雨傘革命へ至る道

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オキュパイセントラルという団体が香港の政府ビル周辺を占拠し、80発の催涙弾がデモ隊に向け発射され、多数の学生を含む数十万人の香港人が参加するに至り、ついに「雨傘革命」なる名前まで付いてしまったこの騒動の本質はどこにあるのでしょうか。

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いろんなメディア関係者が香港を訪れているようですが、はっきり言って、現場を取材するだけでは、いま起きている騒動の本質を知る事は困難です。デモ隊の現場はいくつかの団体とその周辺を埋め尽くす烏合の衆的な賛同者という構成になっており、どこにも中心がありません。

いま起きている事をどう理解したら良いか頭を抱えていたところ、非常によい資料をネット上で見つけました。香港の日本人社会向けに発行している「香港ポスト」というフリーペーパーで、数ヶ月前からの解説記事を見つけましたので、時系列的にならべ、(どの記事も専門的でけっこう長文なので)私なりに要約してみます。各記事の内容はかなり専門的ですが、本騒動を追いかけておられるメディア関係者の方にはぜひ各記事の精読をお勧めします。

1)セントラル占拠の主導権を急進派が穏健派から奪う
(香港ポストの記事はこちらから)

2017年の行政長官普通選挙に関して、香港で社会的地位のある学者達が学術的な議論を重ね、平和的な抗議活動として「佔領中環」(オキュパイセントラル)が慎重に計画されました。この運動は、不法行為でありながら、極めてオープンかつ計画的に準備されている点が特徴です。主催者はまず各方面から普通選挙の実施案を募り、その中から国際的な基準に照らして民主的な普通選挙案と認められる3案を、運動の賛同者による投票で選出します。続いて、ここで選ばれた3案を市民の投票にかけ、最多の票を得た案を「佔領中環」運動としての普通選挙案として確定します。この案が政府に無視された場合、座り込みを発動するとされています。

穏健民主派からは「公民提名(市民による候補者の指名)」を含んでいないものもありましたが、3案として残ったものはいづれも、公民指名を含んだ急進的な案でした。結果として、オキュパイセントラルが目指す目標は、公民指名を含む直接選挙という事になってしまいました。

2)実現不能なスローガンを叫ぶ
(香港ポストの記事はこちらから)

香港には穏健派と急進派(本土派)の2つの民主派グループがあります。穏健派は北京政府と妥協を探ろうとしています。対して急進派は共産党打倒を叫び、穏健派を「偽民主派」と呼んでいます。

「香港を優先せよ」という急進派の主張は単純明快で、表面的にはより「民主派」らしく見えます。しかし、驚くべきことに、急進派の行動は逆に中国共産党を助けているという分析もあります。「香港人の六四集会」の参加者数は主催者側発表7000人、警察発表で3060人でした。現場は大盛り上がりでしたが、彼らが党員数9000万人の中国共産党を倒すことなど到底できません。実現不可能なスローガンを叫ぶだけの急進派は北京にとって実害が少ない一方、本来政府との対抗上団結を必要とする民主派は、分裂の危機に大いに悩まされています。このため一部からは、急進派は「北京の意を受けて中央政府を助けている」とさえ疑われているのです。

どのような中央政府との関係がより香港の利益になるのかという点において、香港の世論の多数派は極めて慎重です。スローガンを叫ぶことは憂さ晴らしにはなりますが、実利をもたらすことができなければ、市民の支持を集めることは難しいと言えそうです。

3)「袋住先」とりあえずもらっておけ
(香港ポストの記事はこちらから)

香港基本法第45条は、行政長官選挙の方法について「最終的には普通選挙で選出するという目標に到る」と規定しています。このため、これまでの議論では、2017年の普通選挙の実現は目標の達成を意味し、その時点で採用される選挙方法は香港の政治体制の最終形となると考えられてきました。2010年1月に民主党が中心になって成立した民主派の組織が「終極普選連盟」と名付けられていたことも、そのような発想の表れと言えます。

これに対し、親政府派は最近、2017年に行政長官普通選挙が実現した場合も、それが最終的な香港の政治体制として固定化されるとは限らないとの立場を示しています。7月20日、中央政府の対香港政策担当の最高指導者である張徳江・中央港澳工作協調小組長は深セン市で香港の親政府派の代表者たちを前に、「世界的に民主の発展にはいずれも過程があり、一歩一歩進めねばならない」と発言しました。在席していた范徐麗泰・全国人民代表大会常務委員は、張徳江氏が2017年の行政長官普通選挙を最終形とは考えず、2017年以降も一歩一歩改革を進めるとの意思を示したと解釈しました。「2017年は最終形ではない」ことを前提に、親政府派は民主派に対し、まずは不完全であっても妥協して政府が提案する普通選挙を「袋住先」し、その後にさらに理想的な民主主義に向けた改善を求めるよう、呼びかけを始めたのです。

4)衰退の時代到来?
(香港ポストの記事はこちらから)

「オキュパイ・セントラル」運動を主導している戴耀廷氏が、8月31日を指して香港の一国二制度と民主化運動の「最黒暗的一天」(最も暗い一日)と表現しました。同日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は、2017年の行政長官選挙についての決定を行いました。

戴耀廷氏は、すべての対話の道は閉ざされたとして、香港は正式に「抵抗の時代」に入ったと宣言しました。9月には様々な民間団体と協力して抗議活動の波状攻撃をかけ、最終的には「オキュパイ・セントラル」を断行するとしています。民主派が30年賭けてきた希望が潰えた今、確かに香港政治に新しい局面が到来する可能性は高いでしょう。

それでは、戴耀廷氏の言う「抵抗の時代」はどのような時代になるでしょうか。一つの可能性は「持久戦の時代」です。民主派に言わせれば、出馬もできない普通選挙よりも、少なくとも出馬はできる現行の制限選挙のほうがましという論理になります。5年後、10年後と、北京は民主派を排除する案を出し続け、民主派は否決を続けるという持久戦が当面続くと想定されますが、民主派は普通選挙の早期実現を望む世論に抗し続けられるのか、多様な民主派内部の団結を維持できるのか、そもそも選挙に勝ち続け、否決に必要な立法会の3分の1の議席を維持し続けられるのか、試練は相当厳しく、持久戦では中央政府に分があります。持久戦で北京が払う代価は少なく、ダメージも小さいからです。

最悪の場合、香港は「衰退の時代」に入るかもしれません。政争が香港の国際競争力を低下させるかもしれませんし、過激行動が「我慢の限界」を越えた時には、中央政府は自由の抑圧や、果ては実力行使、一国二制度の停止まで視野に入れます。こうなると、衰退を超えて香港の死を意味します。

(以上で記事の要約は終了)

上記で使用した4つの記事と、オキュパイセントラルへ至るまでの、香港ポストの関連記事を参考文献として改めて以下に列挙します。香港デモの根本原因に興味のある方はご参照ください。

1)セントラル占拠の主導権
2)「偽民主派」(ニセ民主派)
3)普通占拠は棚上げか
4)1国2制度白書の衝撃
5)民主派の一部を妥協させ可決へ
6)普通占拠の枠組み
7)香港政治の新しい局面