実技試験はなぜ批判されるか(3)

3月 29th, 2009 Categories: 1.政治・経済

ソフトバンクが行おうとした「特別採用コース」について、私はこちらの記事で「プログラマの採用試験において試験時間内にプログラムを作成させるのと本質的な違いは無い」という意見を述べました。その記事への反論コメントを頂いたShiroさんに対して、こちらの記事で「問題にするのであれば、それは営業成果ではなくて拘束時間に対して「支払い」をするかどうか」であろうと述べました。それについて、Shiroさんからは更にコメントを頂きましたので下記に反論を行いたいと思います。

>フェアネスにとって重要なのはこの「立場の対等性」だと思います。

私も「立場の対等性」が重要だという事は原則として認めます。

>ある物を売るという職種については、雇用者が被雇用者に「*それ*を売る」というコミットメントを要求できるのはあくまでそれに対して対価を払うという契約を結んでいるからであって、契約締結以前にその契約を前提としたコミットメントを要求することは、雇用者側の立場を不公正に強くしているのではないか、
>雇用者側が選考条件に「自社の営業活動」を提示した時点で、被雇用者のそのような選択肢が奪われてしまう、
>応募者が自発的に自分の営業力を示すために営業を試みることには問題を感じません(応募者が自らの意志で選択しているので)。

ソフトバンクは筆記試験による通常の試験と、「特別採用コース」の2つの選択枝を用意していると聞いています。何が何でもソフトバンクで営業がやりたい人と、筆記試験では入社困難だが何とかソフトバンクに入社したい人を除けば、大半の応募者にとって第一選択費は通常の筆記試験でしょう。この場合、特別採用コースの選択が自発的でないと言えるでしょうか?私はこれを、自発的な選択であると認識します。

とはいえ保守的な雇用慣行が蔓延っている日本で、採用試験中に営利行為をさせる事は社会の反発を招くのは致し方ないのかもしれません。実際にソフトバンクでは、営業行為の実施を中止したようです。また、短期間の採用試験期間中に応募者の営業職の資質を見極める事も、現実的には難しいと考えます。素人の学生を集めて、数時間のハウツーのレクチャーをしたくらいで、一人で街へ出かけて受注をとってこれるほど、営業は簡単ではありません。より現実的に考えるならば、営業職の適正を見極め、良い営業を見出す手段としては、「正規採用オプション付きの営業アルバイト」が良いのではないかと考えます。この場合、ソフトバンクにはぜひ、新卒者だけでなく、フリーターや派遣労働者など、応募対象者の間口を広げて、現在の日本における雇用問題を突破する先駆者としても名を馳せて頂きたいと望むものです。

補足1:
「内定=労働契約締結では無い」と前の記事で述べましたが、フロレスタンさんに教えて頂いた情報を調べてみたところ、企業が内定を出した後で学生が誓約書を書く事で、「始期付解約権留保付労働契約」が成立した状態と認識されるようです。これについて私は、内定と誓約書という歪んだ慣習を改め、企業は採用通知と共に雇用契約書を送付し、学生はこれに署名・捺印して所定の期限に返送する事により法律上の雇用契約を確定させるべきだと考えます。

補足2:
始期付解約権留保付労働契約が成立した状態でも、4月1日までは未だ雇用関係は開始されません。多くの企業が行っている3月下旬の新入社員研修という慣例は廃止するか入社日以降にするか、あるいは始期日を研修初日に変更するべきです。これこそ企業が有利の立場を利用した不公正な行為だと思います。

補足3:
私が雇用者(採用者)として経験を持つ香港、上海、フィリピンでは、新卒大学生は卒業前の最後の試験が終了してから、履歴書を企業へ送ったり、面接のアポを取るなどの就職活動を始めるようです。これらの国では、大学卒業式は8月前後なので、就職活動も7月から9月になり、採用され出社を始めた日が入社日です。4月1日が全国一律で新卒入社日の日本は、なんだか異様な感じがします。

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2 Responses to “実技試験はなぜ批判されるか(3)”

  1. shiro
    3月 30th, 2009 at 07:31
    1

    またもや丁寧なお返事ありがとうございます。

    なるほど。通常の試験と特別選考が選べるので、その時点で選択肢がある、という解釈ですね。確かにそれは妥当です。

    そういえば、”Pursuit of Happyness” という映画でWill Smith演じる主人公が受けるストックブローカーの「トレーニング」も、報酬無しで営業させるものでした。「バイト料くらい払ってもいいのに」とは思いましたが、選考過程としてはアンフェアな感じがしなかったですね。あの映画の場合、
    * 選考前の自発的なコミットメント
    * 職種の特殊性 (受かればアップサイドは非常に大きい)
    * 渡されたリストを使っての電話営業 (友人関係などに頼る「喰い潰し型」営業が効かない)
    あたりが個人的にはフェアな印象につながったようです。

    就職活動の選択肢が広がる事自体は私も良いことだと思います。「新卒一括採用」が日本の雇用環境に大きな歪みをもたらしていると思っているので。他に、新卒・中途区別なしの通年採用、job descriptionに基づいた採用と報酬、採用選考権/人事権を人事部から現場へ、なども必要だと思っています。現代日本の雇用問題を突破する先駆者ならばこのへんに風穴を空けて欲しいものだとは思いますが。

  2. bobby
    3月 30th, 2009 at 10:10
    2

    Shiroさん、
    >「新卒一括採用」が日本の雇用環境に大きな歪みをもたらしている
    私もそう思います。私の香港の会社では、採用が7-8月になるときは新卒者が面接対象に入りますが、新卒だけを対象にした採用というのはやりません。また7-8月の採用時期でも、面接は新卒組と転職組が混じります。いろんな事が適度にばらばらと混じり合っているような社会の方が柔軟で生き易いと感じます。

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