低量の放射線被爆が発癌リスクを下げる根拠

4月 17th, 2011 Categories: 1.政治・経済, 2.科学技術

今日の「たかじんのそこまで言って委員会」は有意義な内容でした。前に出演した日本放射線学界の中村仁信理事が、「放射線は微量ならむしろ健康に良い」という発言が番組終了後に物議をかもしたようで、中村氏にちゃんと説明してもらおうという事になりゲスト出演となりました。また中村氏はもとICRPの委員でもあり、、直線しきい値なし(LNT)モデルへの意見も述べられました。

まず最初に、放射線被爆するとなぜ癌や白血病になるのか、その理由について考えます。放射線被爆が健康に悪いといわれる原因は、被爆により体内で活性酸素が作られるからです。

ところで活性酸素は放射線被爆以外にも、日常的に大量に体内に生じています。喫煙で活性酸素が増える事や、活性酸素が老化を促進する事は周知の事実といえます。活性酸素は体内に必要な物質ですが、余った活性酸素は細胞内のDNAを壊して癌や生活習慣病や老化の原因となるといわれています。

体内の余剰な活性酸素が細胞内のDNAを壊しても、壊れたDNAを自動的に修復する機能が備わっています。更に修復されなかった細胞が癌化しても、その多くは細胞が自壊するようになっているそうです。自壊しなかった癌細胞は、免疫機能に捕捉され壊されます。それでも生き残った癌細胞も、極めて少数では頑として発病しないそうです。人間にはこのように、活性酸素から癌が発病しないように、何重ものフェイルセーフ機能があります。

ところで人間が持つ免疫力にしろ活性酸素の対処機能にしろ、適量範囲において使えば使うほど能力は向上します。適量の運動が筋力や心肺能力を高めるのと同じです。低量の放射線に長期被曝していると、体内で発生する活性酸素のアベレージが適量に高まり、それにより対処能力が向上するそうです。

以下は台湾の例ですが、コバルト60が鉄筋に混入したアパート住民の健康影響調査において、一般人の発ガン率3%に対して、長期被爆した住民の発癌率が大幅に低かったという疫学調査研究例です。

これは非常に興味深い研究結果といえます。

運動と健康の関係を考えた場合、心肺機能や筋力を高めるに、スポーツ選手は激しい運動をします。運動により身体は一時的に損傷しますが、それが回復すると身体機能は前より高まります。身体に運動というストレスを与えないと、身体は損傷しないかわりに機能向上しません。

外でよく遊ぶ子供は怪我する機会も多い。怪我をすると化膿菌が体内へ侵入して、一時的には細菌感染した状態になる。細菌が侵入すると免疫機能が細菌と戦う。これ自体は健康に悪い。しかし日常的に傷口から化膿菌の侵入が繰り返されると、体内の免疫能力は高まり、外傷によって化膿し難くなる。実際に外でよく遊ぶ子供は、大人にくらべて、外傷で化膿し難い。これは私の経験(小学生の頃は平気だった擦過傷が、中学校高学年では容易に化膿してしまった)とも一致する。

放射線の健康への影響が活性酸素によるものだけであるならば、低量長期被爆は、体内の活性酸素への対応能力を向上させると考えられるので、活性酸素由来による癌、白血病、生活習慣病、老化への対応能力を向上させる事が期待できると理論的に考えられるという事になります。

最後に、ICRPの委員の中にも、直線しきい値なし(LNT)モデルは古い考え方であり、閾値があると考える委員も増えてきていると中村氏は述べていました。ただ、現在のモデルは世界中に広範囲に広がっており、(筆者の受けた印象ですがICRP内部の政治的な問題により)別のモデルに変えるのは現状では難しいとの事です。

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4 Responses to “低量の放射線被爆が発癌リスクを下げる根拠”

  1. はな
    4月 19th, 2011 at 19:11
    1

    放送で扱われたデータは2004のものです
    http://criepi.denken.or.jp/jp/ldrc/study/topics/cobalt_apartment.html
    2006年には、全く同じ台湾のアパートを取り扱いながら、全く逆の結果が述べられている調査もでています。御参考までに。
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17178625

  2. bobby
    4月 20th, 2011 at 12:57
    2

    はなさん

    興味深い資料を教えて頂き有難うございます。2つの資料の違いはどこにあるのでしょうね。台湾の一般公衆の発癌率が異なるのか、居住者の発癌者の捕捉範囲や定義が異なるのか?

  3. bobby
    4月 20th, 2011 at 13:11
    3

    英語の医学論文を読むのは苦手だ、とお断りした上で、2つの論文の結論の差は以下のようなものではないかと推測します。違っていたら、どなたかご指摘下さい。

    1)放射線安全技術センターが紹介した論文は、全ての癌を含む発癌率と比較している。
    2)PubMedの論文は、特定の癌に絞った発癌率で指摘している。

  4. naotoke
    5月 25th, 2011 at 00:32
    4

    ネットで無償公開されているabstractを読む限り、
    2004年に発表された論文の主張が追試されて
    2006年に発表された論文で否定されたのではないでしょうか。
    2006年の論文のabstractには2004年の論文の主張を部分的にも肯定する表現がありません。

    2004年の調査が年齢構成や性別構成をちゃんと標準化(SIR)していたのか、アパートから退去後の追跡はどの程度できたのか、追跡できなかったものの統計評価はどのように行ったのかが気になるところです。

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