二兎を追うもの一兎を得ず

福島第一原発の1・2・3号炉からの広域放射能汚染がはじまった主要な原因は、圧力容器の破損です。しかしメルトダウン=圧力容器の破損ではありません。なぜ圧力容器が破損したかといえば、バッテリーによるECCS稼動が停止(推定11日23時)してから海水注入(12日20時)まで21時間もの時間を要したのと、圧力容器の減圧に失敗したのが最大の理由です。

21時間の理由は、東電経営陣が高価な原子炉の廃炉を認めなかったからというのが、今のところ有力な仮説となっています。菅首相は津波で冷却機能が喪失してからすぐに海水注入を要求したが、東電は認めなかったと。

これが正しいとすれば、東電は1・2・3号炉の廃炉を渋った為に、当時は停止中であった4・5・6号炉も一緒に失う羽目になりました。なんとも皮肉な事ではありませんか。そしていまは、福島第二原発の4基の原子炉も風前の灯のようです。

東電経営陣は、いまさら悔やんでも悔やみきれないでしょう。もし津波で冷却機能が喪失した時点で、1・2・3号炉の圧力容器へのホウ酸注入と、海水注入を即時開始していれば、こんな事態まで進行しなかったでしょう。

東電の運命の分岐点は、11日の15時から23時までにあったと考えられます。この時間内で、3つの原子炉を安全最優先で対応するべく、潔く廃炉を認めなかった事。つまり、東電のウェブサイトに明記されているリスクマネジメントや企業倫理遵守がしっかりと実行できなかった事が、この事態を引き起こしました。池田信夫氏や藤沢数希氏は原発を擁護していますが、東電のこの致命的な経営判断ミスによって、福島原発だけでなく、いまや世界の原発が危機に瀕しています。

参考:
原発の常識
原発を擁護する

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8 Responses to “二兎を追うもの一兎を得ず”

  1. minourat
    4月 6th, 2011 at 02:37
    1

    > もし津波で冷却機能が喪失した時点で、1・2・3号炉の圧力容器へのホウ酸注入と、海水注入を即時開始していれば、こんな事態まで進行しなかったでしょう。

    http://w.livedoor.jp/nuclear/ の「福島第一原子力発電所 稼動状況時系列」ページで地震後の事象の時系列ログをみました。津波で失われた交流電源が一時は確保されています。また、RCICは、12日の3時の時点で稼動していたことが確認されています。 ということは、津波で冷却機能が即時失われたわけではありません。

    12日の07時51分から13時00分までは、冷水タンクから注水をしています。この時点では海水注入は無意味であるだけでなく有害です。

    地震後の異常事象にたいして運転員は、できるかぎりの対応をしていたとおもいます。 消防ポンプで注水するためには、 炉圧を下げなければなりません。 炉圧を下げるために、 逃し弁を即時に全開していたら、 炉水は短時間に蒸発で失われたとおもいます。 また、格納容器が壊れたかもしれません。 

    福島1-5号機に使われているMark-Iの格納容器の危険性は、1976年から指摘されていました。 これは、2・3号基で現実になりました。

  2. jun
    4月 6th, 2011 at 06:51
    2

    大前研一によると既にメルトダウンしていますよ。

  3. bobby
    4月 6th, 2011 at 10:57
    3

    minouratさん

    稼動状況時系列ページをご紹介頂き、有難うございました。これまでで一番詳しい内容ですね。私の意図としての海水注入は、真水の冷却水が足りなければ、という意味です。このログが正しければ、12日の20時以前は真水の注入を行っていたようですので、この操作には異存はありません。

    電源に関しては、このログには混乱があります。どの炉の冷却系へ、いつ、何から、どのように電源接続され、いつまで供給が続いたのかが明瞭ではありません。

    11日20時 1,2,3,4号機については外部電源確保
    11日20時30分 1,2,3号機、中操照明確保準備中M/C水没、2号機については、優先的に電源車つなぎこみ作業待ち
    11日23時30分 電源車到着
    12日0時 2号機に関し、仮設電源により原子炉水位は確認でき水位は安定
    12日7時51分 2号機に関し、電源車による電源確保作業実施中
    13日10時 電源車のつなぎ込みを行ったが、ケーブルに傷が確認されたため、再度敷設作業を実施中(13:00見込み)

    1号機の圧力容器の破損については、12日の午前3時のベント開放予定が9時になったのは致命的だったのではないでしょうか。

    1号機のタービン建屋の放射能漏洩は11日の23時に最初に確認されていますので、これは地震か津波による発電用蒸気か冷却水経路(パイプ等)の損傷ではないでしょうか。

  4. bobby
    4月 6th, 2011 at 11:06
    4

    圧力容器(悪くても格納容器)の機密性が保たれてさえいれば、炉心のペレット損壊や、その後で圧力容器の底でウランの溶融は、炉心の冷却系が十分でない場合には、起こるべくして起こる問題と理解しています。

    メルトダウンより、格納容器の機密性が破れている事の方が、環境への被害という意味では大きな問題です。

  5. bobby
    4月 6th, 2011 at 11:31
    5

    minouratさん

    上記コメントの後で気づいたのですが、圧力容器の冷却には冷却材である真水や海水を炉心へ「十分な量」注入する必要があります。ECCSは緊急用で注入水量が少ないし、RCICは短期用なのでECCSより更に注入量が少ない。また、崩壊熱の熱量と、それに必要な冷却水の水量の理論値は、関係者であれば計算で求められる筈。これが正しければ、ECCSがバッテリー駆動中に、冷温停止までの戦略を、東電経営陣は立てる義務があったと考えますが、この点をminouratさんはどう思われますか。

  6. minourat
    4月 6th, 2011 at 15:43
    6

    > 11日20時 1,2,3,4号機については外部電源確保

    これが東北電力からの電源かどうかはわかりません。

    > 11日20時30分 1,2,3号機、中操照明確保準備中M/C水没

    ここで、メタクラ配電盤(M/C)が海水につかって万事休すです。

    > 1号機の圧力容器の破損については、12日の午前3時のベント開放予定が9時になったのは致命的だったのではないでしょうか。

    ベントは格納容器からであって、 圧力容器からではありません。また、このベント弁が開かれたのは、菅首相が去ってから1時間後ですから、菅首相のために遅れたというのはあてはまらにないとおもいます。 このベントは3時から予定されています。 また、1号機の格納容器は破損していません。

    > 1号機のタービン建屋の放射能漏洩は11日の23時に最初に確認されていますので、これは地震か津波による発電用蒸気か冷却水経路(パイプ等)の損傷ではないでしょうか。

    格納容器からのベントがまだおこなわれていませんから、 そういうことになりますね。

  7. minourat
    4月 6th, 2011 at 16:11
    7

    > ECCSがバッテリー駆動中に、冷温停止までの戦略を、東電経営陣は立てる義務があったと考えます

    12日 07:51 1号機に関し、海水ポンプへのバッテリ接続作業

    とありますから、この時点でECCSおよびRHRの稼動はあきらめていたとおもいます。 原子炉が停止した時点での燃料棒の過去の燃焼履歴から発生する残留熱を計算するプログラムがありますが、本社でこれができたかどうかはわかりません。このプログラムが監視用計算機にあっても、計算機がダウンしていたはずです。

    東電経営陣にこれをやれというのは、 無理です。

    消防ポンプを持ち出した時点で、とにかくやってみるという状態で、評論家の方々は勝手なことをおおせられていますが、戦略など立てようもないです。

  8. bobby
    4月 6th, 2011 at 17:00
    8

    minouratさん

    いつも鋭いご指摘や追加情報を有難うございます。M/Cはメタクラの意味だったのですね。

    >ここで、メタクラ配電盤(M/C)が海水につかって万事休すです。
    津波到来(11日およそ15時)からメタクラ配電盤水没(11日20時)まで5時間あります。これは水没確認された時間なのか、別の理由で5時間後に水没したのかログでは理解できません。

    >ベントは格納容器からであって、 圧力容器からではありません。

    格納容器については仰る通りでした。ところで以降の「ベント開放」が格納容器なのか圧力容器なのか不明です。これら全部が格納容器の場合、圧力容器のベントはどうなっているのでしょう?あるいは圧力容器のベントは自動で行われるという事なのでしょうか?

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