グローバル経済の行方

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世界の経済はいまのところグローバル化を続けていますが、このトレンドはいつまで続くでしょうか。12月7日にインドネシアのバリ島でWTOの閣僚会議が開かれ、そこで「画期的」な進展が見られました。この会議では2つの点で画期的でした。1つ目は、WTO発足以来はじめて、すべての参加国による合意に達したという事です。これまでのWTOは、先進国主導で行われ、途上国との溝を埋める事ができませんでした。2つ目は、WTOの主導役が米英を中心とする先進国からBRICSへ変ったという事です。今年9月にWTOの事務局長に就任したブラジルのロベルト・カルバーリョ・デ・アゼベド氏の尽力によるところが大きいですが、BRICS諸国がアゼベド氏の調整交渉を支えたという見方があります。

WTOで画期的合意、「税関手続きの簡素化」など3分野

次期WTO事務局長にブラジルのアゼベド氏、メキシコの候補を破る

WTOの主役が米英からBRICSへ移るというのはどういう意味なのでしょうか。良くも悪くも、経済のグローバル化を先進国の先頭に立って牽引してきたのは米国(1極)でした。これがBRICS(多極)へ移行すると、現在のグローバル化の波は静かに世界的なブロック経済圏へと収束してゆく可能性があると考えます。

さて、そこで我々の日本がある東アジアへ目を向けてみましょう。日本は第二次大戦の敗戦を経て21世紀の今日までに、おおきく経済成長しました。(*1)

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この20年間、経済成長が停滞していると言われますが、家の中は家電製品で満ち溢れ、贅沢な生活を維持しています。贅沢度を図る尺度として1人あたりのエネルギー消費(*2)で比較すると、北米が飛び抜けて高く、日本を含む先進諸国がそれにつ続き、インドのような途上国との差が大きい事は明白です。

 

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ところで世界には、1日あたり1ドル未満で暮らす貧困層が途上国(中国・インド・南米・アフリカ・中近東)(*3)を中心にかなり存在します。このまま経済のグローバル化が進展したとして、すべての途上国が、日本人のように贅沢な生活をするようになる事は可能なのでしょうか。

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アゴラで辻元氏は、不都合な真実から目を逸らさない勇気を持とう(*4)と述べ、地球上で生み出される食料生産とエネルギー生産は有限であるから、途上国が経済発展の道を進めば、必然的に日本や欧米先進国は今より貧しくなると主張しています。その一方で池田信夫氏は、資源の物理的制約は本質的な問題ではない(*5)と述べ、非在来型ウラン(*6)がエネルギー問題を解決し、農業技術の進歩は人口増を上回っており、ほとんどは所得配分という経済問題に過ぎないと述べています。

辻氏と池田氏の意見はそれぞれ耳を傾けるべき内容ですが、実は両者の意見には重要なポイントが欠けているように思われます。途上国が経済発展する為には、輸出により経済発展する国力が必要ですが、国力は国によりまちまちです。先進国の市場は既に先進国が抑えていますので、途上国が大きく経済成長するには、他の途上国を輸出市場として搾取する必要がありますが、たとえば中国・インド・インドネシア・ブラジルのように人口が億を超える大国が、先進国と競争を続けながら、一人あたりのGDPで先進国の仲間入りをするに十分な規模の経済フロンティアが、この地球上に残されているかは大きな疑問です。

また、非在来型ウランの埋蔵量が世界中の人口を長期間まかなうだけあり、農業技術が進歩し続けるとしても、原発を十分に建造し、原発燃料や食料を輸入し続ける経済力の無い途上国は、貧しいまま発展から取り残され続けます。つまり、途上国のすべての貧しい人々が、いつかは米国人や日本人のような豊かな暮らしができるような経済発展というのは、実現は極めて困難であろうと考えられます。

経済発展できる国はどんどん発展するが、国力の無い途上国は貧しいまま取り残された状態で世界が均衡する遠くない未来のある時点で、グローバリゼーションは非効率となって停止します。世界のそれぞれの地域で経済均衡が進むと、その地域の中でほとんどのモノやサービスの需給が完結するようになります。すると地球の反対側から船や飛行機で運んでくるような物流経費を売価へ転嫁する事が難しくなるでしょう。そして世界の経済は地域ブロックを中心に、ブロック経済へと移行する可能性が高いと推測します。欧州は既にEUによるブロック経済が確立しています。北米3国は北米自由貿易協定でブロック経済化しています。ではアジアはどうなのでしょうか。

アジア諸国にとって、アジア最大の市場といえば中国でしょう。人口は13億を超え、さらに2億を超える中産階級があり、安ピカ物から高級品まで幅の広い巨大な市場を形成しています。そこで2005年に、中国とASEAN10カ国によりACFTA(*7)が開始されました。ACFTAは域内人口19億、域内GDP6兆ドルという世界最大のFTAです。(*8)その結果、ASEAN諸国は対中貿易を中心にして発展を続けています。(*9)

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更にACFTAでは、加盟国間での加工貿易や第三国(工場の本社がACFTA非加盟国の日本・韓国・台湾など)を経由した輸出入にも対応しており、製造についてはジャパン・パッシングに対応しています。(*10)

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経団連は TPP加盟を要請しているようですが、輸出メーカーの主力工場の多くは既に中国とASEAN諸国に移行しており、日本がTPPに加盟するメリットより、ACFTAのNormal Track品目が2015年に関税ゼロになる事の方がよほど重要性が高いのではないかと思われます。

2005年に中国主導ではじまったACFTAですが、輸出メーカーを中心に発展を続けると、いづれACFTAに日本・韓国・ロシア・オーストラリア等が加入を余儀なくされ、気がつけば中国主導のブロック経済圏が完了している、という事になりかねない状況がある事をみなさまにお知らせ致しつつ、結びの言葉に代えさせて頂きます。(合掌)

 

参考資料:

1)日本の実質GDPの推移
2)一人当たりのエネルギー消費量の推移(主要国)
3)Percentage population living on less than 1 dollar day 2007-2008
4)不都合な真実から目を逸らさない勇気を持とう
5)資源の物理的制約は本質的な問題ではない
6)非在来型ウランの埋蔵量について
7)開始後1年のASIAN – 中国 FTA(みずほ銀行)
8)急速に構築が進む東アジアの自由貿易・経済圏
9)ASEAN と中国の FTA(ACFTA)と経済関係の深化(三菱東京UFJ銀行)
10)ASEAN‐中国自由貿易協定(ACFTA)の 物品貿易協定 (JETRO)