ブログ閉鎖宣言で思う事

9月 6th, 2004 Categories: 健康

毎日毎週のように訪問していた「ブログサイト」が閉鎖宣言をしました。同業者である他の脳外科医から批判を受けての事だそうで、残念でなりません。批判を受けて自ら閉鎖した医療関係のブログを見るのは、これが初めてではありません。これからも起るでしょう。これは、もっぱら私の(根拠のない)想像ですが、医療関係者が持つ聖職者的職業倫理観が、ブログの持つ匿名的な開放性と矛盾して、このような結果をまねくのではないかと思うのです。もしそうならば、この矛盾を解決する方法はあるのでしょうか?

この閉鎖宣言したサイトへの批判がどのようなものであったか、ブログ管理者本人により内容が削除されているために分かりませが、これまでいくつかのお医者様のサイトへ書き込まれる同業者からと思しき批判内容から想像するに、恐らくは下記のどれかに抵触した内容だったのではないかと想像します。

●医者は慈愛に満ちて弱者を救う存在でなければならない。
●医者は社会の模範者で在らねばならない。
●医者は正しくなければならない。
●医者は(あとは適当に埋めてね!)で在らねばならない。

なにが言いたいかというと、医者自身が、医者という職業を聖職の一つであると考えて来たと思います。そして、その考え方を念頭において聖職者的職業倫理観を構築して来たのではないでしょうか。

ですから、真面目なお医さんほど、(普通の人間にはとうてい実行不可能な)この考えに縛られてしまい、ブログでストレス発散をすると同業者から(一見)正論的な批判を受け、その結果として、理想と現実のギャップに苦しんで(大きく凹んだり、ブログを閉じたりして)しまうのだと思います。

ところでお医者さまの仕事は、このような理想的職業倫理観なしで、医療業務サービスを正しく行う事はできないのでしょうか?

現代の職業を考えるとき、別に聖職と言わなくても、銀行、公認会計士、飛行機会社など高度な企業倫理を要求され、それを守っている職業はいくつもあります。三菱自動車の問題隠しのニュースを見ると分かりますが、自動車メーカーでさえ、高度な企業倫理を要求されている事がわかります。(三菱自動車は守らなかったが、日産やトヨタは守っているという意味。)

という事で、お医者さまも古い「聖職者的倫理観」を脱して、より「合理的な」職業倫理観を持つべきなのではないでしょうか。(職業倫理のコペルニクス的転回?)

つまり、お医者さんの医療業務を、技術者あるいはサービス業の一種として捕らえたらどうでしょうか?という事です。(立場をわきまえぬ、大それた発言ですみません!)

外科的手術を行う業務 = 外科手術を行う医療技術者
診断や治療を行う業務 = 医療コンサルタント
専従研究者 = 研究職(診断も治療もしない人を医者と呼ぶのでしょうか?)

たとえば開業医の先生(先生という呼称が、既に聖職者を意識しているのかもしれませんが)は、毎日、沢山の患者(と呼ばれるカスタマー)へ治療サービス(薬を処方したり、簡単な外科処置を施したり)を提供するサービス業といえます。

サービス業の常として、毎日、多数のカスタマーのワガママに耐えていると、自然と愚痴をこぼしたくなります。コールセンターのオペレータがブログで、「今日はこんなアホなクレームを言ってきた人がありました」と茶化しても、だれも「そんな事、言うべきじゃないだろー」と真面目にコメントする人は少ないでしょう。ところがお医者さまが愚痴をこぼすと、「あんたは見下げ果てた医者だ!」バッサリ斬られてしまう訳です。

ところが、開業医をサービス業と考えれば、こんな斬られ方はしないし、言われても「私は誰に恥じる事も無く、自分が適切と信じる処置を、カスタマーへ行っています。そっから先を、あなたにとやかく言われる筋合いはありません」と切り返せる訳です。(まあ、言ってしまうとコメントで大議論が始まる事もあるかもしれませんが、それはそれで意義があるでしょう)

ところで、いままで自分を「医者」と考えていた人が、自分の事を技術者あるいはサービス業と考え方を変えた時に、倫理の破綻が生じる事を危惧する人がいるかもしれません。しかし、そういう考え方は、ナンセンス(死語?)です。

ジャンボジェットのパイロットやエンジン整備士は技術者の範疇にはいると思いますが、彼らの仕事の結果が、一回のフライト毎に数百人の人命を左右しています。監査法人に勤める公認会計士はサービス業の範疇に入ると思いますが、高い職業倫理観をもって、不正を生じさせないように(あるいは賄賂を受け取って点数を甘くしないように)企業の監査を行っています。

技術者だから人命を預かれない、サービス業だからいいかげんな仕事になってしまう、という考え方はおかしいでしょう。

要するに、自分の職業に対するプライドがあれば良いのだと思います。仕事の結果(患者の理解を得て病気を治す事)が大事なのであり、治療行為の精神を問うて、不必要に自分の職業を聖職化する事は、今の時代にあってはマイナス要素があるだけかと思うのですが。

医療関係者のみなさん、如何でしょうか。(見当違いの事を言っているようでしたら申し訳ありません)

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