ブログ閉鎖宣言で思う事(2)

9月 8th, 2004 Categories: 健康

キモい写真もシモネタもないのに、アクセス数が毎日伸びているのに驚いています。沢山の方がお医者様とブログの関係について感心を持っておられるのでしょう。

9月6日にブログ閉鎖宣言で思う事という記事を書きましたが、その後で幾人かの方からコメントやトラックバックを頂きました。有難うございました。みなさんのコメントやトラックバックを見ながら、もう一度、この問題について考えて見ました。

9月4日に、脳のお医者さんが閉鎖のお知らせを出してサイトを閉鎖しました。

|ご批判は真摯に受け止めております。

|私以外の脳外科医があらぬ誤解を受けては困るのと、
|このページが医療不信の源になってしまっては困るので、
|ページを閉鎖することに致しました。

|自分の国語力の無さ、浅慮を深く反省しております。

このような内容です。(実際には、その翌日には「閉鎖の知らせ その弐」が最後の記事になりました)

同じ脳外科医さんからのお叱りを受けて、「医療を題材にする事の難しさ」を痛感したのが理由との事でした。ところが、お叱りを受けたという記事も、その記事を批判したコメントのどちらも、今では削除されているので、なにが原因で閉鎖したのか誰にもわかりません。

私がよく巡回する医療関係ブログサイトのいくつかで、同業であるお医者さんからの批判コメントをよく目にしていたので、ははん、今度もこういうのにやられたのかなと推測しました。

そこで、ブログ閉鎖宣言で思う事という記事の中で、

●お医者さんは聖職者的職業倫理観を持っている(と仮定する)
●すると、それが精神的な制約条件となり、これを根拠とした批判に弱い
●弱いとはつまり、自分がブログで書いている内容に対して、これを理由に批判されると、
 自己の中の矛盾を解決できなくなり、破綻(ブログ閉鎖)してしまうのではないか

このような「弱さ」を解決する手段として、
●医者の職業倫理観を、聖職者的なものから、より合理的な土台へと変革してはどうか
●合理的な職業倫理観というのは、たとえばジャンボジェットのパイロットやエンジン整備士が
 もっているそれが参考にはならないか。彼らは、日常的に人命を左右する仕事であり、時に自己
 を犠牲にしても乗客を守ろうとし、それらをプロとしてのプライドで完結させている。
●上記を前提として、医療業務という仕事を特殊な仕事と考えず、医療技術者、医療サービス業
 としてとらえてはどうだろうか。

このような私の記事に対して、hanjukuさんとthunderball-01さんがコメントで、別の角度での視点を与えて下さいました。(改めて御礼を申し上げます)医者の守秘義務についてです。

つまり、医者は守秘義務を負っているのだから、たとえ匿名でも、診療や手術の内容に触れるような記事を書いても良いのだろうか?という事です。

この件について、私は弁護士ではないので、残念ながら詳しい記事を書けません。しかしながら、私の業務にもNon Disclosure Agreement(秘密保持契約書)というのがあります。このように明文化された契約書でさえも、業務上知りえたあらゆる内容に適用する事はできません。すべての守秘義務には、適用範囲というものがあるのです。(そもそも契約社内に生きていない日本人は、守秘義務というものを神聖化して、かってにどんどんと範囲を広げているのかもしれません。)

日本(国により異なるでしょうから)における、医者の、医療行為中に知りえた患者の情報を、どういう条件で、どこまでの範囲でならブログに書けるのか、日本の法律に詳しい弁護士のコメントを頂ければ大変ありがたいと思います。

このブログを読まれたお医者様の病院に法務部があって、契約している弁護士から詳しい話しを聞くことができれば、そういう内容の記事を、ぜひとも書いてほしいものです。(そのときは、この記事にトラックバックしてくださいね)

次に、Dr-PPさんがblog閉鎖で思うことという記事を書かれ、トラックバックして頂きました。私の記事も大々的に引用して頂き、(初体験なもんで)びっくりするやら嬉しいやらで興奮しながら読ませて頂きました。

サービス業なら仕事の内容を愚痴っても良いのか、という件は、私も考えが浅かったと反省しています。良いか悪いかといえば、これは悪いですよね。

ただ、世の中にはいろんな業界の方のブログサイトがあります。そういう方が自分の仕事の事を記事書けば、会社の愚痴、上司の愚痴、お客の愚痴といった内容が出てくるでしょう。そういうブログの記事を読んでも、普通は「キミキミ、例え匿名でも、お客の愚痴は守秘義務違反だよ」などという真面目なコメントがつくでしょうか。私はつかないと思います。しかし医療関係ブログでは良く見ます。

この差はなんなのか、という事が言いたかったのです。医療という業務が、特別視されている、医者自身も、医療関係でない人も、医者は特別だ、と考えている事が「普通じゃない」のではないか。そして、医者という職業も、21世紀には、普通の職業の仲間入りして良いのではないか、という事が(前回記事で)言いたかったのだと思います。(他人事のような表現ですみません)

また、医療をサービス業ととらえる事の難しさの例として、下記のような説明をされています。

|ただ、医療が、純粋に単なるサービス業、単なる仕事だととらえられるかというと難しい気がします。
|例えば、自分の担当の患者が末期の癌で、
|明日の朝までは持たない状態だったとします。
|その場合、私なら、ずっと病院にいて、その患者さんの最期を見取ってあげようと考えます。
|しかし、この部分はもう仕事じゃないんですよね。
|当然、残業代も出ませんし、たとえ朝まで起きていることになっても
|その朝から通常の業務があるわけです。

また、だから医者には聖職者的倫理観が必要なんだと言われています。

この趣旨は私なりに分かるつもりです。自分の患者が末期癌で、今日にも死ぬという時に、その患者を見取る事が、はたしてサービス業と割り切って出来る事なのか?という事ですよね。

この例を出された時、もしかしたらDr-PPさんは、サービス業と、仕事としての割り切りと、2つを同時に考えられたかもしれません。

お医者様でも、末期癌の最後を見取る為に、みんながみんな、徹夜で付き添うでしょうか?たぶんそうする医者もいれば、家に帰る医者もいるのではないでしょうか?家に帰る医者は、自分でできる仕事は終わったと「割り切った」のでしょう。

最近は話題に上らなくなってきましたが、白い巨塔の財前教授が割り切り派で、里見助教授が割り切れない派ではないかと思います。

門外漢の私が書けるのは、あくまで推測にすぎませんが、医者という職業の目的は病気や怪我の治療を行い、最後には治す事だと思います。しかし、治療という仕事の結果が失敗だと、患者の死につながります。治療という業務工程は、今だ発展途上にあり、成功率100%ではありません。すると、医者も人間ですから、結果の死に対して割り切れない感情も出てきます。Dr-PPさんが言われた「見取る」という行為は、この割り切れない感情ゆえにあるのではないでしょうか。

この割り切れない感情と、医療がサービス業になれるかという事は、別次元の話しのように思います。

人の死を見取る訳では在りませんが、他のサービス業でも、割り切る人と割り切らない人がいます。

私は業務ソフト開発のSEをしています。この仕事は、技術職でもあり、サービス業でもあります。私の業界にも割り切る人と割り切れない人がいます。

この仕事は500万円の契約だからと「割り切って」、お客の要求した仕様が実際の業務に適合していない(出来上がったシステムが業務に使えない)としても、契約は契約だと考えて、仕様通りのシステムを納品して終わらせるSEがいます。(プロジェクトは利益を出したが、お客からは恨まれる)

この仕事は300万円の契約だから、そこまでするのは「割りに合わない」という時でも、契約は契約だと割り切れず、お客がきちんと使えるようになるまで、システムを一生懸命に改良し続けようとするSEもいます。(プロジェクトは赤字になったが、お客さんからは感謝される)

前にジャンボジェットのパイロットという例を出しました。旅客機のパイロットは、技術職の性格が強い業務ですが、お客へのアナウンス等もしますのでサービス業的でもあります。旅客機はときどきハイジャックされますが、そんなときパイロットは自らの命を犠牲にして乗客を守ります。パイロットの事を聖職者と呼ぶ人はいませんが、あたかも聖職者のような自己犠牲を伴う業務でもあるのです。

長年、聖職者意識を持たれているお医者様方の耳には、サービス業(あるいは普通の職業)という響きは一段低い業務という印象を持たれるかもしれません。しかし、サービス業というのは、単に業務の形態を示す言葉(患者というお客へ医療というサービスを提供する)にすぎません。その業務の尊さ、要求される責任感、必要とする資格や知識の量を表しているわけではないという事をご理解頂きたいのです。

職業に貴賎無しという言葉もあるように、サービス業という職業が貴賎を表している訳じゃないという事は、分かっていただけると思います。

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  2. 吾輩は猫である? トラックバック | 2004/09/14
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