生産技術の海外移転は容易ではない

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今朝の産経新聞によれば、シャープが鴻海の傘下に入る事について、ジャパンディスプレイの本間会長は、「シャープの生産技術が海外へ流れれば脅威になる」と述べたようです。鴻海の競争相手だった官民ファンドの産業革新機構は、シャープとジャパンディスプレイを統合させる計画があったようなので、本間会長の負け惜しみとも取れますが、この発言が本気であったとするならば、日本の生産技術についてかなり誤解しているのではないかと思われます。

シャープ・鴻海の“決裂”を期待、未練隠せぬ革新機構…“成立”なら日本勢に脅威

日本の製造技術を支えているのは、一にも二にも、日本的に優秀で定着率の高い現場の作業者達です。海外の製造現場では、現場作業者の流動性が高いところが多くて、教育する端から転職して行きます。たとえば中国の華南地区の多くの工場では、1年で半分近くの工員が入れ替わると言われています。工員の流動性の高い工場では、教育を定着させるのは容易ではありません。

また、日本の生産技術は「日本の文化に根ざした」ものが多く、一般的なノウハウとして切り出す事が難しいのです。一般化しやすいものの中で、3S(整理・整頓・清潔)や5Sなどがあります。これらの活動は、既に多くの海外の製造業が導入しているようですが、形を真似るだけでは、その目的とする効果を得る事ができず形骸化しています。

上記のような問題があって、海外の日系工場の多くでは、現場の指導をする日本人技術者を常駐させなければ品質や技術を維持できないところが多いようです。もしも鴻海のような大規模EMSがシャープの製造技術を導入したいのであれば、シャープの現場技術者を大量に鴻海へ移籍(出向?)させて、現場に貼り付けるしか方法は無いでしょう。

もしそのような状況になると、鴻海の現場が日本人技術者に依存する事になり、生産技術を改善させる一方で、組織が混乱して弱体化する(中国の企業文化は強いトップダウン志向であるのに、日本の企業文化はボトムアップがベースとなっており、折り合いが悪くなる)可能性があるのかな、と推測します。

異なる企業文化を持つ2つの企業が、お互いの長所を活かして合併するというのは、過去の例でもなかなか難しいようです。鴻海がシャープをどのように活かすのか、悶え苦しむのか、今から楽しみです。

【参考文献】

1)歴史の中の5S

2)生産管理講座 – トヨタ生産方式