キッシンジャー曰く、核の傘の拡大抑止は有効でない
中国の脅威に対して、米国の核ミサイルが日本を守ってくれる切り札という考えがありますが、それはどうでしょうか。
キッシンジャーは著書「核兵器と外交政策」の中で、「全面戦争という破局に直面した場合、長くアメリカの安全保障の礎石だったヨーロッパといえども、全面戦争に価いすると(米国の中で)誰が確信しうるだろうか?」と述べて、核の傘の拡大抑止の効果に大きな疑問を投げかけています。
中国の核ミサイルの一部が米国本土へ向けられている限り、米大統領と議会は、米国の数十の大都市の市民を人質に取られているのと同じ事になります。
平沼 赳夫・田母神俊雄・中山 成彬による「真の保守だけが日本を救う」の中で、日米安保についてこう指摘しています。
「 日米安保は、自動参戦ではない。日本が侵略を受けた時、二ヶ月以内に大統領が決断して命令を下さなければ米軍は動かない。二ヶ月後には、議会の同意無しでは、軍を動かすことが出来ない。」
中国が日本を攻撃すると決めた時、米国に対して「邪魔すれば核ミサイルで米本土を攻撃するぞ」と脅せば、米国は極東有事への対応が非常に難しくなります。また、米中が全面戦争ではなく(キッシンジャーの言う)限定戦争になる事を望んだとしても、米国の空母を核ミサイルで攻撃すると中国が脅せば、米海軍と海兵隊の主力は日本近海の戦闘区域へ近寄る事ができなくなるでしょう。日本に駐留する米軍だけではどうする事もできません。そうなれば、自衛隊はほとんど自力で中国と戦う事になるでしょう。
このような展開こそが、中国海軍が構想しているといわれる、Anti-access / area-denial strategy(接近阻止・領域拒否 戦略)です。
そのような状況に遭遇した時に、米大統領と議会がどう判断するかは「神のみぞ知る」という事になるでしょう。