早期の廃炉決定はデスマーチを防げたか

3月 20th, 2011 Categories: 1.政治・経済, 2.科学技術

昨日の枝野官房長官の会見で、「ウォールストリート・ジャーナルで、今回の最大の不幸は東電が政府から指示されるまで海水注入決断をしなかったから、こんなにひどくなったのではないか、東電が土曜朝から決断していれば、問題はこんなに広がらなかったのではないか」という質問がでたようです。

大前研一氏は、発電所に電気があるうちに炉心の冷却水へホウ酸を入れる事ができれば、緊急冷却装置(ECCS)停止後の崩壊熱の処理が容易になったと述べています。ECCSは非常用ディーゼル発電機が停止した後も、津波発生後から8時間ほどは、非常用バッテリーで稼動していました。東北電力からの外部電力の修復が、この時間内に困難であろう事は、東北全体の被災状況をざっと見ただけで、直感的にわかったであろうと思われます。この8時間のうちに廃炉の決断を下していれば、現在のような状況悪化を防ぐ事ができたと考えます。

仮に最初の8時間以内にその決断ができなかったとしても、翌日の午前中に全炉を廃炉する決断を行なって、圧力容器への海水注入を行っていれば、やはり、いまより状況が悪くなる事はなかったと思われます。

この記事の目的は過去の決断を批判する事でなく、未来への教訓としてほしいというのが目的です。

追記(2011/03/21):ホウ酸が崩壊熱の制御に有効であるというのは筆者の誤解であり間違いです。圧力容器へホウ酸を入れる理由は、炉心が融解して圧力容器下部へ落下した後で、再臨界が起きる可能性を防ぐものかと思います。この記事の後の記事で、この誤解に気づきましたが、本記事の事を忘れていました。ご指摘頂いたminouratさんに感謝します。

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6 Responses to “早期の廃炉決定はデスマーチを防げたか”

  1. minourat
    3月 21st, 2011 at 11:08
    1

    > 発電所に電気があるうちに炉心の冷却水へホウ酸を入れる事ができれば、緊急冷却装置(ECCS)停止後の崩壊熱の処理が容易になった

  2. minourat
    3月 21st, 2011 at 11:25
    2

    >発電所に電気があるうちに炉心の冷却水へホウ酸を入れる事ができれば、緊急冷却装置(ECCS)停止後の崩壊熱の処理が容易になった

    これは本当でしょうか? ホウ酸は核分裂を止めるものですが、核分裂は制御棒の全挿入で止まっておりました。

    また、ECCSが非常用バッテリーで稼動している間は冷却水の注入はECCSでなされていましたので、さらに海水を注入する必要なかったとおもいます。 また、高圧の圧力容器内にECCSのHPCI(High Pressure Coolant Injection)での注入はできますが、消火用ポンプでは圧力が低すぎます。

  3. bobby
    3月 21st, 2011 at 12:02
    3

    minouratさん

    ご指摘頂きありがとうございます。ホウ酸の件は仰る通りです。現在、移動中なので、後ほど記事内容の修正を検討します。

    海水注入については、新聞報道では圧力容器内へホウ酸入り海水注入とされているが、保安院のプレス発表では格納容器へ消化用の経路から海水注入となっているようです。事実が明らかになった時点で、記事内容について再度検討させて頂きます。

  4. minourat
    3月 22nd, 2011 at 01:19
    4

    ホウ酸入り海水の注入に関しては、私も圧力容器内と格納容器内のどちらが本当かとおもっていました。 その後、 大前先生が両方だと言っておられるのを聞いて、すこし納得したのですが、 それですと、2号機の格納容器の下部の損傷から汚染された水蒸気がでてきたという事実と矛盾します。 

    そこでさらにWebで調べると、格納容器に海水を注入するポンプ余力も人力もないという東電の会見記録をみつけました。その後、格納容器に海水を注入したかどうかはしりません。

  5. bobby
    3月 22nd, 2011 at 09:48
    5

    minouratさん

    報道の内容(枝野長官の発表がソース)と保安院のプレス発表には、なんかすっきりしないものが多いと感じます。

    圧力容器内へ海水注入するには高圧ポンプが必要だが、電気と高圧ポンプが必要で、更に、注入時に放射能汚染された蒸気が外部へ逆流するリスクがありますが、どうやって圧力容器内へ注入したのでしょうか。

    格納容器の中には、圧力容器用冷却水のポンプが入っている筈ですが、ここを海水で満たすと、冷却水用のポンプなど機器類はどうなるのでしょうか。

    保安院のプレス発表:地震被害情報(第20報)(3月13日16時30分現在)では、2号機は注水機能の維持となっています。これは「どこ」へ「どうやって」実施したのか、詳細が不明です。

    http://www.meti.go.jp/press/20110313006/20110313006.pdf

  6. minourat
    3月 24th, 2011 at 17:26
    6

    > 圧力容器内へ海水注入するには高圧ポンプが必要だが、電気と高圧ポンプが必要で、更に、注入時に放射能汚染された蒸気が外部へ逆流するリスクがありますが . . .

    逃し弁を開いて、 圧力容器内の圧力を、1から数気圧までに下げています。 例えば、http://www.meti.go.jp/press/20110323012/20110323012-2.pdf を参照してください。

    > 格納容器の中には、圧力容器用冷却水のポンプが入っている筈ですが、ここを海水で満たすと、冷却水用のポンプなど機器類はどうなるのでしょうか。

    ECCSのポンプは格納容器の外側にあります。 格納容器の中あるポンプは炉水の再循環ポンプです。次の図を参照してください: 
    http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/02/02010101/04.gif
    ただし、 福島第一原発の1-5号機の格納容器は Mark I で、タコ入道のような形状です。

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