ウクライナに正義無し

3月 15th, 2014 Categories: 1.政治・経済

米国は欧州を巻き込んでクリミアへ介入しているロシアへ経済制裁を発動しようとしています。一般には、米によるロシアとクリミアへの抗議が「正義」であり、クリミアへ軍事介入しているロシアが悪者扱いされているように見受けられますが、それは正しいのでしょうか。私はどうも、そうではないように感じられます。以下に、いくつかの点について考えてみました。

1)新政府は合法か?
ウクライナ最高議会は、政府転覆後に大統領の解任とオレクサンドル・トゥルチノフ氏の大統領代行を決議し、そしてアーセニー・ヤツェニュク首相を選んだ。しかしながら憲法上は、最高議会による大統領解任は憲法違反ではないか。2010年の大統領選挙(国民投票)で民主的に選ばれたヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領は辞任しておらず、憲法上は今も大統領であると言える。そのヤヌコーヴィチ大統領はヤツェニュク首相を選んでいないので、新政権も違法といえる。

同時に、クリミア首相であるアナトリイ・モヒリオフ氏の罷免と、セルゲイ・アクショノフ氏の新首相の任命のやり方は必ずしも民主的とはいえない。更にウクライナ大統領の同意を得ていない為に憲法違反である。(ロシアに逃れたヤヌコーヴィチ大統領が承認すれば、形式的には合法となるかもしれない。)

このようにウクライナには、いまのところ既存の憲法に合致した政権は一つも存在しない。

2)クリミアの国民投票は違法か?
ウクライナ新政権は、国民投票はウクライナ全体で行われるべきであり、クリミア独自の国民投票は憲法違反であり無効であると「正論」を述べてる。しかしながら、そもそもウクライナ新政権は暴力的革命によって成立した政権であり、新政権自体が憲法違反であるので、ウクライナ新政権の主張を「正当」たらしめる根拠が無い。それにもかかわらず、仮に欧米がウクライナ新政権を合法と認めるなら、それは既存のウクライナ憲法を無視する事であり、その基準の延長線上で考えれば、クリミア新政権によるクリミア独自の国民投票も憲法上は違法であるが認めるべきである。

3)デモ隊を銃撃したのは誰か?
キエフの独立広場でデモ隊に発砲して多数の死者を出したのは、内務部隊の中の特殊部隊であるベルクートと言われている。しかしながらロシアにいるヤヌコーヴィチ大統領は、発砲はナショナリストの武装集団であると非難している。騒乱の最中の事であり、どちらの側にもデモ隊を銃撃する合理性がある以上、客観的な証拠が示されるまでは、新政権の言葉もヤヌコーヴィチ大統領の言葉も信用に足るとはいえない。(現状では、それが可能とも思えない)

4)ウクライナ政府を転覆させたのは誰か?
ヤヌコーヴィチ政府を転覆させたのは、直接的にはネオナチを含む民族主義者の集団だと言われている。しかしながら実行者へ資金や武器を提供するスポンサーが必要である。

ロシアがウクライナを自国の影響下に留めて置くために、表から裏から、内政干渉を行ってきた事は明白である。現在の状況だけを見ると、ロシアがクリミアを手中に収める為に画策したように見えないこともないが、ヤヌコーヴィチ政権はロシア寄りであったので、わざわざその政府を暴力で転覆させ、国際的な非難を受けてまで行うに足る十分なメリットがあったとは思えない。

一方、ネオコンの代表論者であるロバート・ケーガンの妻で、2013年2月まで米国務省報道官を務めていたビクトリア・ヌーランド(ロシア系)が、昨年末にキエフの中心街の広場で、反政府運動の参加者にクッキーを配っているところを写真に撮られ、米国がウクライナの政権転覆を支援する内政干渉をしているとロシア首相に批判されている。また、米政府はウクライナが外貨準備として持っていた40トンの金塊を、真政権樹立後に、米連銀に預けると言って持ち去ったという噂がある。前回のオレンジ革命の時にも、米国による介入があったと言われている。

要するに、誰が支援したかという証拠は無く、真相は藪の中である。

5)ロシア軍のクリミア介入は悪か?
クリミアはロシア系の住民が6割を占める。キエフの政府転覆後も平和な状況が維持されたクリミアにとって、暴力的な民族主義者が武器を持って流入する事はなんとしても避けたいと考える事を、誰が非難できるだろう。ロシアのやり方はかなり強引であるが、結果として市民の平和が保たれ、治安が維持されている事は事実である。重要なのは制度としての民主主義と、市民の生命財産が守られる事ではないだろうか。

結論。

ウクライナのどこにも正義は見当たらないが、ウクライナ最高議会が憲法を無視してトゥルチノフ氏の大統領代行を選出した事を欧米が受け入れるのであれば、クリミア議会が憲法を無視してアクショノフ首相を新たに任命し、クリミアだけで国民投票する事を欧米が受け入れないのは、絵に描いたようなダブルスタンダードではないでしょうか。キエフで行われている事を民主主義と言うのであれば、クリミアで行われている事も同じく民主主義と認めるべきだと考えます。

参考文献:
1)ロシアが本格的軍事介入へ、今後のカギを握るウクライナの親ロシア勢力
2)クリミア半島奪取でロシアの得た勘定と失った感情
3)Leaked call raises questions about who was behind sniper attacks in Ukraine
4)Is the U.S. Backing Neo-Nazis in Ukraine?
5)USAID Support for Destabilisation of Russia
6)Ukraine’s gold reserves sent to NY Federal Reserve

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