ユニクロ・ワタミの攻略法(2)

3月 17th, 2013 Categories: ブログ評論, 2.科学技術

前記事の続きです。

ユニクロ型サービス業を志望して大卒で店長候補生として入社する(あるいは既に入社して店長として頑張っている)人が、厳しい労働環境に振り落とされず、本社へ向かってキャリアアップする為には具体的にどのような事をすれば良いのでしょうか。

それを語る前にまず、ユニクロ本社とはどんなところなのか、経営者はどんな人材を本社で経営に参画させたいと望んでいるのかを知る事は重要です。大石哲之氏の下記2つの記事をまずは要約します。

1)ユニクロがブラックな本当の理由。キャリアの分断にみるユニクロの真の闇
本社は、中途採用でマッキンゼーやらATカーニーやらアクセンチュアの人をとりまくり、コンサルの巣窟とも言われているようなところ。その一方で国内の店長候補は、決してマッキンゼーへ入れないような新卒の人材が応募して採用される。つまり本社と現場のキャリアが事実上分断されている。本社を目指すなら、経験を積んで中途採用でチャレンジするべきだ。

2)ユニクロがブラックな本当の理由その2。柳井さんのしかけた”店長無理ゲー”という登用制度
店舗から本社へは蜘蛛の糸でつながっており、本社へ登用されるのは多く見積もっても5%程度。マッキンゼー級(*1)の働きをした者だけが選ばれるという、柳井さんが設定した”店長無理ゲー”であると同時に、新卒に向けた温情である。

一言で要約すると、新卒で入社して店長候補から本社へ幹部候補として登用されるには、マッキンゼー級の働きが必要です。そしてほぼ全ての新入社員は、マッキンゼーに入社するような実力が現時点ではありません。この前提条件のもとで、新人君が店長業務をこなし、更に本社へキャリアップする方法について検討します。

ゲームに攻略法があるように、ユニクロやワタミの店長を必要最小限の労力でこなし、更に業績アップして本社を目ざずにも攻略法があります。今から話す攻略法は万人に出来るという事ではありませんし、個人の能力と努力もそれなりに必要ですが、特別な事でもありません。企業が店長という中間管理職に何を求めるのか、また本社幹部に何を求めるかを合理的に理解して実践すれば良いというだけの事です。

 

ステップ1:管理力をつける
店長という中間管理職は、マニュアルに従って店舗を管理し、日次・月次のレポートを期限内に作成して報告するというのが必要最低限の要求事項と考えられます。

本社から課される日次・月次のレポートは、最初は品質より時間優先(60点の合格ギリギリの内容で良いから業務時間内)で提出時間にきちんと耳を揃えて提出できるように努力しましょう。毎日続くレポートに最初から100点を追求し、その為に毎日残業して体力や精神力を消耗するのは合理的ではありません。レポートの品質は仕事に慣れるに従ってだんだん高めて行けば良いでしょう。

ユニクロ型企業は、本社にいるマッキンゼー級人材の知識や経験を集積したマニュアルがあります。この内容を可能な限り迅速に記憶して理解しましょう。ただ指示内容を理解するだけではなく、指示の背後にある真の目的を理解するように努めましょう。自分なりに考え、店舗の現場を廻り、関連する書籍を読んで勉強し、機会あれば先輩や本社の人に質問し、常に「なぜ?」という疑問を持ち続ける事が重要です。レポート作成を必要最小限にする事で浮いた時間と体力を、マニュアルの理解にできるだけ投入しましょう。

マニュアルを深く理解する事で、本社が店舗に何を要求していかを理解し、日々のレポートを無難にこなす店長になる事が、新人君の最初の数年間の課題です。

 

ステップ2:統治力をつける
企業内の組織には目的があり、何らかの成果を要求されます。ステップ1で管理力の話しをしましたが、管理力というのはある意味で結果を管理する為の消極的な能力です。実際の業務では、あなたが組織の長になった場合、本社が求める管理手段の範囲内で、自分の配下の人を効率的に動かして、課された目的を期限内に効果的に達成する為の積極的な「人的影響力」が必要です。これを企業におけるリーダーの統治力と定義します。

典型的な大企業サラリーマン組織は、根回しや合意形成によるボトムアップ的な意思決定で運営されているようですが、ユニクロ型ブラック企業で本社を目指す人は、リーダーの自己責任で迅速に決断して組織を引っ張る統治力が重要です。その一方で、日本型民主主義労働環境に慣れ親しんだ配下のスタッフ達が「押し付けられてやらされている」という不快感を抱いて生産性が低下しないような配慮も必要です。

本社の課す目的を理解し、必要最低限の労力で組織を管理する「管理力」で店長までたどり着いたら、今度は統治力をつけて店舗の資源の効率を高め、優秀な店長になる事を目指します。

 

ステップ3:創意力をつける
管理力と統治力を高めて優秀な店長になっても、本社の幹部候補のポジションはまだ遠いままです。なぜなら、あなたはまだマニュアルの範囲内(本社幹部の想定内)にいるからです。サラリーマンとして逆説的かもしれませんが、ステップ3を実践するには、店長の権限を自己責任で意図的に逸脱し、マニュアルに書いてない事を実施する必要があります。

ステップ1でマニュアルの背後にある目的を深く理解する事が必要だと説きました。その成果をこのステップ3で使います。マニュアルの背後にある目的を理解しながら、マニュアルで指示されている具体的手段を改善し、あるいは新しい手段を作り出し、その効果を実績で証明する事で、あなたがマッキンゼー級に達した事を本社の幹部達に証明します。

そんな事が出来るのかと思うでしょうが、理屈の上では不可能ではありません。マニュアルが想定している前提条件は全国(あるいは一定のエリア)を平準化して作成されているので、店舗のある地域の固有条件とはかならずしも適合しない場合があります。そういう事項を見つけて、マニュアルの指示内容を地域の特殊性に適合させるかたちでカスタマイズし、成果を改善し、しかも本来の趣旨の範囲から逸脱していない事をレポートで理論的に示す事は十分に可能と考えます。このステップ3のレポート作成は、正念場ですからマッキンゼー級に負けない努力をつぎ込む必要があると思われます。

 

新卒で入社した人が、攻略法のステップ3をクリアするところまで達すれば、1つの企業という範囲内でマッキンゼー級能力を限定的に習得したと言えます。いち企業の経営者から見たその人の能力がマッキンゼー級と同じになったという事は、マニュアルに従う店長業務を行わせるよりも、マニュアルを作る側の本社へ異動させる方が、企業価値を高めるという目的において合理的です。

故に、これが新卒店長から本社へのキャリアパスを示す1つの攻略法です。

と同時に、その人のキャリアパスはその企業の本社に留まらず、あらゆるユニクロ型企業の幹部候補が射程距離に入ったという事でもあります。

 

参考資料:
1)マッキンゼー・アンド・カンパニー

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