ベーシックインカムの弱点を克服

1月 2nd, 2009 Categories: 1.政治・経済

同僚と飯を食いながら、ベーシックインカムについて話した。彼は池田信夫blogは読んでないが、山崎元氏ホリエモンのブログは愛読している。 で、彼はベーシックインカムを導入すると、生活苦が減って、旧ソ連のように真面目に働かなくなる労働者や、欧州の高福祉国家のように自殺者が増える事への懸念を表明した。退屈な人生が嫌になって自殺する人が増えても、それで国力が下がる訳ではないので、これは大きな問題ではない。しかし真面目に働く人労働者が減って、国力が下がるのは困る。税収が減ると、ベーシックインカムの財源も減って、増税に頼らざるを得なくなるからである。これはベーシックインカムの弱点といえるかもしれない。さて、 どうしたものかとと考えていたら、それに関して非常に興味あるブログ記事を発見した。そのユニークな表現に、思わずぷっと笑ってしまった。

努力しない人を国家が救済すべき14の理由

ちょっとふざけた表現の文章だが、内容には感心した。おもわず目から鱗が落ちたような気がした。以下の一覧は、その一部分(の更に抜粋)である。この記事を読んだ人は、上記リンクからオリジナル記事をぜひ読んでほしい。この内容に納得できれば、先に述べたベーシックインカムの弱点は(議論の上で)克服できると思う。

  • 努力しない事は道徳的な悪ではない。
  • 低賃金で退屈な仕事をのんびりやってくれる人も、一定数は社会に必要である。
  • 才能が無いのに怠けている人が働き者になっても、社会はさほど豊かにならない。
  • 才能の乏しい人間の最大の社会貢献は、犯罪を犯したり他人に迷惑をかけるような社会的害悪を垂れ流さないことである。
  • 怠け者に罰を与えたところで、社会が良くなる訳ではない。

なるほど、なるほど。ベーシックインカムで働かなくなる低賃金の労働者が大勢現れても、そういう人はそもそも税金をあまり払っていないので、働かなくなっても税収にはあまり影響がありません。低所得者は一般的にエンゲル係数が高いので、働き続ける低賃金の労働者家庭はベーシックインカムにより、ますますお金を使ってくれる事が期待できます。結果として、仕事止めて「家ゴロ」する怠け者が増えても、国力には影響しないどころか、消費が増えて国力が僅かに増す可能性がありそうです。

一方、ベーシックインカムが社会のセーフティーネットになる事で、すべての正社員の解雇も容易に行えるようになれば、高所得者の怠け者(大企業でハンコつくだけが能のノンワーキングリッチ)を企業から一掃できます。人件費が下がって企業は利益が増し、税収が増えます。更に無能な管理職が頭上から消えれば、若い人の仕事のモチベーションが上がる事は間違いないでしょう。お役御免になった管理職の中には、早期引退生活に嫌気がさして自殺する人もいるでしょうし、もう一花咲かせる為に若い人と起業するチャレンジャーも出てくるでしょう。つまり、お金を直接配るベーシックインカム導入で労働市場の流動性を高めれば、ホワイトカラーの生産性が高まるだけでなく、起業に挑戦する人も増える可能性があるという事です。

いまの日本には限られた人生のオプションしかありません。若者は将来の閉塞感にやる気を無くし、年寄りは会社にしがみついて既得権を手放さない。企業に就職しない人は「はみ出し者」として無言の差別を受けています。ベーシックインカムは、そういう日本にいろいろな人生のオプションを提供する大きな可能性を持っていると確信しています。

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5 Responses to “ベーシックインカムの弱点を克服”

  1. haruomi
    1月 7th, 2009 at 20:38
    1

    制度は短期間に変えることはできても、人や企業の市場での行動は直接人為的に操作することはできません。(制度を通して間接的に操作するしかありません。)
    「工場ワーカーの単価を東南アジア並みに下げれば……」等という前提に立った考えはその意味で論理的に破綻していると思います。なぜなら労働賃金も規制などのパラメーターが干渉しているとはいえ基本的には市場で決定されているものだからです。日本と他のアジア諸国の労働単価に差があるとすれば、まさにアジア諸国の労働者が日本の労働需要に流入し日本の労働者と競合するするという形でしか市場のエントロピー差は均衡しません。
    ベーシックインカムはこの場合独立したパラメータで、企業の雇用活動に影響を与えることはできません。むしろセーフティーネットが整備されて首切りに心が痛まなくなれば、企業はこれ幸いと高い日本人労働者を減らしてアジアの労働者に切り替えるでしょう。

    同様に「ベーシックインカムが社会のセーフティーネットになる事で、すべての正社員の解雇も容易に行えるようになれば、」というような前提の立て方も論理的に破綻していると思います。現在企業が正社員を解雇できないのはそれが正社員の生活を壊すことを慮るからではなく、規制のため正社員解雇のコストがとても高くなっているからです。
    正社員と派遣の待遇差別を解消する処方箋はそれを制度的に禁止する、もとい正社員を不当に優遇する規制を撤廃することでしかありません。
    願望に基づいて制度設計はできません。

  2. bobby
    1月 8th, 2009 at 12:01
    2

    haruomiさん、ご意見有難うございます。

    たぶんharuomiさんは、上記のブログにリンクを張ってある、そもそもの議論の出発点からのストーリーまでを読まれずに、上記記事内容だけに反応されているのだと思います。下記記事とその中のリンクをご一読ください。

    【ベーシックインカムの実現可能性】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=470

    【派遣は真っ先に切られるべき】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=475

    【賃金を下げれば失業率が下がる実例】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=479

    【負の所得税は新種の公務員を生み出すか】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=480

    【ベトナムの給料と日比谷公園】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=481

  3. haruomi
    1月 10th, 2009 at 02:41
    3

    こんばんは

    私の文のどこを読んで過去の記事を読んでいないと思ったのかわかりません。
    「工場ワーカーの単価を東南アジア並みに下げれば……」というのは過去の他の記事の引用ですし。

    言い方を変えれば、ベーシックインカムを導入することでなぜ工場労働者の賃金をアジアなみに低くすることができるのでしょう。
    上記が「できる」というのは、「工場労働者がベーシックインカム込みで現状の収入と同額で満足する」という前提に立っています。しかしこの前提には根拠がありません。
    明らかなのは、工場労働者が一般により多い収入を欲すると言うことです。
    工場労働者が他の産業分野より収入が余りに低ければ、労働者は3次産業など別の産業分野に移行するでしょう。その結果低給の工場労働者で甘んじる労働者は少なくなり、需給のバランスで工場労働者の給料は高くなるでしょう。
    工場労働者たちが突然無欲になって、他の産業分野より圧倒的に低い賃金で満足するようになると言うことはありえません。
    現状起こっていることは実はそういうことで、工場がアジアに移転されていると言うのは低くなっている工場労働者の給料で甘んじる労働者がアジアにしかいなくなっていると言うことと同じことです。

    ベーシックインカムは(私は「負の所得税」と言ったほうが良いと思います。)セーフティネットとしてすぐれたアイデアだと思いますが、それでできることと出来ないことは明確に認識したほうが良いと思います。
    負の所得税を導入することで、低い労働単価を求めて海外に移転する工場を呼び戻すことはできません。
    まるでベーシックインカムがすべての問題を解決するかの錯覚をしているようで、それは結局きわめて現実的な政策としてそれを考えている人の邪魔になるでしょう。

    ちなみに負の所得税は「負の累進課税」でもあって、たとえ制度の支援を受ける立場の人でも働けば働くほど収入が増える仕組みなので、まったく働かないほうが収入になる現行の生活保障制度と違って「努力しない人」の心配は現行制度よりしなくてもすむようになるはずです。

  4. bobby
    1月 10th, 2009 at 11:39
    4

    haruomiさん、ご意見ありがとうございます。月給1万円の労働者市場を国内に生み出すプロセスについては、昨日下記の記事に書きましたのでこちらを参照下さい。

    【グローバリゼーションに勝つ製造業の未来】
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=483

    他の単純労働市場へ逃げるだろうという危惧に対しては、他の単純労働も月給1万円に近くなるであろうから、自分でスキルアップしてより高い付加価値を生み出す職業へ転職する以外に、逃げ場所は無いだろうと考えております。学歴も資格もスキルも無い単純労働者は、寮付きの工場、企業農場、土木建設業などしか選択枝がないでしょう。この中で、工場ワーカーは一番楽な職業だと思いませんか?

    ベーシックインカムと負の所得税は似て非なるものです。ベーシックインカムは無条件に全国民に支給されますが、負の所得税は所得に対する補填だと思います。負の所得税は支給対象者の選別や支給額の算定を誰がどうやって行うかという実装の部分に疑問がありますし、運用の為に役人もたくさん雇わなければならないでしょう。それで私は、しくみが単純なベーシックインカムを選択しました。どちらを選択するにしても、働けば働くほど収入が増えるというしくみはかわりません。

    働けば働くほど収入が増える事はあるけれども、どんなに働いてもアジアの労働者並みの付加価値しか生み出さない職業に対しては、それなりの低い賃金を払いましょうという事です。そうすれば「やる気」のある人は頑張って学歴や資格やスキルを身に着けて、高い付加価値の職業を欲するようになるでしょう。親は子供に、高い能力を身に付けさせようと努力するでしょう。能力のある者が、努力しただけ収入が増えるような格差社会をつくろうというのが一連の記事における私の意図です。

  5. haruomi
    1月 12th, 2009 at 01:24
    5

    負の所得税が制度設計のアイデアとして優れている点は、池田先生も言っているように、きわめてシンプルな仕組みなので、現在の複雑怪奇な税制度よりもよほど分配コストがかからないことです。
    逆にそれゆえ、官僚を大量に不要とするため政治的には実現しにくいだろうというのが池田先生の分析です。私もその分析が正しいと思います。

    ベーシックインカムと叫ぶだけでは実現しません(どこからお金を集めるのか考えなければなりません)ので、実装方法の一つとして負の所得税があるということだと思います。

    >どんなに働いてもアジアの労働者並みの付加価値しか生み出さない職業に対しては、それなりの低い賃金を払いましょうという事です。

    要するに日本でも貧富の差をもっと大きくすれば日本国内の製造業は蘇生する、ということだけの話ですよね。
    私も結局のところもっとやる気の差が貧富の差に反映されるようにならないと日本民族の未来はないと思っているのである意味賛成です。
    でもそれはベーシックインカムを導入すれば可能になるというより、貧富の差があまり過酷になると困るので、セーフティネットを整備しなければならない、その一案としてベーシックインカムがあるということで逆ですよね。

    「グローバリゼーションに勝つ」とありますが、「勝つ」の主体は何でしょう。日本企業ですか。日本国ですか。日本の労働者ですか。人類の福祉ですか。「1万円市場」を作るために何十万人も外国人労働者を導入するならば、海外に工場を移転するのとどう違いますか?
    またそのようなことをすれば、結局のところ単純な工場労働には日本人は帰ってこず、外国人の専門のようになってしまうのではないでしょうか。彼らは日本の国法にも保護されず、「奴隷階級」になってしまうのではないでしょうか。

    論の立てかたが転倒しているのでわけが分からなくなっている上に、政策としても実現不可能になっているように思います。国内に貧富の差をを広げるという目的のために意図的に海外労働者を大量に導入するようなことを、少なくとも公言しながら政策として可能なわけがないです。
    以前も書きましたが、ベーシックインカムと言いたいがために、それに何もかも合流させるかのような書き方はどうかと思います。

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