なぜ誰も生活保護に触れないか
テレビやブログで派遣村を擁護する人たちは、「派遣切りされた人は可哀想」、「そこに困っている人がいるのに何故助けようとう思わないか」、「月収8万では毎晩ネットカフェに泊まる事もできない」、「このような不況を招いた責任は国にあるのだから、どんなに税金をつかっても救済すべきだ」という意見が多い。
このような人たちは、国が憲法25条2項に従って、生活保護という制度を設けている事を知らないのか。いや、知っているが口にしたくないだけなのだろう。ネットカフェ難民になる前に生活保護を受給してアパートに定住し、ハローワークで職業訓練を受けて就職すれば良い、と論を進めれば、そのとたんに議論が終わってしまうからだ。
派遣村に来た人達は、「みなさんのおかげで生活保護を申請し、一息つけました」というが、みなさんのおかげがなくても生活保護は申請できたはずだ。それともこれらの人たちは生活保護がある事を中学校までに習わなかったのだろうか。
生活保護には暗いイメージがまとわり付くかもしれない。受給すれば自分で負け犬と認める事になるかもしれない。だからプロ市民やボランティアのお世話になって、テレビの前で国中に恥を晒すのだ。そちらの方がよほどみっともない事がわからないのか。生活保護を受給しても自分が自分に対してみっともないだけだ。しかし、自分がいまは「負け犬」である事を認めなければ、そこから抜け出す事はできない。
派遣切りで日比谷公園に来たり、日雇いネットカフェ難民になった人達の問題は、基本的には「心の弱さ」にある。彼らを助けたいというボランティアがいるのなら、衣食住の世話は依存心を強くさせるので良くない。それよりも彼らに必要なのは、
生活保護の受給-アパートに定住-ハローワークでスキル習得-正社員探し-入社-定着
このような手順で社会的な自立ができるようにサポートする事ではないか。具体的には、その日暮らしの生き方を変えるように説得し、生活保護の申請を行うように説得し、申請を助け、アパート探しを手伝い、就職訓練や職探しや入社後の規則正しい生活に耐えられるように、定期的に訪問して精神的な励ましを行うべきだ。
制度としては存在していても現実には生活保護を申請してもなかなか認めず餓死者まで出してしまった北部九州の某市の様な所もありましたし、ケースは違うにしても本当に生活保護をくれるのか?という思いもあるかもしれませんね。ましてつい最近まで働いていた人達な上に、選ばなければ一応職はまだある状況ですし。
だからといってこれまでと同じ職種の需要が回復するとは当分ないだろうし、職業訓練と生活保護の支給をセットにして政策として積極的に職種転換を促すルートがあってもいいと思うのですが。訓練を条件に支給を確約して名前も変えちゃえば実質同じでも生活保護を受給する心理的ハードルはぐんと下がるだろうし。防衛大の学生手当みたいな感じで。
>生活保護の受給-アパートに定住-ハローワークでスキル習得
この辺は流れというかセットになっているのが望ましいですね。生活保護・職業訓練どちらの窓口が先にしても住居の無い人には住居の斡旋まで同時にやってくれるといいのですが。
Faulenzerさん
>現実には生活保護を申請してもなかなか認めず
仰るように生活保護を受理する行政者側に、失業者に対する偏見があるかもしれません。現在のような大規模派遣切りのニュースは、そのような偏見を改める良い機会でもあります。
>この辺は流れというかセットになっているのが望ましい
現在有る支援可能なしくみを考えれば、そのような流れにならざるを得ないと思います。
生活保護では以下のようなことが起きてます。
生活保護受給者ら向けの「無料低額宿泊所」を運営する埼玉県内の民間事業者が、入居者の同意なしに預金通帳やキャッシュカードを預かり利用料を天引きしていたことが27日、分かった。県は「同意なく預かるべきではない」として、2月末までに改善報告書を提出するよう指導した。
Yajikitaさん
生活保護という制度が、今回の派遣問題をきっかけにして、社会のセーフティーネットとして使いやすい制度に改善されたら良いと思います。
こんにちは。木村剛さんのブログから飛んできました。
生活保護という制度は当然みんな知っているはずです。ただ問題なのはbobbyさんがおっしゃる程簡単にはそれを受けられない事、本当に必要な人に機能していない事だと思います。
生活保護の申請は一人で役所に行っても面談で門前払いされるケースが多いのが現状で、法律家などによる申請の付き添いやその後の支援が必要になってきます。その点については派遣村のボランティアによるサポートは効果的だったのではないでしょうか。「みなさんのおかげで」と言ってた人の中には一人で申請したが受理されずと言う人も少なからずいたと思います。
派遣村については様々な情報や意見が飛び交い「祭り」の様相を呈した感がありましたが、「社会的な自立ができるようにサポートする事」を現に支援していたのが行政ではなく派遣村のボランティアだった事は考考慮すべき点かと思います。
Mshttzkさん
香港政庁は、路上生活者対策の予算を用意し、救済・支援するサービスをNPOへアウトソースする事で、社会への復帰を促しています。彼らは確認できるすべての路上生活者に固有の識別番号を割り振り、アウトリーチ、カウンセリング、定住、就業開始までをフォローアップしています。詳細は以下の文献をお読み頂くとして、日本政府は香港方式をぜひ参考にしてほしいと思います。
【香港における野宿生活者の実態と自立支援事業の
進展プロセス】
http://160.193.81.127/homeless/research/pdf/shelterless_HK.pdf
烏山総合支所で、派遣村は例外だからと貸付もなにもしてくれないから
とうとうアパート追い出されたんですが。。
アパートの家賃が基準以上なので引越し必要とかで助けてくれない。
若年層が生活保護受けるには、部屋追い出されてたこ部屋のような
野宿者支援施設に入らなきゃ無理っぽいです。
そして今川崎の野宿者支援施設に入れられたんだけどたこ部屋。
荷物の大半を失い。プライバシーの無い生活。
小部屋を2つに分けた狭い部屋で、めしなし75000円三食付きだと
99000円取られるらしい。聞いた話と違うんですが。。
なんか埼玉の施設と同じ匂いするんですが。。。
保護きまるとアパート借りられると聞いたのに、就職決まらないと
出られないといわれた。 この長期不況で仕事決まるまで。。。
気が狂いそうです。
東京と違い川崎では広さと施設使用料の基準と川崎市の担当。
なんとかバイトで脱出できないがあがいているけどバイト決まらない。
登録制に登録したんだけど仕事無いよ・・
失業中さん、コメント有難うございます。文面からすると、生活保護は受けられなかったのでしょうか。国は生活保護を給付する条件を定めているのに、役人は申請者をできるだけ「追い返す」方向で仕事しているようです。そもそも窓口の役人にこのような「裁量権」がある事が問題です。上級の役人が決めた国の予算が綻ばないように、下級の役人が窓口で予算を予定通り消化できるように調整しているので、本来は生活保護受給の資格があるのに受給できない失業者さんのような方が多いと聞いています。
このようなねじれたルールを正すには、構造改革を行って、役人から「裁量権」を取り上げる事が必要かと想います。それで生活保護の給付者が予算を大幅に上回れば、国会で問題が明らかになって、政治家と上級役人が問題を解決する方向で考えるようになるでしょう。
正直少々腹が立ちました。
貴兄の仰ることは、労働市場の問題については現実に照らし合わせ正しいと思います。ただ社会保障の問題についてはまったく現実を知らない空論であると思います。
社会保障のなかの生活保護については、地方自治体が事前に予算が組まれており、その中でやりくりしているのです。ですから爆発的な、急激な増加に対応出来ないのです。以前でしたら国の基幹事務でしたので、国が予算を出し、地方はそれを執行するだけでしたのでまだ柔軟な運用が可能でしたが、地方分権と行政改革の結果、地方に権限と予算が移りました。まさに構造改革を行うお上から権限を取った結果なのです。
その結果財政的に厳しい地方は生活保護を出すことを厳しくしているのです。窓口の一本化についても同様の問題が起きており、派遣村の村長の湯浅誠さんの話では「一本化して生活保護の受給者が増えることを懸念する地方自治体の首長の反発がとてつもなくすごい」そうです。現に最近1日だけ一本化した窓口を設けたそうですが、その際その窓口の相談内容の中に生活保護を入れるなら参加しないと主張してきた自治体の首長が多数おり、結果的に生活保護の相談は窓口の相談内容から排除されました。何のための一本化?ですよね。
日本社会は戦後地方分権がそれなりに進んだ側面があるのです。ですが肝心の責任(税金の負担)を地方と中央で取り合っていたということです。同様の問題は介護保険や障害者の介助にも当て嵌まります。
国は法律とルールと補助金を提示するだけで、実際は地方自治体が運用と出費を賄っているのです。なので地方格差が凄いことになっています。
社会保障は一律の方がいいと思うのですがね。
私は墨田区役所に当事者が生活保護の申請を行う際の支援を足掛け6年間行いました。現在問題になっているSSS(スリーエス)と呼ばれる簡易宿泊施設にも何度も通い、時には怖いお兄さんたちがたくさんいる事務所に伺い「お話し合い」をさせていただいたこともあります。
そこで感じたことは「話にならん!」というものでした。
私が活動していたのは10年前から4年前まで、つまり「格差」や「貧困」が大きく問題化する前の段階でしたが、生活保護の相談(申請じゃありませんからね。まずは申請するためにも相談するのです)は、65歳以上か、65歳以下でも明確な病気や怪我がないとしてくれないのです!ですので集団で申請しに行くのですが、それでも条件は変わらないのです!これって明白な憲法違反ですよね?私現場で何度も何度も言いました。でも「東京都からの内部通達でそうなっているから」と言うんですよ。行政は必ず受けなければならない訳ではないというのがポイントだったのですが、だったら受けさせるために圧力を加えようと思い行動すると、まあ警察が来るのですね(笑)。東京都なんて予算たくさん余ってて来ないオリンピックのためにたくさん予算割いているのに・・・。
役人の態度は千差万別ですので一概に何も言えません。しかし、生活保護制度は制度としてとても歪んでいると思いました。
結局申請主義なんですから、役所がすることは申請がスムーズに出来ることのサポートと公平な判断基準を示すことなはずなのです。そのことを何度も何度も繰り返し主張しました。しかし役所からは「予算に限りがある。公的資金だから厳密な審査が必要だ」といったものばかりでした。申請主義の原則と公的機関の責任は狭い職能主義に見事に転化されていました。
現場を経験した人間から言わせてもらえば、こんな連中がのさばる現実に構造改革なんてされたらたまらん!大変なことになる!という思いで一杯です。誰がこの捩れた原則を是正するのですか?その捩れが是正されるまで何人の人々が寒い路上で震えながら夜を過ごさねばならないのでしょうか?何人の人々が固まった身体を仲間の目の前に晒し、その無念さに思いを馳せてもらうことになるのでしょうか?これは人間の尊厳に関わることです。日本は今のところ尊厳死よりも尊厳ある生を大切にするべきでしょう(アジア全般に言えることですが)。
今日食べるものがなく、3日後の炊き出しまで何も食べるものがないという人々が日本に現実にたくさんいます。その中の一人の方に以前不謹慎ながら以下の質問をしました。
「どうやって空腹を紛らわすのですか?」
「(目の前の墨田川を指差して)ぼーと川を眺めているんだよ。そうすれば空腹とかを忘れられる。」
これが現実なのです。
私は貴兄の考えに基本的には賛成なのですが、それを実現するためのコストはとてつもなく大きなものであることを理解していただきたいと思います。
緑のたぬき、じゃなくて赤いたぬきさんですね。コメントありがとうございました。
上記記事のしばらく後で、私も下記のような記事を書きましたが、いまの生活保護の制度には、いろいろな問題があるようです。いろいろな問題があるのだけれど、これまでは多くの人にとって、「生活保護」という制度が良く知られておらず、それゆえに赤いたぬきさんが指摘されたような問題が「放置」されていたのだと思います。役人自身は制度を運営するのが仕事であって、改革は政治家の仕事であると思います。この機会に、こういう問題がどんどん表に出て、民意が高まって、制度自体が改善されるようになってほしいですね。
http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=903
Bobby様レスありがとうございます。
今新しい記事とコメントを確認しました。何かフライングしたみたいですみません。。
Bobby様のように、活用するべき制度として興味関心を持っていらっしゃる方が本当に少なく、それゆえつい甘えてしまったかもしれません。
この問題の根本はやはり構造的な問題だと思います。
国の事務に戻し予算も国の予算から支出するべきです。
そうすれば地域格差はなくなります。
基本的な社会保障と外交は国が行うべきでしょう。
ちなみに共産党や社会民主党の地方議員は生活相談を昔から行ってきました。報道されていませんが。
私はそこにも行けない人々の担当をさせて頂いておりました。
ある年齢以上の方々のなかには生活保護を受けることに対する拒否感に似たようなものがあり、また人々の中には生活保護を受けるくらいなら死んだほうがましと考える人も多くいます。これはなかなか難しい問題です。やせ我慢するより、しっかり給付を受けて、なるべく良いコンディショニングで次の仕事を探した方が良い結果につながると思うのですが、こういう部分に日本人の悪い部分が出ているのかもしれません。非合理的な判断という意味です。一朝一夕に解決出来る問題ではないかもしれませんが、そのへん含めてじょじょに改善されていけばいいなと思います。
それでは失礼します。
赤いたぬきさんの仰るように、生活保護という名目に拒否反応を起こす方もきっときるでしょうね。セーフティーネットとしての効果を考えると、いまの生活保護をベーシックインカム(或いは負の所得税)へ置き換える方が良いと思うのですが…