クラウド時代に飛躍するQR Code

3月 1st, 2019 Categories: 1.政治・経済

Apple Payの日本進出でSuicaが選ばれた事で、Suica (Felica) は新しい優れた技術、QR Codeは古くて劣った技術と勘違いしている方をしばしば見かけるようになったので、久しぶりにブログ記事を書く気持ちが湧いてきました。という事で、早速、本文へ移りたいと思います。

先に Suicaについて紹介します。SuicaはソニーのFelicaを使用していますが、大本の技術はRFIDという 「 ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm~数m)の無線通信によって情報をやりとりするもの、および技術全般 」 です。(参考文献1)RFIDは1980年頃に欧米で開発がはじまり(参考文献2)、物流、FA(ファクトリーオートメーション)、出退勤管理や身分証などの分野で普及が始まりましたが、一個あたりのRFIDのコストが高く、バーコードのように全商品へ添付する等の普及には高いハードルがありました。1994年頃にソニーがFelicaを世に出し、1997年に香港のMTR(地下鉄)のオクトパスカードとして採用、2001年にはSuicaとして採用、2002年から2009年までシンガポールのEZ-linkという交通カードとして採用されました。(参考文献3)Suicaは世界で最も成功したRFIDといえるかもしれません。


一方で、QR Code技術の元になっているバーコードが米国で考案されたのは1948年、普及を開始したのは1960年代、日本で導入を開始したのは1972年との事です。(参考文献5)以後、現在に至るまで、バーコードは物流業界を中心にたいへん普及していますが、(実用的なラベルサイズを考慮すると)表現できる情報の量と種類に大きな制約がありました。(参考文献6)その為かどうかは分かりませんが、日本の自動車部品メーカーであるデンソーが1994年に、QR Codeという二次元コードを開発しました。QR Codeは比較的小さなサイズで、数字なら7089文字、漢字なら1817文字、バイナリデータなら2953バイトを表現できるという画期的な技術です。(参考文献7)しかし、私の記憶では、QR Codeを利用したいろいろな試みがなされるも、中国でAlipayとWeChat PayがQR Codeによる決済方法を中国全土へ普及させる以前は、日本国内でウェブのURLをケイタイやスマホで紹介する事例を除いて、 数十桁以下のテキスト文字のQR Codeを納品用ラベルに表示するなど、トヨタ系の自動車部品メーカーを中心に、 限定的な分野でしか普及していませんでした。ちなみに、世間では二次元「バーコード」という呼び名で呼ばれており、それゆえに「バーコードって古くない?」的なイメージがあるようですが、QR Codeには「バー」が無く、バーコードと似て非なる技術です。

FelicaとQR Codeは、上記で述べたように1994年前後に世に出た、同じくらいに新しい技術と言う事ができます。両者を比較すると、優位なところと不利なところがあります。

Felicaは0.2秒と高速なデータの読み書きが可能で、JRが要求した1分間に60人以上の高速改札に適合しました。(参考文献8)光学スキャン読み取り式のQR Codeスキャナは、いくつかのメーカーの仕様を調べましたが、これほど高速なレスポンスはできないようです。しかし、スマホ決済に利用する場合には、スキャンの応答時間よりクラウドサーバーへの応答時間の方が圧倒的に長いと想定されるので、FelicaのQR Codeに対する優位性は特に無いと考えます。

ユーザーの識別方法は、Felicaは内蔵された固有番号による識別が原則なので、最初に自分の固有番号をサービス主体へ登録する必要があります。これは、自分でサービスを立ち上げようとする場合に、ユーザー側へ負担をかけるので、大きなハードルになり得ます。私は、AppleがSuicaを選んだ最大の理由は、Felicaとしての技術的優位性ではなく、すでに登録された膨大なカード(ユーザー)を保有するSuicaのサービスとしての優位性と考えています。一方でQR Codeは、サービス側が利用ユーザーと紐付けできる「任意のコード」を、クラウド側のサーバーが自由に生成してスマホ画面で表示する事が可能です。スマホ決済は「オンライン」状態で行う事が前提なので、固有番号でしか認識できないFelicaより、サービス側が自由に決められるQR Codeに大きな優位性があると考えます。

内蔵データや通信時のセキュリティーにおいては、Felicaは内蔵情報とデータ通信を暗号化しています。しかし、過去に香港のオクトパスは、内蔵された課金情報がハッキングされた高額のオクトパスが発見され、駅のホームでだれかれ無くカードの金額をチェックしたり、入金できる上限額(システム側で許容する上限)が下げられたりしました。これは、運営母体がFelicaの暗号方式に自信をもてなかったからと思います。一方でQR Codeは、決済時に使用するユーザー識別コードをサーバー側でリアルタイムかつ任意で生成して表示できるので、コードを一方向ハッシュで暗号化したり、毎回新しいコードを生成する事で「偽の認証」に対応できます。更に、新しい暗号方式が世に出る毎に、サーバーや端末のソフトウェア更新で対応できます。このように、セキュリティー面でもQR Codeに大きな優位性があります。

コスト面では、スマホ側へ専用のハードウェアとそのインターフェースを追加で内蔵させなければいけないという点で、Felicaが圧倒的に不利です。QR Codeは、スマホにかならず付属しているハードウェア以外に、追加する費用は何もありません。また、もし店舗で運用する場合も、小規模店舗なら店主のスマホに店側アプリを入れるだけなので追加投資が不要。コンビニはPOS端末のバーコードスキャナを流用できます。

以上のように、スマホ決済という用途においては、高速だが仕様を変更できないFelica/Suicaより、サーバー側で自由に識別コードを生成・表示できるQR Codeの方が、クラウド系のサービスにおいては圧倒的に優位であると考えます。

【参考文献】
1)RFIDについて
2)RFIDの歴史について
3)Felicaについて
4)Suicaについて
5)バーコードの歴史について
6)バーコードの種類について
7)QR Codeについて
8)Felicaの通信仕様

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