保育士の離職率の高さは給与が原因か?

10月 24th, 2017 Categories: 釣りネタ, 1.政治・経済

巷ではホリエモンが、保育士の給与が低いのは「誰にでもできる仕事」と言って保育士をdisったという事案が発生して騒ぎになっております。まずは本件で、ホリエモンの一連の意見をまとめたオフィシャルサイトをご参照ください。

ホリエモン、“保育士ツイート”の真意「大変だから給料が高くあるべきってのは間違い」

上記記事を読んで頂ければ、ホリエモンが保育士をdisった訳ではない事は明白なんですが、一部の発言だけを読んで批判している方がおられます。BLOGOSには赤木智弘氏の反論記事が転載されました。

やりたくない仕事は、その人ができない仕事

これは脊髄反射の勘違い記事で、大した内容ではなかったのですが、記事のコメント欄でいろいろな方と議論していて、興味深い事実に気づきましたので、内容を再検討しながら下記に述べて行きたいと思います。

A)保育士の勤続年数と年収
保育士全体の平均年収は332.5万円(平均年齢34.8歳、平均勤続年数7.6年)

男女別の内訳としては:
男性保育士の平均年収は350.8万円(平均年齢31.4歳、勤続年数6.3年)
女性保育士の平均年収は314.2万(平均年齢35.4歳、勤続年数7.7年)

保育士の業界でも男性の年収が女性より高い事がわかります。保育士全体では女性の方が多いので、全体の平均年収は男性の年収より20万円ほど下がっています。

参考文献:育士の給料事情|統計からみる手取り・初任給・時給などの平均額

B)サラリーマンの勤続年数と年収
平均勤続年数(5〜9年):全体(371万円) 男性(456万円) 女性(263万円)
平均勤続年数(15年〜19年):全体(500万円) 男性(597万円) 女性(333万円)
平均勤続年数(25年〜29年:全体(624万円) 男性(722万円) 女性(366万円)

サラリーマンの世界では男性の方が多いので、同じ年齢帯域の全体の平均年収は女性の年収より108万円ほど上がっています。

参考資料:年収ラボ サラリーマンの勤続年数別年収

C)サラリーマンの平均年齢と年収
年齢:30歳〜34歳:男性(466万円) 女性(301万円)
年齢:35歳〜39歳:男性(502万円) 女性(293万円)

女性保育士の平均年齢は35.4歳ですが、35歳以上の女性サラリーマンの年収は30−34歳と比較して下がっているので、あえてサラリーマン女性の年収が高い方の30−34歳を比較対象として選びました。

参考資料:年収ラボ サラリーマンの年齢別平均年収

 

上記のAからCの数字を比較すると、以下の2つの事実が浮かびあがります。

1)保育士の平均年齢35.4歳の平均年収314.2万円に該当(30歳〜34歳)するサラリーマン女性の平均年収は301万円であり、平均年齢が近い場合に女性保育士の方がサラリーマン女性より年収が約4%高い。

2)女性保育士の平均勤続年数7.7年の年収314.2万円に該当(5年〜9年)するサラリーマン女性の平均年収は269万円で、平均勤続年数が近い場合に女性保育士の方がサラリーマン女性より年収が約20%高い。

3)女性中心の保育士の平均年収と、男性中心のサラリーマンの平均年収を単純に比較しても、男女の給与差がそもそもあって意味がない

女性保育士と女性サラリーマンの年収を比較した場合、平均年齢と平均勤続年数の両方の比較で、どちらも女性保育士の方が高い事がわかります。つまり、女性の職業の年収として見た場合、「手に職」系の保育士の給与は決して、「オフィスワーク」主体のサラリーマン平均より高いのです。

また、保育士の多くは女性なので、20歳半ばで結婚しても、30歳前後で出産休暇取った後も、正規雇用の保育士として共働きできるとれば、夫の年収が同様に300万円あれば、世帯収入600万円以上となります。これだけの世帯収入があれば、そこそこ良い生活ができると言えます。また、仕事のモチベーションを維持する最大の要因は、その仕事が好きになれるかです。その意味で、もともと子供と接する仕事を希望して保育士になった人は、好きな仕事をより長く続けたいと考えるのではないでしょうか。結婚後も夫婦の世帯年収600万円を維持できるのなら、本来は出産休暇後も引き続き保育士を続けたいと考えるはずです。

では、何が問題なのかというと、保育士全体の平均勤続年数7.7年という勤続年数の短さの理由は何なんだろうか、という事を考えないといけません。この数字からは、女性保育士が短大を出て20歳で就業開始した場合、多くが30歳未満で離職している可能性が考えられる。ではなぜ、せっかく希望した仕事に就いたのに、7−8年以下で離職してしまうのでしょうか?

これは、保育園の仕事がとんでもなくブラックだからではないかと考えました。その原因として考えられるには、非常に多い年間行事(イベント)と推測しています。下記は保育園の年間行事を表した一例ですが、おおきな行事だけで年間に14あります。

参考文献:保育園の年間行事ってどんなものがある?

上記サイトから代表的な年間行事(イベント)を列挙してみます。

1)入園式
2)春の遠足
3)プール開き
4)七夕まつり
5)運動会
6)参観
7)秋の遠足
8)収穫
9)お泊り保育
10)クリスマス
11)節分
12)ひな祭り
13)生活発表会
14)卒園式

上記の他に、毎月の誕生会があります。

また、個別に保育園のウェブサイトで年間行事を見てゆくと、上記の他に、花祭り、こどもの日、母の日、父の日、お月見、七五三、正月の鏡開き、お別れ会などがあります。多い月で3つ以上のイベントです。

このようなイベントがあると、日本人は行事にふさわしい「飾り付け」や「大道具」や「小道具」を保育士さん達が毎回毎回、一生懸命に手作りします。また、毎月一回の「おたより」があります。これを作成するのも保育士さんです。子供たちが帰宅した後で、こういった作業をするのですが、当然の事ながら業務時間中には終わりません。

私の知人はこの業界で働いていましたが、行事で使う小道具類を毎日のように帰宅後に自宅で作成していたそうです。また、毎月一回の「手書き」のおたよりを、毎回徹夜して半泣きで作成していました。これ全部、違法なサビ残です。試しに「保育士 ブラック」でググると、関連記事が山のように出てきます。

あまり良く知られていないようですが、保育園とか幼稚園は子供の世話からイベントの準備まで含めて、かなり体力と気力を消費する過酷な仕事のようです。多くの保育士は、子供と接する仕事に夢を抱いてこの業界へ入るのですが、若さで体力と気力をカバーできなくなる30歳前後で、気持ちが折れて離職する保育士が多いのではないでしょうか。これが、平均勤続年数7.7年の理由であろうと考えます。

では、何をどうすれば、保育士の離職率を下げ、平均勤続年数を上げ、結果として平均年収を上げる事ができるのか?

私の提案する改善案は、保育園の年間行事(主要イベント)や月次のルーチン行事(おたよりや日誌付け)などを、原則として園児が帰宅した後の1−2時間の作業時間にすべて納められる範囲まで、イベント数を減らし、その内容(大道具や小道具や飾り付けなど)を簡略化しよう、というものです。その上で、現場の保育士が「楽しんで出来る」範囲の中で、イベントの内容を高めて言ったらどうでしょうか。

子供と接する仕事が好きで保育士になった人が大半と思いますので、好きで、楽しくて仕事をしていれば、仕事は辛くないし消耗しません。しかし、経営者にさせられていると感じると、我慢して耐えるようになり、消耗が激しくなります。経営者から保育士へ要求するボトムラインは、10年でも20年でも体力や気力に依存しない「軽負担」な作業で、いつまででも楽しく働ける労働環境までにしてはどうでしょうか。

そして、そこから先は保育士の「楽しみ」の延長でイベント内容を深められるようにする事で、職場が楽しくなり、離職率は低下し、子育て後にまた正規雇用として職場復帰したいと考える人も増えると思います。

ちなみに公立保育園に務める保育士の場合、職場も待遇も公務員なので、ブラックなサビ残がすくなく、勤続年数も長い人が多いため、すごい結果が出ています。

D)公務員保育所の勤続年数と年間所得
練馬区の公務員保育士全体の平均年収630.8万円 平均年齢44歳

参考文献:育士の給料事情|統計からみる手取り・初任給・時給などの平均額

公立保育園と私立保育園では、勤続年数による昇給%の違いはありますが、いづれにせよ勤続年数を伸ばす事は、平均年収アップに直接すながるという事を最後に紹介して、この記事の締めとしたいと思います。

 

追記:上記で参考文献として取り上げたサイトは私が選んだ代表例ですが、平均給与や保育園の行事などは、いろいろなサイトで数字や情報が紹介されています。複数の関連サイトの内容を比較した上で、あまり差がないと感じましたので、その1つの例として選びました。

(*)夜中に一気に原稿作成しましたので、計算ミスがありましたら恐縮ですがご指摘ください。

Facebook Comments
Tags:
Comments are closed.