香港の繁栄を支える人材循環と起業精神

1月 24th, 2009 Categories: 1.政治・経済

香港の経済が繁栄している大きな理由の一つは雇用の流動性が高い事です。みんなが頻繁に転職するメリットは、単に労働者が自分の給料やスキルをアップするだけではありません。良い人材が社会のなかをぐるぐる廻り、大企業から中小企業まで、広い範囲で会社の発展に影響を及ぼしているという事があります。

積極的に転職するのは、自分の能力に自信を持つ人が多いのですが、その中には、実際に有能な人も多く含まれています。日本では、大企業が良い人材を集めてどんどん発展して行きますが、その後ろで中小企業は置き去りにされつつあります。香港でも、良い人材は、最初は大企業に集まりますが、転職によりだんだんシャッフルされ、中小企業を含めて社会の広い範囲に拡散してゆきます。

香港は狭い社会なので、良い人材を吸収する会社は限られています。大企業では歯車になり、中小企業ではリーダーとして実力を発揮し、最終的に自分で独立して会社経営を始める人も(昔ほどではないですが)けっこう多いのです。能力と野心をもった人材が、30歳代から40歳代になる頃、溜め込んだ貯金(HKDで数十万ドルくらい)を投資して、100平米くらいの事務所を借りて、自分の会社を始めます。

香港ではこのように、独立・開業が非常に容易なので、本人に野心と実行力さえあれば、障壁はあまりありません。会社を設立して事務所を借りれば、最低でも会計担当を雇わなければなりません。前の会社から自分のスタッフを引き連れてくれば、前の会社は穴を埋める為に求人募集します。毎日のように新しい会社がどこかで事務所を開くので、香港では常に、正社員の求人募集が溢れています。

その一方で、香港でも日本でも、幕を閉じる会社も毎日のようにあります。香港の場合、経営者はできるだけ損を出す前に事業を閉じようとします。起業の目的はお金を儲ける事ですから、資本金を食いつぶす前に自主廃業するし、他にやりたい人がいれば会社を転売します。ゆえに、倒産して高額の借金を残すケースはあまり多くありません。会社をギブアップしても個人の資産は余力があって、再びサラリーマンにもどって次の機会を得る為に雌伏します。

日本の経営者はどうでしょうか。金を儲けるという事の他に、社員の雇用を守るという義務感のようなものがある為か、事業がうまく行かなくても無理をして借金経営を行い、倒産時には逆に多くの社員に金銭的な迷惑をかているケースが極めて多いのではないでしょうか。経営者の「社員の雇用を守る」という義務感の出所は、硬直した労働市場です。

まとめると、香港では転職により労働者はスキルと給料をアップさせ、会社は良い人材を得て発展する機会が増えます。更に能力と野心を備えた人材は独立・起業する事で新たな雇用を創出しています。たとえ最初の起業がうまく行かなくても、2回でも3回でも起業のやり直しが効くので、何度か目には要領をつかんで軌道にのせる経営者も少なくありません。ひとつの職、ひとつの会社、ひとつの起業に拘らず、自助自立の精神に溢れている精神が、香港の繁栄を支えているのだと思います。

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2 Responses to “香港の繁栄を支える人材循環と起業精神”

  1. kensho
    3月 5th, 2009 at 00:15
    1

    私も起業に1度チャレンジして失敗し、借金する前にフリーのエンジニアに戻りました。もちろん再起の準備はとっくに始めています。ITエンジニアに限れば、日本でもそういう生き方は可能です。しかしまだまだ少数派だとは思います。起業を前提にしてる人は50人に1人くらいかな?分かりませんが…

    香港ではもっと起業前提の人が多いのでしょうか?私、頑張りたいタイプなのでそういう社会はうらやましいですね~。

    まあでも自助自立の社会での最下層の人たちの実態は気になります。効率と平等のトレードオフの中で、私は平等優先の日本しか知らないから・・・

  2. bobby
    3月 5th, 2009 at 09:36
    2

    Kenshoさん、
    私が香港に来た20数年前は、大学が2校しかなく、あとは海外留学するしか方法がなかったので、圧倒的に多くの学生が高卒で就職していました。だから金持ちになるには、独立して会社を興すしか方法がなかった。それで多くの人が貿易業などで独立して身を立てようとしていました。いまは大学が増えたので、大卒のサラリーマンがすごく増えましたが、それでも貿易、金融、IT関係などで起業する人はかなり多いと思います。私もそんな一人です。

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