地球の温暖化、寒冷化

地球が温暖化や寒冷化(氷河期への引き金)についてのメカニズムは、実はよくわかっていない。対象が地球全体なので研究するコストと時間が莫大だ。特に問題なのは、地球表面の七割を占める海洋の研究が何百光年先の宇宙よりもずっと遅れている事だ。

先日、古いSF関係の友人から送ってもらった「深海のyrr」というSF小説を昨夜、読み終わる事ができた。著者はフランク・シェッツィングというドイツ人。翻訳は北川和代さん。

この本を書くために、著者のフランク・シェッツィングは、最新の地球科学を第一線の地球科学者からそうとう取材して勉強したようだ。この本を読んで、はじめて知った事や詳しく知る事ができた事がいろいろあった。最近騒がれている地球温暖化、寒冷化に関する内容がいろいろあったので、ネタバレしない程度に、印象に残った科学的な仕掛けを、下記に列挙して紹介したい。

人口衛星が測定する海洋高度

世界の海の高度は、1992年9月から、衛星海洋高度計によって+-1mの誤差範囲で計測できるようになったらしい。おかげで海面高度計データを利用した海洋循環とその変動に関する研究は飛躍的に発展した。特に注目すべきは、地球の重力異常を反映したジオイドの存在である。ジオイド面による海洋表面の凹凸は最大で85m程度の突出と105m程度のくぼみとなり、そのために海洋表面はジャガイモの表面のようにデコボコしているらしい。

大陸棚崩壊と地球温暖化

およそ8千年前ノルウエー沖でストレッガ海底地すべりと言われる大陸棚の崩壊が起こった。約5600k㎥もの海底堆積物が、大陸棚から太洋低にズレ落ちたと言われる。その移動距離は、実に約800kmにも及ぶ。その原因が、メタンハイドレート崩壊によるメタンの大量噴射らしい。その時、大気中に放出されたメタンは、メタン埋蔵量の3%に当たる3,500億トンにのぼると見られ、噴出口の痕跡が海底に1千キロメートルに渡って広がっており、百以上のクレーターが散在している。現在沈殿していると見込まれている量が大気中に噴出すると、平均気温が10年間で4度も上昇するという。 1988年のパプアニューギニアを襲った津波や、1993年の奥尻島を襲った地震も、メタンハイドレートの大量崩壊が関係していると考える学者もいるようである。メタンハイドレートの大量崩壊と地球温暖化ネタは、ジョン・バーンズ著の「大暴風」でも使われている。

熱塩循環の阻害と地球の急速な寒冷化

中深層(数百メートル以深)で起こる地球規模の海洋循環は、極域の熱収支に大きくかかわり、全地球の海氷の量にも影響を及ぼす。また、地球の放射収支にも大きな影響がある。圧倒的な体積を占める深層水塊は、大気の二酸化炭素濃度にも影響を及ぼしている可能性がある。後氷期の初期、グリーンランドや北アメリカ氷床の融解によって低密度の淡水が大量に流入し、北大西洋での深層水の形成や沈み込みを極度に阻害したことがわかっており、これがヨーロッパで知られる気候「ヤンガードリアス」イベントを引き起こしたと考えられている。 ヤンガードリアスは、最終氷期が終わり温暖化が始まった状態から急激に寒冷化に戻った現象で、現在から12,900年から11,500年前にかけて北半球の高緯度で起こった。この原因は、北大西洋の熱塩循環の著しい減退もしくは停止に求める説が有力である。これを主要なネタにしたのが、ハリウッド映画の「デイ・アフター・トゥモロー」だ。

池田信夫blogでは「地球は温暖化しているのだろうか」という記事で、最近、温度低下が観測されている事を紹介している。北極の氷がいくら解けても海面高度は上がらないが、北大西洋循環がグリーンランド海で、熱塩循環が阻害される事で深海への沈み込みが止まり、ヤンガードリアス・イベントと同様の(千数百年規模の)長期的な寒冷化をヨーロッパに発生させる引き金になり得るかもしれない。二年前の朝日新聞にも、これに言及する記事が掲載されていた。この場合、寒冷化は数十年の間に起こるかもしれない。

追記:「深海のyrr」でメキシコ湾流と表現されていた海流は、実際には北大西洋海流であり、深海海流も含めた循環を、北大西洋循環とよぶようです。他ブログのコメントにて指摘がありましたので本文を訂正致しました。 (2008-08-02)

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