企業が正社員を保護したかった理由

1月 20th, 2009 Categories: 1.政治・経済

企業にとって熟練労働者は、生産手段であると同時に財務諸表からは見えないが重要な資産でもあります。企業は雇用契約によって労働者を確保し、教育という投資を行って熟練労働者に仕立て上げます。そうして熟練労働者の労働力(スキルや生産性)を所有します。

熟練労働者は企業にとって、育て上げたコスト(時間と費用と労力)であり、将来得られる利益(高い生産性から得られる成果物)です。ですから、ひとたび労働者が企業の資産になると、企業としてはその資産を保全しなくてはなりません。

ゆえに、育て上げた熟練労働者が自己都合で辞められるのは(内心)困ります。労働者に正社員という称号を与えて企業への帰属意識を高めるのは資産保全の手段です。しかし企業から見ると、雇用契約は労働者に一方的に有利(労働者はいつでも一方的に辞める事ができ、それが理由で罰を受ける事もめったに無い)に出来ており、企業が雇用契約によって労働力という資産を十分に保全する事ができません。

池田信夫blogによれば、「経営者(プリンシパル)と労働者(エージェント)に情報の非対称性があるとき、労働者が怠けるのを防ぐために、中核的な労働者には限界生産性より高いレントを与え、怠けたら解雇されて、外部労働市場では限界生産性に見合う低い賃金しかもらえないようにすると、労働者は自発的に会社に忠誠をつくす」そうです。

労働者が終身雇用という「神話」を自ら信じる事で、自由な労働市場が作られない時、「経営者(プリンシパル)と労働者(エージェント)に情報の非対称性」が生まれて、労働力の客観的な価値を知る手段が失われ、企業は労働者の賃金をローカルルールで制御する事ができるようになりました。企業がはじめからこれを意図して「終身雇用」という慣行を作り上げたかどうかは判りませんが、労働力という資産を保全する為に、十分に活用した事は確かでしょう。少なくとも1997年にバブルが弾けるまでの長期に渡って。

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