グローバリゼーションに勝つ製造業の未来

1月 9th, 2009 Categories: 1.政治・経済

池田信夫blogの賃金を下げれば失業率は下がるという記事にTBした記事の中で、日本の製造業はワーカーの賃金をベトナム並みにすれば、アジアに工場を建てている先進国は競って日本へ移転するだろうと書いた。

フィリピンや中国へ進出する日系メーカーの苦労を知る身としては、治安が良く、法律が整備されており、役人が賄賂を取らず、通信と物流のインフラが整備されている日本で、東南アジア並みの賃金でワーカーが雇えるのなら、中国もインドもタイも競争相手にならないだろう。そうなれば、工場用地が続くかぎり世界の工場が競って日本へ移転してくる事は間違いない。

ところがこのような考えは、すでにFRB議長のバーナンキが所得配分についての論文で言及している事がわかった。池田氏が2年ほど前に、問題は格差ではなく生産性だという記事を書いた中で、バーナンキの論文を紹介している。以下はその一部であるが、このような理論はすでにあったのだ。

経済のグローバル化によって先進国の単純労働者の賃金が途上国に近づくという効果は、理論的にはあるが、実証研究では確かめられていない。もっとも重要なのは、労働者の高い技能を要求する情報技術革新である。

先進国は途上国より物価が高いので、普通に考えれば、生活に必要な賃金を途上国並みにすると生きて行けない。故に途上国は低賃金を売りにして先進国の工場誘致を行ってきた。しかし、(今のところまだ)先進国である日本が、工場ワーカーの最低賃金を途上国並みの低さに設定しても、ワーカーが餓死せず、貧乏なりの生活を送れる方法がある。ベーシックインカム負の所得税)を導入して、全ての低賃金労働者を生活保障するのである。

毎月5万円を国民全員に支給すると年間で72兆円必要だが、純計ベースの特別会計予算が169兆円あるようなので、いまでも一般会計に手をつける事なく実現可能なようだ。詳しくはベーシックインカムの実現可能性に書いた。

ベーシックインカムを導入しても、高い賃金をもらっている工場ワーカーが、おいそれと月給1万円で再雇用されるとは思えない。行政が策を講じて、そこへ誘導してゆかねばならない。正社員の解雇をゆるくして、労組を解体し、最低賃金を月給1万円にしても、最初はだれも見向きもしないだろう。まずは中国、フィリピン、ブラジルあたりから、ベーシックインカム+日本国籍で一定数の移民を勧誘して、月給1万円の労働市場を国内に生み出さねばならない。あとはメディアを動因したキャンペーンや、衣(制服)食(3食)住(社員寮)込みの生活環境でメリットを出して、多少の時間をかけて労働市場を増やして行けばよい。企業は1万円ワーカーによって人件費が大幅に低下し、工場が国内にあるのでアジア各地から輸入する物流コストも不用になる。そうするのと、普通賃金のワーカーのいるメーカーや、アジアで生産しているメーカーより製造原価が低くなり、商品競争力が増す。すると競合他社も市場競争力を維持する為に、1万円ワーカーを導入せざるを得なくなる。こうして一機に普及が進む。

中国では工場ワーカーの年齢は高卒から20代中盤あたりが主流である。老眼がはじまっている40歳過ぎのおばさんワーカーより、10代から20代の若いワーカーの方が生産性が圧倒的に高い。最近の工場には付き物の情報機器の習得や扱いも若いワーカーの方が上手である。日本で若年の工場ワーカーを大量に生み出すには、別途に策が必要である。アジアでは、工場ワーカーは基本的に中卒か高卒だ。学歴が低いゆえに、よりよい職につくのが難しい。逆にいうと、日本も大卒を減らせば工場ワーカーの志望者が増える可能性が高い。そこで、私大補助金を廃止して、私大を大規模に淘汰する。私立の中高校も、補助金廃止して淘汰する。そのかわり高校まで義務教育にして、国公立の大学は授業料を無料にして、本当に優秀な人間だけが進学できるようにする。すると、国公立大学へ進学するほど優秀でない金持ちの子弟は(昔の香港のように)外国へ留学しかなくなる。経済力の無い一般家庭の子女は、高度成長期の頃のように高卒で就職せざるを得なくなる。その就職先として、大口を開けて待っているのが工場ワーカーという職業である。

一方で中国やベトナムなど途上国では、経済の発展とともに工場ワーカーの賃金は上げざるを得ない。既に中国の沿岸都市部は途上国とはいえないほどの経済的な発展をみせている。しかし、日本のベーシックインカムに対抗するにはいかんせん人口が多すぎる。ベトナムやフィリピンは、まだまだ経済力が追いつかない。日本は世界の工場として多数の雇用創出と外貨獲得の一石二鳥を同時に実現するのである。

最後に、このような考えを荒唐無稽と思うか、ひとつの可能性と考えるか、はたまた実現可能な未来と考えるかはあなたの想像力次第である。

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2 Responses to “グローバリゼーションに勝つ製造業の未来”

  1. aa
    1月 9th, 2009 at 10:12
    1

    「こうすればいいのだ、俺はやらないけどね。」

  2. toui
    1月 12th, 2009 at 16:28
    2

    円がすんごい上がりそうな気がしますが…

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