「半島を出よ」に欠けている視点

12月 26th, 2007 Categories: 1.政治・経済

村上龍の「半島を出よ」を読んだ。大胆かつユニークな発想と緻密なディテールで楽しませてくれたが、読んでいて気になったところがあるので書く。(ネタバレあるので、読む予定の人は、この続きは本の読後にクリックするべし)

この物語には、掲示板やブログにみられる、インターネットが政府や社会全体に及ぼす影響がまるで書き込まれていないのではないか。初版が出版された2005年3月時点で、インターネット上では2チャンネルやブログが全盛となっており、JMMという(私も愛読している)メールマガジンを主宰するなど著者自身もインターネットに詳しいと思われる。せっかくここまでディテールにこだわりながら、現代に欠くことの出来ないインターネットの影響力を過小評価しているところが残念である。

高麗遠征軍が福岡を占領した後、封鎖内(福岡)市民と封鎖外(本州、四国、北海道)市民の意識差、福岡行政府と日本国政府の意識差を、この小説では重要な視点としてとらえているようだ。しかし高麗遠征軍も政府も電話やインターネットなどの情報封鎖を積極的に行っていたという記述は見られない。物流が止まり、大新聞や全国メディアは政府指示で報道管制をしたとしても、インターネットによって情報は流れ続けていた筈だ。

日本の民間人がイラクで拉致されて人質となり、自衛隊撤収を要求された時を思い出す。この延長線上に小説の未来を置くとどうなるだろうか。小説の未来では、福岡市民のブログ記事が封鎖の外側にいる本州側市民へ影響を及ぼし、アルファブログや2チャンネルなどのネット上で政府批判の意見として束ねられ、新聞やテレビなどメジャーなメディア上での世論誘導を経て、政府や警察の方針へ影響(首相が言質へ乗り込んでの交渉、自衛隊による福岡攻撃計画、12万人の船団への海上攻撃など)があったはずである。そうなると、この小説は途中からのストーリー展開がまるで異なってくる事が考えられる。

自衛隊による高麗遠征軍攻撃計画が立案され、スパイが潜入して現地情報を送り、特殊部隊により人質救出と高麗遠征軍殲滅のミッションが開始されるが、ぎりぎりのところで自衛隊は全滅する。報復処置として、報道ヘリによる全国生中継の中で高麗遠征軍による捕虜処刑が行われようとしている最中に、まったく別行動していたイシハラ・グループによってホテルが倒壊して結末を迎える、という筋書きはどうだろうか。

なんちって、ははは。

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