連想力とアセチルコリン

11月 16th, 2004 Categories: 健康

彼はむかし、夢見る少年だった。身の回りの様々な物から、奇想天外な世界を連想し、空想を膨らませて楽しむ事ができた。学校も彼を、教室に閉じ込めておく事はできなかった。先生の喋る様々な言葉から、どんどんと想像を広げて、いつの間にか空想の世界を飛び回っていた。彼はまるで、耳や目から入る様々な対象を題材とした空想のフラクタル模様を描く画家のようだった。

彼は私の親友でした。

現代の御伽噺のようではありますが、現実の社会の中では、夢見る故に困った事もありました。

彼は少年の頃、学校の授業に集中するのが苦手でした。先生の言葉を聴きながら、つい別のことを考えてしまうのです。別の事と言っても、もとは先生の発した言葉なので、まったく関係ないという事ではありません。しかし、思考が横道に逸れてしまうので、話しを集中して聞くことができません。

はたから見れば、まるで上の空で授業を受けていたように見えたでしょう。

彼は決して頭が悪いという訳ではありませんでしたが、このような問題の為に、学校の成績ではとても苦労したようです。

彼の頭の中で、いったいどのような事が起きていたのでしょうか。それはずっと昔から、私にとっての謎でした。そして長い間、私はその答えを求めていましたが、最近いくつかのキッカケを得て、その謎に迫ることができました。(と思っています)

一つ目のキッカケは、しばらく前に読んだ、On Off and Beyondの夢と錯乱2というブログ記事です。(TBさせて頂きました)

渡辺千賀さんが「夢と錯乱」という本を読まれたあとで、その内容を下記のようにまとめておられました。


■脳内には、覚醒を支配するノルエピネフリンとセラトニンという二つのアミンと、夢を支配するアセチルコリンがある。
■アミンとアセチルコリンのバランスによって、「夢」と「覚醒」どちらの状態になるかが決まる。
■アミンが増えれば集中力が増し記憶力も増す。アセチルコリンが優勢になると、あまり関係ない記憶の間にバリバリとリンクが張られ、さまざまな連想が頭を走りめぐる状態になり、思いがけない発想が生まれる。
■午前中はアミンが多い。だから集中できる。が、アセチルコリン的自由連想に基づく思いがけない発想は生まれてこない。もっとも夢を多く見るREM睡眠の間はアセチルコリンが優勢で、アミンは最低レベル。なので、奇想天外な夢を見ることになる。しかし、夢のほとんどは忘れてしまう。なぜなら記憶のために必要なアミンがないから

この要約によれば、脳内のアセチルコリンが優勢だと、あまり関係の無い記憶にバリバリとリンクが張られるそうですし、午前中はアミンが優勢なので集中できるそうです。記憶するためにはアミンが必要なのだそうです。

これを読んで、ふと思いました。午前と午後でアミンとアセチルコリンが入れ替わるという事は、たとえ午前でもアセチルコリンが優勢である人もいるのではないだろうか。また、アミンやアセチルコリンの分泌量も、人により格差があっておかしくないと。

(余談ながら、このように、ある一つの事象の結果を、隣接する別の事象へと関連させてゆく思考こそが、アセチルコリンの作用ではないかと思います)

もうひとつのキッカケは、うちの子供を躾けているときでした。今年6歳になる男の子がいるのですが、食事をたべている間も、しょっちゅう歩き回ります。食事に集中する事ができません。

「食事中は歩かないで」と怒鳴った30秒後には、テレビを見ながら「あっ!」とかいって立ち上がっているのです。似たような例を挙げればきりが無いほどです。

最初は、まだ子供なので脳の短期記憶を司る部分が十分に形成されていないからかと考えました。ところが、よく考えてみると、学校では(答えが99までの)足し算、引き算は比較的得意のようですし、6x6くらいまでの掛け算を(両手の指と足し算の暗算を併用しながら)機用に解きます。漢字も30個くらいは書けるようになりました。短期記憶に問題があるというのは、辻褄が合いません。

それではなにが原因なのだろうかと考えていた時に、ふと「夢と錯乱」のアセチルコリン優勢の話しを思い出したのです。

私から「食べてる時に歩いちゃ駄目だよ」と言われた時には、きっと「ああ、そうか」と思っているはずです。ところが、次の瞬間にテレビの画面が急にうるさくなると、意識がそちらへ飛ぶのでしょう。その後、テレビの音に関する別の思考に集中してしまい、脳内に積み重ねられるテレビと音に関する事柄に気をとられて、30秒後にはパッと立ち上がってテレビへと走ってしまう(結果として「食事中に歩くな」という指示に反してしまう)のではないかと考えました。

つまり、自分の意思に反して行動している時には、アセチルコリンによる連想活動が活発になり、注意力が散漫になり、目の前の出来事や指示に集中できなくなるのでないでしょうか。

このような考え方だと、言った事のすぐ後で、すぐに違う事をしてしまうという「ある種の子供に特有の」行動パターンを比較的合理的に説明できるのではないかと思いました。

さて、アセチルコリンを減らしてアミンを増やすトレーニングがあれば、知識理解型の学習効果をかなり高めることができる筈です。逆に、アセチルコリンを増やすトレーニングがあれば、ある問題の解決法を探している時には役立つのではないでしょうか。

また、脳内のアミンとアセチルコリンの分泌量とバランスを意図的にかえる事ができれば、私の友人のような子供が授業に集中できるようにする効果があるように思います。

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