれば、尖閣諸島を領有する事により生み出される経済的利益が、中国と紛争状態になる事により失われる経済的利益に比較して十分に大きければ、政府は海上防衛力へ投資して、尖閣諸島の領有と実行支配を行う事に合理性が生じます。その逆であれば、日本が尖閣諸島を領有して実行支配する経済合理性は有りません。国家のハードな分裂リスクを有している中国と違い、社会が十分に安定している日本では、国益(=民益)とは経済交互理性の観点から十分に定量的な判断が可能であると考えます。

政府あるいは民間のメディアまたはシンクタンクは、尖閣諸島周辺の海洋および海底資源の市場価値(現在価値)を数値化して、これと防衛力投資 + 遺失利益の総額とを比較して、人民へ提示するべきではないでしょうか。

経済合理的に十分な価値があれば、日本政府は早急に、尖閣諸島に海上自衛隊の基地をつくり、周辺海域を外国船の立ち入り禁止海域にして、「実行支配」を行うべきです。もし自衛隊の基地が人民解放軍の襲撃を受ければ、間違いなく「日米安保」の対象になります。もし十分な価値がないと判断すれば、尖閣諸島を中国と共同管理の提案を行う等、中国政府の面子を立て、日本の経済的メリット(=民益)を重視した政策に転換するできではないでしょうか。

1 comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/09/26 at 22:49

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日本の未来の為にベネッセを買収せよ

ソフトバンクの孫社長と松本副社長は、原口総務大臣の「光の道」構想を強力にプッシュしています。私はベンチャービジネス経営者として孫氏を尊敬していますし、孫氏の提案にロマンを感じています。しかしながら細部において、ソフトバンクの「光の道」提案の前提条件であるトラフィック増大に関する質問に、未だ回答を頂いておりません。孫氏は私に対して、何らの義務を負っている訳ではありませんが、少なからぬ人が私と同様の疑問を感じていると思われますので、前向きにプロジェクトを進める為にも、いづれ何らかのカタチで回答を頂けるものと期待しております。

さて、孫氏が「光の道」提案の中でキラーアプリとして取り上げられたからでしょう、電子教科書が俄かに脚光を浴びているようです。斎藤隆博氏は全ての人に公平な教育 (電子教科書) の真の狙いという記事をかかれ、私もその記事に早速TBさせて頂きましたが、そのあとでふと思いついた事があります。

ソフトバンクがiPadを電子教科書のプラットフォームとして全国の学校へ普及させたいのなら、iPadを電子教科書として成功させたいのなら、その為のキラー・コンテンツが必要です。

iPadの素晴らしいU.I.に負けないような、生徒が学習するモチベーションを高められるリッチな教科書コンテンツを開発し、iPadにバンドルして学校へ配布できれば、敵(アンドロイド端末に既存の退屈な教科書アプリをのせた競合各社)に勝つのは容易かもしれません。ベネッセは、生徒が楽しく学ぶ為の様々なコンテンツとノウハウを持つ興味深い企業です。光の道構想を一歩進める為に、ソフトバンクはベネッセを買収して、iPadの為のキラーコンテンツを開発するべきです。

うちの息子は幼稚園からずっと、英語学校へ通っていますので、日本語の読み書きを覚える為に、自宅で「こどもチャレンジ」と「チャレンジX年生」をやらせていました。それで、自分で教材の中身をよく見ていたので分かりますが、子供が勉強のモチベーションを高める工夫が随所に見られ、すごいノウハウを持つ会社だと驚きました。このような会社がiPadの為の教科書コンテンツを開発すれば、きっとすごいものができるのではないかと考えています。

松本氏は国際競争力の作り方を述べられています。幼稚園入園前から高校卒業まで、楽しく学習でき、興味を刺激し、探求心を高め、教科書の内容から周辺の知識までを網羅したすばらしいソフトバンク自身が提供する事ができれば、日本の子供たちの学力が向上し、必ずや国際競争力の向上に役立つ事でしょう。

企業戦略的な見地からだけでなく、日本の未来の為に、ぜひ孫氏と検討されては如何でしょうか。

4 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2010/07/29 at 21:40

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電子教科書は生徒の学習意欲を高められるか?

斎藤隆博氏は電子教科書の真の狙いは「習った時期の違い」問題を軽減してくれる事だと主張しています。しかし齋藤氏はそのすぐ後で、参考書などを購入すれば解決すると自問自答しています。ほかに通信教育もあるので、地域格差は自助努力により埋める事が可能でしょう。

この記事にTBされたんがぺ氏は、電子教科書の最大のメリットは、「様々な書籍に触れやすい」ということではなかろうかと述べています。確かにそれは電子教科書の重要な機能ですが、子供自身に「触れたい」という意思がなければ宝の持ち腐れです。

ところで私の息子は幼稚園から今までずっとフィリピンと香港で過ごし、ずっと国際学校で英語教育を受けています。そこで妻の意思(日本人だから日本語の読み書きは普通にできてほしい)により、幼児から小学校高学年まで、ベネッセの学習教材を日本から送ってもらい、日本の小学生が学ぶ内容を独習していました。

ベネッセの学習教材は年間契約です。1年を通して、子供が自宅で楽しく学習を継続できるように、工夫が随所にみられます。紙に印刷された教材でこれだけの事が可能です。これを電子教科書の中の教育コンテンツとして作り込めば、子供が学習する楽しさをより高める事が可能になると考えます。

学習する事が楽しければ、子供は学習対象への興味を高めます。興味が高まれば、探求心が高まります。そのような状況において、リンクを張ったり、カラー百科事典と連動させたり、自分でググったりする事ができる電子教科書は、子供の好奇心と探求心を満足させる様々な手段を提供できるアドバンテージがあります。

逆にいえば、電子教科書の機能がいくら優れていても、子供が学習に興味を持てる教育コンテンツを提供できなければ、税金の浪費で終わるだけでしょう。

1 comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/07/28 at 14:11

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地方の産業がグローバリゼーションの波に乗る方法

管首相の民主党は経済成長政策のひとつとして、法人税を段階的に25%まで引き下げる事を検討しているようです。アジアでダントツに法人税が低いのは香港とシンガポールですが、日本の国税からタックスヘイブンとして認識されていました。ところが今年の3月に港日租税条約が結ばれ、なんと香港の海外統括会社から日本本社への利益配当額の95%が無税になりました。こんな素晴らしい制度は地方の中小零細企業もぜひ利用して、海外でどんどん儲けて、日本の本社へどんどん利益配当金を送金してほしいものです。そうすれば地方にもお金がまわり、地元の飲食などのサービス業も景気が良くなって、GDPがガツッと上昇するかもしれません。

そういう訳で、仕事の営業をかねて書いている香港★起業★ブログの方に、あなたの会社は成長するという記事を書きましたので、海外市場(特に香港と中国)へ展開したいと考えている方はぜひご一読下さい。1ページ目の目次を参考としてご紹介します。

<目次>
あなたの会社は成長する

(1)海外進出の手引き
(2)海外進出の第一歩
(3)自力で海外進出する理由
(4)商品を海外でプロモートする
(5)海外進出の戦術
(6)香港の会社設立は難しくない
(7)タックスヘイブンを利用した海外展開戦略

香港へ進出したいと考えられている経営者さん、ぜひこの記事のコメント欄へご連絡ください。(笑

Be the first to comment - What do you think?  Posted by bobby - 2010/07/03 at 01:03

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マーカーワクチンは口蹄疫対策のイノベーション

山内一也氏の「人獣共通感染症 第116回追加 口蹄疫との共生」によれば、ワクチンと感染の抗体を判別できるマーカーワクチンの技術は、1970年代後半に開発されているそうです。

(引用開始)
新しいタイプのワクチン開発は1970年代後半に組換えDNA技術が生まれた際に、その応用問題第1号としてベンチャーのGenentechが試みたことがあります。これはウイルスの被殻の蛋白VP-1を大腸菌で産生させた、サブユニットワクチンでした。しかし、1980年代初めにできてきたワクチンは現行のワクチンよりも免疫力が弱く実用化には到りませんでした。
 その後は、殺処分という国際方式が存在している中でワクチン開発をしても企業利益にはつながらないために、企業によるワクチン開発はこの30年間ほとんど試みられていません。その間にほかのワクチンでは第2世代、第3世代ともいえる新しい技術が試みられていますが、口蹄疫は取り残されたわけです。一部の国立研究所でDNAワクチンやベクターワクチンなどの新しいワクチン開発の試みが細々と続けられているだけです。
(引用終わり)

山内氏も、人とモノのグローバル化が進む現代に、殺処分だけで清浄状態を保つ事はますます困難になっていると指摘しています。口蹄疫という恐ろしい感染力を持つウイルスへの対策は、科学的かつ合理的なリスク管理が必要です。政府と地方自治体は、可及的速やかに、この疾病への本格的な対策組織を発足し、発生予測、迅速かつ経済的な予防ワクチン摂取、自衛隊による地域封鎖、発生時の客観的なリスク評価など、経済的なダメージコントロールを容易に行えるように法律を整備するべきです。

参考記事:口蹄疫殺処分は、食肉輸入の非関税障壁を維持することが目的である  井上晃宏(医師)

19 comments - What do you think?  Posted by bobby - 2010/06/08 at 10:27

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リスク管理から見た口蹄疫対策

井上晃宏医師がアゴラで

口蹄疫に関する現在の対策を批判して以来、同記事のコメント欄では様々な意見が議論されています。ところで、動物衛生研究所の資料によれば、2009年から2010年にかけて、中国ではこれだけの広い範囲で頻繁に発生しており、この状況は素人目にも、中国政府はウイルスの封じ込めに失敗していると言う事ができます。韓国では8年ぶり、日本では10年ぶりの口蹄疫発生ですが、日本をとりまく東アジアの状況から見ると、悪化する口蹄疫禍の「はじまり」と見るべきです。


日本や韓国が国内でいくらウイルス封じ込めをして、清浄国化を行っても、中国で口蹄疫が拡大している以上、ウイルスが日本や韓国へ持ち込まれるのを水際で阻止する事は、現実的に不可能と言えます。不可能な前提を無視して、一国だけで清浄国を維持する政策は、まったく合理的でも現実的でもありません。少なくとも、東アジア全域で、口蹄疫が数年以上沈静化するまでは、いつでも発生する事を前提とした「リスク管理体制」を敷くべきです。

日本の政府と地方自治体が行うべき対策は、具体的には、再発する事を前提として、発生時の経済的被害を最小限に抑える為の、ダメージコントロールとしてのワクチンの予防的使用です。私は疫学の専門家でも獣医でもありませんが、ネットで入手した情報を総合的に判断して、下記のような対策を提案します。

1)ワクチンを全国の家畜へ機械的に4ヶ月から半年毎に摂取するのは、ウイルスが国内の野生動物へ拡散してしまった場合の対策です。

2)野生動物への拡散が確認されるまでは、日本に比較的近い東アジアの国口蹄疫が大規模に発生したタイミングで、国内の摂取対象地区を絞ってワクチン接種を行う。

2)国内でワクチン接種を行う対象地区は、発生場所と地理的に近いか、発生箇所との人や物の交流が大きい、畜産エリアを検討する。

3)ワクチン接種した地区では、ワクチンを接種しない識別用の家畜を配置し、定期的に抗体チェックを行い、ウイルス到来の有無を確認する。

4)国内でウイルス感染が確認された場合、ワクチン接種を周辺全てに広げ、かつ、自衛隊による汚染地区の物理的な封鎖を即時行う。自衛隊の医療資格者もワクチン接種できるようにする。

5)摂取ワクチンで感染が抑制されている場合は、発病した対象動物だけをと殺する。

6)ワクチンによって感染を抑制できないと判断された場合にのみ、封鎖地区の対象動物を全部と殺して自衛隊により焼却する。

ワクチンを使用する事で、隣国から非難される事を恐れる人がいるようですが、口蹄疫研究の先進国であるオランダは、ワクチン使用により口蹄疫の沈静化に成功しています。そのオランダ人を、ワクチン使用により入国拒否している先進国があるでしょうか。合理性のある対策を恐れる事は愚かな事です。

ワクチン摂取する事自体で、不活性化されなかったウイルスによる発病を恐れる人がいますが、技術的に未熟であった過去の例であり、現在の高い技術では、不活性化ワクチンでそのような事は起こらないと、人獣共通感染症で有名な山内一也氏は述べています。

同じく山内一也氏によれば、口蹄疫ワクチンの下記問題は、OIEが1957年に殺処分の国際条約を作った為に、企業が積極的に投資せず、その為に旧世代に取り残されていると述べています。ワクチン接種と発病の抗体を見分けられるマーカーワクチンの技術は既に存在しています。予防的ワクチン接種を行う国が増えれば、ワクチンの問題は改善されると考えます。
1)ワクチン接種と感染とで、抗体を見分けられない。
2)効果が半年しか持続しない。
3)ワクチン接種後に感染した動物がウイルスを撒き散らすキャリアとなる。

口蹄疫が家畜の恐ろしい伝染病であるのなら、政府は過去の法律にしがみつくのではなく、最新の知見に基づいた科学的かつ合理的なリスク管理の手法について、もっと研究を行うべきです。

6 comments - What do you think?  Posted by bobby - at 07:54

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