長時間保育の功罪

1月 27th, 2013 Categories: ブログ評論

(本)長田安司「『便利な』保育園が奪う本当はもっと大切なもの」が、長時間保育は母親と子供の時間を奪っていると問題提起し、親や保育施設の問題よりも、母親が長時間働かざるをえない労働環境を維持している企業の経営者の問題だという結論で記事を結んでいます。なるほどそう言うか、という感じです。長時間保育で育った「もと」子供として、ハウスメイドに託して共働きしながら子育てした親として、そして子を持つ母親を雇用する企業の経営者として、この記事になにか反論してみたくなったので、つらつらと書いてみます。

日本国は憲法に国民に労働を権利としてだけでなく義務としても課しています。たとえ母親だけの家庭でも、五体満足でそこそこ健康なら、労働の収入により給料を得て生活する事を大前提としています。ならば憲法で保証された労働の権利を行使し、より良い経済状態を得る為に必要とあらば、親が幼児や子供を保育施設へ長時間預ける事は「必要悪」として社会から認知されるべきです。

その為には、保育施設にいる子供が1歳の幼児で、39度の熱があっても、親が会社を早退できない事情があれば、すぐに迎えに行かない事を選択する事は十分にあり得ます。定時に帰れなくて、残業の為に保育時間を延長するかもしれません。そんな母親を責めるべきではないし、保育施設も病気の子供を親に無理やり突き返すべきではありません。子供が病気になるのは「当たり前」の事ですから、保育施設はそれを前提として営業するべきです。保育施設は業者としての責任の範囲で子供をフォローし、それでも何かあった時には預けた親が責任を取る(結果を受け入れる)ようにすれば良いだけです。

労働の権利と義務を親にまっとうさせようとすれば、そういう保育施設がたくさん必要になるのは当然といえます。

では、子育てしている親(特に母親)を受け入れている企業の経営者はどのようにすればよいでしょうか。時短とか在宅勤務とか育児休業をもっと普及させろという事でしょうか。それには2つの事を検討しなければいけないと考えます。

1)企業が雇用者の時短や育児休業に絶えられる経営状況か?

2)在宅勤務や育児休業は日本の文化として受け入れられ根付くのか?

経営状況が耐えられるかという事について言えば、雇用者の給料を払う為に銀行から借金ができる大企業を別にすれば、多くの中小企業では、時短や育児休暇をやるのは厳しいでしょう。一人のフルタイム雇用者は、中小企業では広範囲の業務をフォローしており、時短にすれば中途半端な仕事しかできないので、仕事のコストが増大して採算が悪化します。給料はらって仕事の対価が長期間得られない育児休暇などは「論外」です。それでも法律で強制すれば、多くの女性をクビにせざるを得ないでしょう。典型的な制度設計のミスといえます。

文化的に根付くかについても懐疑的です。アジアの中で、日本・中国・韓国・台湾の4カ国は、中国の古い文化の影響を強く受けており、育児や家事が母親の仕事、顔を合わせて仕事するというのは、その文化的影響の中の一つです。都合の良いとこだけを切り取って残し、都合の悪いところだけ変えようとするのは、それこそご都合主義というものでしょう。

百歩譲って文化が根付くという前提があったとしても、政府の借金が1000兆円というご時世に、親が3歳まで家で育児できるように、中小零細企業を税金で支援しろというのは机上の空論のような現実味の乏しい意見ではないでしょうか。第一、従業員の中に子育てしている母親がいるかどうか、税金で支援するべきかどうかを政府が識別する効果的な方法はありません。そうすると、結局は無差別的なバラマキになり、育児している働く母親まで十分な支援が届きません。それよりは長時間保育施設を税金で支援して経営を容易にした方が、育児する母親の就業をピンポイントで支援する事ができます。

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