鯨肉は牛肉よりエコなのか

穀物で育てられた牛肉が、食品の中できわめて非効率なエネルギー源である事は昔からよく知られた事実です。牛1頭を育てる為に大量の穀類を要し、その穀類を育てる為に大量のエネルギーを要するからです。AFPのこちらの記事によれば、「全世界の温室効果ガス排出の18%が畜産業関連と言われ、中でも牛肉生産による排出量が最も多い。ペルティエ氏によると、先進国の食肉消費のうち牛肉が占める割合は30%に過ぎないが、畜産業全体の排出ガスの78%は牛肉生産に起因している」そうです。

この考え方で行くと、穀物によって育てられる豚肉や鶏肉も、牛肉と同様に非効率です。ロイターのこちらの記事によれば、「捕鯨船の燃料消費に焦点を当てた同調査では、鯨肉1キロ当たりの温室効果ガス排出量は1.9キロであり、牛肉の同15.8キロ、豚肉の6.4キロ、鳥肉の4.6キロに比べて少ないと指摘。「牛肉の食事1回分による温室効果ガスの排出量は、鯨肉の食事8回分に相当する」としている」そうです。

ここまで来ると、牛肉、豚肉、鶏肉は鯨肉よりずっとエコでない事が明らかです。ところで産経新聞の「鯨肉は牛肉よりエコ?CO2排出量は10分の1以下」という記事に対して、JANJAN新聞のカメネコクジラ記者はこちらの記事で「産経「鯨肉生産は牛肉よりエコ」はデマだった」という記事を書いて、あたかも鯨肉が牛肉よりエコである事自体を否定するかの印象を読者に与えようとしているように見えます。

産経記事の「牛肉1キロを生産するために、排出するCO2などの温暖化ガスは36・4キロ」がロイターの記事にある15.8キロにくらべて過大な評価なのか、それともビールを愛飲する松坂牛と牧草だけでで育った豪州牛(日本では人が無い)との差なのかは定かではありません。また「鯨肉の排出量は10分の1以下」も大げさに過ぎる表現と非難されるべきかもしれません。しかし「鯨肉生産は牛肉よりエコ」が間違っていない事はあきらかなようなので、カメネコクジラ記者は捕鯨批判するにしても、記事の書き方にもっと気をつけるべきかと思われます。

それに日本沿岸で商業捕鯨が再開された場合を想定すれば、鯨肉1キロに要する燃料費は、遠く南極近くまで行く現在の調査捕鯨における燃料費より大幅に下がる事は確実であり、反捕鯨のバイアスがかかったカメネコクジラ記者の記事もまた、事実とは異なるという事を指摘させて頂きます。

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11 Responses to “鯨肉は牛肉よりエコなのか”

  1. kkneko
    6月 7th, 2009 at 13:32
    1

    1.2段落目のロイター記事の試算は、沿岸捕鯨の燃料消費に伴うC02排出量のみの数字です。
    >しかし「鯨肉生産は牛肉よりエコ」が間違っていない事はあきらかなようなので
    根拠がありません。
    >日本沿岸で商業捕鯨が再開された場合を想定すれば、鯨肉1キロに要する燃料費は、遠く南極近くまで行く現在の調査捕鯨における燃料費より大幅に下がる事は確実であり
    大幅ではありませんが、下がるのはおっしゃるとおりです。記事中のリンクで既に記者自身が記載済みです。記事に事実と異なることは書かれていません。

  2. bobby
    6月 7th, 2009 at 13:45
    2

    kknekoさん、コメント有難うございます。

    >>しかし「鯨肉生産は牛肉よりエコ」が間違っていない事はあきらかなようなので
    >根拠がありません。

    人間による養殖鯨肉が出現しないかぎり、人が穀類で育てる牛肉と、野生の鯨を捕獲するだけの捕鯨を考えた時、kkanekoさんが記事中に引用した下記AFP記事だけでも十分に根拠があると考えますが如何でしょうか。

    http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2572329/3807742

  3. kkneko
    6月 7th, 2009 at 14:34
    3

    ご返答ありがとうございます。
    繰り返しになりますが、AFP記事は沿岸捕鯨の燃料消費のみ考慮した数字となっております。
    とくに遠洋捕鯨は燃料消費と合わせ莫大な設備投下が必要で、それに伴う環境コストがかかります。養殖は非現実的ですが、実現すれば環境負荷はさらに上がります。
    以下のリンクもご参照ください。
    「「鯨肉は牛肉よりエコ?」報道に関する公開質問状」
    http://kkneko.sblo.jp/article/29378622.html
    「捕鯨は畜産のオルタナティブになり得ない」
    http://chikyu-to-umi.com/kkneko/ushi.htm

  4. kkneko
    6月 7th, 2009 at 14:39
    4

    失礼致しました。ロイター記事とAFP記事を間違えてしまいました。
    AFP記事に関してですが、上掲リンクにあるとおり、畜産に関してはメタン回収や飼料の改良等排出削減ための技術が存在します。日本の年間食糧廃棄量が世界の食糧援助の総量の3倍に上るということも考慮する必要があるでしょう。

  5. bobby
    6月 7th, 2009 at 21:13
    5

    人間と文明が発生させる温室効果ガスが議論の対象である限り、牛肉については、牛と餌を育てる為に発生するCO2、育てる人間が発生させる全てのCO2、牛が発生させるゲップや糞から発生させるメタンのすべて、つまり成長して肉になるまでの全ての温室効果ガスの累計が計測の対象になります。

    ところが鯨は野生ですから捕まえるまでの成長過程で発生させる温室効果ガスはまったく計測対象になりません。 (自然界の温室効果ガスは、この議論の対象になません)

    この点ひとつをとってみても、鯨肉対牛肉のエコ度は、鯨肉に分がある事は、どのような数値を持ちいずとも明らかではないでしょうか。

  6. kkneko
    6月 7th, 2009 at 21:49
    6

    LCAの観点からすれば、遠洋母船式捕鯨の場合、巨大な母船を始めとする各船舶の建造・維持にかかる温室効果ガス排出・エネルギー消費がすべて(本来であれば)計測の対象になります。
    数値なしではやはり議論は成り立ちません。
    コメント3のリンク先をお読みいただいたうえでのご回答もお待ちしております。

  7. bobby
    6月 7th, 2009 at 23:58
    7

    >遠洋母船式捕鯨の場合、

    鯨肉と牛肉のCO2度の比較という議論に、調査捕鯨や遠洋漁業という前提条件を入れる必要はないと考えます。沿岸の鯨漁で捕獲する小規模で経済的な漁船が商業捕鯨で捕獲する鯨肉と比較すれば良いでしょう。

    更に鯨漁船は、帆船とエンジン駆動の両方で推進できる省CO2漁船等を開発し得る訳ですから、船の燃費も現在のものを前提にする必要はなく、漁自体に要するCO2度はどんどん下げられるとも考えられます。

    このように考えれば、鯨の捕獲作業に関連するCO2はかなり下げる事ができますね。

    ところでkknekoさん、船の建造や維持に要するCO2を言われるのであれば、牛肉を北米、南米、豪州などから輸送してくる為に要する巨大な冷凍輸送船、コンテナヤードの建造と、それにかかわる全ての産業全体のCO2の累積では、どう考えても牛肉の方が分が悪いように思いますが如何でしょうか。

    もし船の輸送が不要な国産牛肉で比較されるとしても、餌の穀類はやはり米国から輸入してくる訳で、巨大な輸送船やコンテナヤードと輸送船の燃料とそれらを支える全ての産業のCO2累積から逃れる事はできません。

    kknekoさんの議論は、「木を見て森を見ない」の典型的な例だと考えます。

  8. bobby
    6月 8th, 2009 at 00:16
    8

    >コメント3のリンク先をお読みいただいたうえで

    コメント3にリンクが見当たりません。Editモードでコメント自体を確認しましたが、URL欄には何も入力されていないようです。恐れ入りますが、もう一度リンクを入れて頂けますでしょうか。

  9. kkneko
    6月 8th, 2009 at 17:54
    9

    コメント7の前半のご意見は、地球温暖化にかかる環境負荷という観点に限れば、おっしゃるとおりだと思いますよ。私は否定しておりません。産経記事には残念ながらそういう視点が欠けているわけですが。
    ただし、単位生産重量当りで見た場合は(遠洋)鯨肉の方が分が悪くなります。
    双方とも下げる必要があるというのが一般的な考え方のはずですが。
    詳細はリンク先をご参照ください。リンクはコメント3の本文中にあります。

  10. bobby
    6月 8th, 2009 at 20:31
    10

    kknekoさん、コメント有難うございます。コメントの本文中にリンクが張ってあるのはコメント2だけですが、ブラウザの問題でコメント番号がずれて表示されるのでしょうか。

    コメント2はAFPの「「温暖化ガス排出食」の王者は牛肉、畜産分野の約80%」という表題のニュース記事ですが、単位生産重量当りの鯨肉の詳細な説明が見当たりません。googleで検索して探したところ、下記記事の中に「単位生産重量」という言葉を発見しました。

    http://kkneko.sblo.jp/article/29682226.html
    http://kkneko.sblo.jp/article/28686903.html

    しかし残念ながら、「単位生産重量」の定義や計算方については触れられておりません。説明をお願い頂けますでしょうか。

    ところで上記の記事中で「単位生産重量」に絡んでいる内容は、要約すると、「調査捕鯨は船団の移動距離がすごく長いので、公表されているCO2排出量よりもずっと多い」という感じではないかと思われます。(間違っておりましたら訂正頂ければ幸いです。

    この記事の内容につきましては、私の先のコメントでも述べましたように、調査捕鯨から「沿岸の商業捕鯨」に前提条件を変える事を提案します。

    また商業捕鯨では採算が重視されますので、行き当たりばったりの鯨漁では燃料消費量が多くなり困ります。商業捕鯨であれば、帆走モードを取り入れた経済的な船団を開発するとか、鯨の群れにGPS付発信機を取り付けて、既知の鯨の群れの場所が随時わかるようにするとか、現代の科学技術を導入して、「単位生産重量」当りのCO2排出量を大幅に改善する方法はいろいろあるかと思われますが如何でしょうか。

  11. kkneko
    6月 9th, 2009 at 01:27
    11

    リンクを再掲いたします。
    「「鯨肉は牛肉よりエコ?」報道に関する公開質問状」
    http://kkneko.sblo.jp/article/29378622.html
    「捕鯨は畜産のオルタナティブになり得ない」
    http://chikyu-to-umi.com/kkneko/ushi.htm
    Bobbyさんのお考えは、後ろ向きなことばっかりしか言わない他の捕鯨擁護論者の方と異なり、かなり前向きの発想で評価できると思いますよ。
    >「調査捕鯨は船団の移動距離がすごく長いので、公表されているCO2排出量よりもずっと多い」
    ええ、それもあります。ヘンなコメント書き続けてるヒトよりよっぽど理解力がありますね(^^; 南極捕鯨船団なんか、燃料が途中で足りなくなるほど使うから、わざわざ捕鯨母船より大きな補給船まで送りこんでいます。
    それと、飼料・畜肉輸送の場合は往復で輸送が可能だったり、空荷航行時に燃料消費が大きく減ります。だから通常片道で計算します。が、捕鯨船団は大量の燃料を往路に積んでいって、同じくらいの鯨肉積載して帰ってきますから、それだけで結局2倍はかかっちゃうのです。もうひとつ、船にはスケールメリットが大きく働きます。大きな船ほど、重さ当りの燃料消費がかなり少なくなっていくのです。飼料とかは大きな貨物船でいっぺんに運べますからね。
    「単位生産重量」に換算する必要があるのは、温室効果のインパクトを対等に比較するためです。「1kgの○○を生産するのに、これだけの温室効果ガス(CO2にしたらどのくらいになるかに換算)が排出されますよ」ということですね。
    最後の段落は、面白い考えで鯨研に提案してもいいんじゃないかと思いますが(^^; GPSは、取り付けるのに毎回船を使うと、その分余計に消費しちゃいますねぇ。野生動物に取り付ける計器はまだ長期間の使用には耐えられません。また、クジラの場合、種類によりますが、いつも同じ群れで行動するとは限りませんし、群れの頭数も少ないので。
    リンク先に具体的に提示してありますが、畜肉生産での排出削減を考えるか、他のオルタナティブを検討した方が効率的だと思いますよ。
    いずれにしても、野生動物を大きな人口の「主要なタンパク源」にするほど大量に捕獲することは現実的ではありません。RMPという現在の捕鯨を管理する方式では、可能な捕獲枠はいまの調査捕鯨と大差ないレベルなのです。

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