BSE(狂牛病)についての欺瞞

6月 5th, 2004 Categories: 健康

私の趣味は、人獣共通感染症(エマージングウイルス)の私的研究です。私は細菌学者でも野口英夫でもありません。ただ興味があるんです。

人獣感染症には、普通の病原菌にない強い特徴があるようです。エボラ熱やSARSなどのように、突然現れて猛威をふるい、あっという間に消えてゆくものが多いようですが、じわじわと人間社会の中に浸透してゆくものもあります。エイズやBSEがそうでしょうか。人様の社会を騒がせる、こういう個性的な振る舞いに興味をひかれてしまうようです。

今日は、日米でホットな話題を提供しているBSEについて話したいと思います。といっても、BSEそのものについてではありません。そういう話しは他に譲ります。私が話したいのは、BSEに対する米国政府の対応についてです。

人は、なかなか他人の失敗から学ばないようです。BSEはしばらく前にイギリスとヨーロッパ大陸で騒がれましたが、日本とアメリカは「うちだけは大丈夫」といっていました。日本でBSE騒ぎが巻き起こったときには、米国と奥州は高みの見物をしていました。ついに、米国にBSE騒動が上陸しました。政府は右往左往し、国内からは過去の対応(つまりなにもしなかった事)を非難する声が上がっています。そのような非難の声を打ち消すために、米国政府はしきりに「もう大丈夫」を連呼しています。でも実際にやろうとしている事をみると、どうも安全とはいえないようです。

BSE(狂牛病)とは、異常プリオンが神経細胞に蓄積して、スポンジのような空胞変性を引き起こすといわれています。詳細は、山内一也先生の下記サイトをご参照下さい。

人獣共通感染症(Zoonoses)講義

特に「第154回目講義 米国のBSE:プルシナー博士の議会での発言」は、現在におけるBESの問題点がよくわかる内容となっています。

●BSEの原因は(異常な)プリオンです。
●プリオン(異常なものも正常なものも)はウイルスよりもはるかに小さいために、死滅させる事が極めて困難です。
●プリオン病は発病すれば脳の激しい破壊を引き起こし、致死性は100%です。
●(異常な)プリオンに汚染されていない餌で飼育された牛でも、(異常な)プリオンが体内で自然発生する事があります。
●若い牛でも、(異常)プリオン汚染された餌により、BSEを発病している可能性があります。
●人の子の親として、屠畜されるすべての牛を検査している日本の方法を、なぜ米国が採用しないのか理解できません。
●人は人と牛由来の(異常な)プリオンを食べるべきではない。

プルシナー博士は、25年前にプリオンを発見したその人です。私なりに要約してみます。(誤解を防ぐ為に本文をかならずお読み下さい。)

ところで、米国の農務省や日本で牛肉の早期輸入再開を望む業者の中には、年齢の若い牛(30ヶ月、あるいは24ヶ月)はプリオンが発生しないので、安全であるから、全頭検査の必要なしで輸出しても安全であるという考え方があります。

在日米国大使館「ベネマン農務長官がBSE に対する追加の防御対策を発表

米国食肉輸出協会「BSE(狂牛病)対策

吉野家の「牛肉の安全性

農務省の見解を要約すると、「牛の餌から肉骨粉を取り除き、へたり牛を食用から取り除き、屠畜方法を改善すれば、BSEについては十分に安全だ」という理屈でしょうか。ところがこの考え方には重大な欠陥があります。

私如き素人になにがわかるかというお叱りは、以下の内容を読むまでとりあえず保留して頂けますでしょうか。理由は比較的に単純なので、だれにでも理解できる筈です。

信頼できない理由1:
BSEを発生させる異常プリオンは、健康に見える牛にも存在しています。BSEを発症した牛は、末期的症状として狂牛のような状態になるわけですが、具体的症状がでる何年も前から異常プリオンが牛の体内で増殖しているのだという事は、言われてみればだれにでも容易に理解できる事と思います。屠畜時に健康そうな牛でも、異常プリオンを持っている可能性は常にあるのです。農務省の検査スキームは、健康(そうな)牛については全頭ではなく抜き取り検査です。検査されなかった牛がBSEの予備軍であり、その肉をあなたが食べる可能性はつねにあります。

信頼できない理由2:
健康そうだが実はBSE予備軍の牛を屠畜したあとで、同じ機材で、本当に健康な牛を屠畜すると、その牛(とその後で屠畜される沢山の牛)も異常プリオンに汚染される可能性があります。

米国の農務省は、「普通の牛」にみられる異常プリオンの問題を、意図的に隠そうとしているのかもしれません。かつての日本の農水省がそうであったように、農務省は食肉業界(屠畜業界)の利益代弁者だと言われても良いのでしょうか。

プルシナー博士がおっしゃっている通り、日本が行っている全頭検査を実施して、異常プリオンのない安全な牛である事を確認したあとで屠畜する事以外に、100%安全であるとえる方法はありません。

あるいはまた、「米国の牛肉を食べた場合にBSEになる確立は●●%です」と、米国式合理主義で押し通す方法もあると思います。

最後に、ベネマン農務長官のBSE対策に対する米国市民団体からの反論をサイトを下記に紹介します。私がこのブログを書いたのは、もとはといえばこのサイトを読んだためともいえます。

米消費者団体パブリック・シチズンがUSDAのBSE対策を批判

平易な文章ながら分かりにくく書いてあります。時間のある人は読んで見て下さい。

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