クリミアが選んだ道

3月 27th, 2014 Categories: 1.政治・経済

中国の深圳は、今週から暖かくなり、ダウンジャケットをやっと脱ぐことができるようになりました。若干冷房の入った高速バスに揺られながらこの記事を書いています。先週月曜にクリミアで国民投票があり、ウクライナからの独立とロシアへの編入が決まりました。その前にウクライナに正義なしという記事を書いた時には、ロシアはクリミアを独立させるだけで編入はしないだろうとの見通しを持っていましたが、見事に予測を外しました。予測を外した人は私だけではなかったと思います。私自身について言えば、予測は外した理由は、クリミアの置かれた政治的状況にばかり注目し、経済状況のフォローを怠った為です。以下、後追い的に私なりの分析をまとめてみましたのでご参照ください。

1)クリミア半島のインフラ供給問題。
クリミア半島のほとんどが砂漠で、電気・ガス・水といった生活に必須のインフラはすべて、ウクライナ側から供給されています。今回のように強引な方法でウクライナから独立した場合、ウクライナ側は当然のように元栓を占めるぞと脅してくるでしょう。下手をすれば実行されかねません。ウクライナから非友好的に独立する場合には、電気・ガス・水を供給してくれる別のスポンサーが必要になります。つまりウクライナ自治共和国は単独で独立状態を維持する事がそもそも困難なのでした。

2)国民投票では過半数のウクライナ人も「賛成」にまわった。
国民投票の投票率は82.71%で賛成は95.5%でした。クリミアの人種別人口比率は、ロシア人が58%、ウクライナ人が24%、クリミア・タミール人が12%、その他が6%。タタール人全員が棄権したとすると、投票率と賛成票から逆算して、過半数のウクライナ人がウクライナからの独立とロシアへの編入に賛成した事になります。独立とロシア編入は、ロシア人の賛成だけではなかったという事です。

3)ウクライナの経済は破綻している。
ウクライナ(キエフ)政府では、歴代大統領も首相も最高評議会議員も、みんなが国家の金で私腹を肥やしています。もともとウクライナで大規模デモが発生したのも、政治的権力者が国家の金を私物化する一方で、市民の生活が豊かにならない事に対する抗議の意味がおおきかったようです。その一方で、隣国のロシアではクリミアの何倍もの収入を得ています。

4)クリミアのロシア併合は経済問題。
下記はクリミアとロシアの収入や年金などの比較です。ロシアがクリミア新政権を通して流布させた情報かと推測しますが、ウクライナ人を含む、多くのクリミア住民を説得する材料としては極めて有効であったと思われます。

・平均月収:ロシア=6万3,700円、クリミア=2万7,700円。
・年金:ロシア=2万4,700円/月、クリミア=1万4,100円/月。
・医療:ロシア=病院建設、医療機器などの医療財政は国家が100%負担、
ウクライナ=政府が60%、国民が40%負担。
「暮らしてゆけない」 人々は豊かなロシアを選んだ より)

要約すると、クリミアは単独国家として独立を維持する事はそもそも困難な地理的・経済的状況でした。ジャスミン革命が叫ばれた中東で、経済問題から政変へ発展した国々とクリミアの独立とは、本質的にあまり変わらなかった。しかしクリミア住民は、単に政府のクビをすげ替えるのではなく、隣国ロシアへ併合の道を選ぶ事で、自分たちの将来の経済的リスクをより小さくする道を選んだという事だと考えられます。

逆に、ユーロ圏へ接近を選択したキエフ新政権のウクライナが、今後、エジプトやシリアの二の舞いにならないように願ってやみません。

参考文献:
1)クリミアの国民投票結果
2)クリミア自治共和国
3)クリミア半島の歴史と現状
4)ウクライナからクリミアへの電力供給を制限
5)「日本のウクライナ支援1500億円」は東電に金を注ぐようなもの
6)ウクライナ人が語るウクライナ情勢 – 東西問題より深い政治腐敗

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