環境適応の条件はロングテール

3月 16th, 2009 Categories: 1.政治・経済

田舎で猫を飼った事がある人なら解ると思いますが、同じ親から生まれる子猫達は、体の大きさや身体特徴にかなりばらつきがありますし、奇形もしばしば見かけます。一匹の母猫が産む子猫達に大きなばらつきがあるとすれば、その世代の母猫全体が(この季節に)生み出す子猫の身体特徴のばらつきは、非常に広範囲なものになると考えられます。スティーブン・ジェイ・グールド著のフルハウスを読むと、「種」は常時、非常に広い範囲の変異種を生み出しているそうです。

ダーウィンの進化論と聞くと、「環境変化に適応して種が進化する」と考えますが、種の進化(変異)の主体は種それ自体にあるのではなく、変化する環境にあります。環境に変化が起こると、変異種の中の、変化に適応できる子供が環境に対して優位となり、生き残って自分の遺伝形質を子孫へ伝える機会を得ます。つまり環境の変化とは種の変異を選別するフィルター条件の変化であり、環境変化によって、これまでは主流ではなかった身体特徴を持つ子供達に生き残るアドバンテージを与えます。

たとえば、ある「種」が生み出す体長サイズの変異を下記のような正規分布図でイメージしてみましょう。X軸の中央が平均サイズ、左端へゆくほど小さくなり、右端へ行くほど大きくなるとします。種が出産(産卵)する毎に、その世代全体の子供は(成長時における体長サイズの)正規分布の左側から右側までのばらつきを含んでいます。変化した環境が大きな体長に適しているならば、正規分布における平均値は、新世代が生まれる毎に大きくなるでしょう。身体サイズは解りやすい例ですが、環境への適応は他にも手足や首の長さや強さ、保温力(冷期)、放熱力(暑期)など、非常に多くのパラメタがありますね。

池田氏の記事で、ダーウィン(?)の言葉を取り上げて、「資本主義の本質をもっとも的確に表現した言葉」だと述べています。社会主義や共産主義が、「理想」を持つ理念であるのに対して、資本主義とはまさに、変化に適応する為の合理的な手段と言えます。ロシアも中国も資本主義的手段によって経済的に復活したのは偶然ではありません。

さて、スティーブン・ジェイ・グールド式に、ダーウィン進化論の理解を企業に当てはめてみると、興味深い内容が浮かび上がってきます。ある企業の事業内容(変異の幅)を正規分布図に描いた時に、市場に変化がない時には、平均値の近くに資本力を集中する事で、最大の利益を得る事ができます。市場が大きく変化している時は、X軸の左右広くに多様な事業を展開している企業は、その中のどれかが新しい環境条件に適応して、次の主流ビジネスとして発展する可能性を持ちます。市場の変化を生き残れる企業とは、常に一定の予算を事業の多角化に振り分けて、正規分布図におけるロングテールを持っている企業ではないでしょうか。

いま、世界の経済は激動期を迎えています。このような時代には、企業が自分の得意分野に閉じこもる事は、むしろ生き残りの可能性を低下させる事になりかねません。一定の予算をロングテールに振り分ける勇気を持った経営者が、新しい時代の成長を手にする可能性が高いと言えます。

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