中国の力が増大する時、どこまでが適正な距離といえるのか

11月 11th, 2010 Categories: 1.政治・経済

尖閣諸島問題に端を発した中国脅威論的な意見について、ap_09さんと議論を続けています。私にとって中国は母国である日本にとって顕在化しつつある近未来の脅威であり、増大する影響下に不利な条件で日本が飲み込まれないように、日本の政治的リーダーには十分に気をつけてサバイバル戦略を作成・実行してほしいと願うものです。

と同時に、私は中国(香港、上海、広東省)に20年以上居住しており、ビジネスを営む「市場」としての付き合いもかなりの長さになりますから、中国の現実というものが自分なりに見えていると考えます。自分が実際に身近な状況で接している中国の情報と比較して、ap_09さんをはじめ、(たとえ数週間でも)中国に居住した事のない人たちが取り上げる情報は、単に不正確なだけではなく、反中キャンペーンを意図的に流す人たちのバイアスに汚染されていると強く感じます。

普段は興味深い記事を書くブロガーたちが、ちょこっと愛国心に揺さぶられただけで、(冷静に考えれば分かるような)バイアスのかかった情報に疑念を抱く事もせずに中国批判の材料にしているところを見ると、なんとかして「正したい」という気持ちになります。

思い返せば米軍がイランへ侵攻した第二次湾岸戦争直前、米国から「大量破壊兵器はある」という情報がながれて来た時、日本の政治討論テレビ番組の中で、つい先日まで「国連決議がなければ日本は米国のイラン侵攻に手を貸すべきでない」と言っていた論客達が、世論の盛り上がりと共にみな沈黙してしまった事を思い出します。あの時に感じた違和感を、私は忘れたくありません。議論の前提となる「事実」は、可能な限り最新のものを正確に把握するべきです。また、誰かに情報操作されたくありません。そうでないと議論そのものが無意味となってしまいます。政府から洗脳されている訳でも、情報遮断されている訳でも、養育が足りない訳でもないブロガーの我々が、日本の領事館へ投石して「愛国無罪」と叫ぶ人たちと同じレベルで議論する訳にはゆきません。

さて、中国とは適正な距離を保つのが良いと思うというのは、それが可能であれば、私もそうしたいと心底願う者の一人です。しかしながら中国は、経済101の指摘を深読みすれば、500年間も経済成長がなかった事が驚くべき事であって、絶対的水準をみれば、いまの何倍も経済発展する「伸びしろ」があってもおかしくないという見方もできます。

そうなった時に、日本が米国との軍事同盟から離脱して、自立しようとすれば、中国にとっては単なる「鴨が葱背負ってきた」ように見えてしまう事は十分に考えられます。日本が単独で、パワー増大する中国と釣り合いを取ろうとすれば、いったいどれだけの軍事費が必要になるでしょうか?経済的に落ち目の日本が、赤字国債を何百兆円も積み上げて戦艦や戦闘機を購入すれば、中国に飲み込まれるより先に福祉制度(医療、年金、雇用保険、生活保護)が崩壊してしまうのは明白です。

ところでap_09氏は法輪功を健康増進法と定義しているようですが、たぶん知識がたりないだけでしょう。九龍のスターフェリー乗り場へ行くと、法輪功の会員達による、なかば常設化した宣伝場を実際に見る事ができます。うちの事務所の近くのホコ天にも、ときどき出張してきます。こういっては何ですが、あの人たちは、控えめに言ってもなんかの宗教の強烈な信者さん達に見えます。ネット上には、(信憑性についてはわかりませんが)第二のオウム心理教団という意見もあるようです。

考えてみれば、中国政府から「法輪功の会員でいると逮捕するよ」といわれれば、ただの健康増進法の会員なら、とっとと退会するでしょう。つかまって拷問されたり殺されたりすると知れば、まともな人は、そんな健康増進法集団に残る人なんかいません。そんな状況でも法輪功の会員でいたい人というのは、どんな人なんでしょうか?最初に頭に浮かんだのは、江戸時代の隠れキリシタンです。やはり宗教色バリバリですね。今の時代に、こういう人たちの事をカルト教団というのでしょうか?(カルト教団=犯罪者集団なんて言ってませんので誤解のないように!)

>中国政府が、なぜ法輪功をそれほど危険視するのか全く理解できないが、

中国政府が法輪功を恐れる理由は、聞くところによると、弾圧される前の一時期、中国内では共産党上層部とその身内に多くの「信者」を獲得。しかも教団の規模が中国全土で非常に大きくなってしまい、中国共産党を分裂させるポテンシャルを持つほどの強力な結社になってしまったのが弾圧の引き金のようです。結社や集会の自由が(まだ)無い中国では、結社や集会は政府の許可が必要です。政府から禁止された結社を、政府に逆らって継続する事は、単に法律違反というだけでなく、(私はそれが良いとは思いませんが)反政府活動団体と判断されてしまいます。中国政府が、(私はそれが良いとは思いませんが)いかなる反政府的な団体と個人をいかに強力に取り締まっているかはご存知の通りです。つまり、「まったく理解できない」というのは、法輪功が中国では反政府団体だという事をご存知なかっただけという事ですね?

もう一つ、wikiの法輪功のページには「臓器狩り」というセンセーショナルな記事があります。しかしながらwikiでも言及されているように、中国には大量の死刑囚がいますし、法輪功容疑者を尋問の為に拷問しているのなら尚更、痛んだ臓器をわざわざ使うという理論には合理性が乏しいと考えます。

>日本人が苦しめられた戦時中には、特高というのがあって...中国人のするような残虐な方法は取られていなかった

ap_09氏はどうしても日本人だけは特別だと考えたいようですが、日本人も中国人もアメリカ人も、根っ子のところではあまり違わないようです。それを物語るのが黒太陽731という映画なのですがap_09さんはご存知でしょうか?日中戦争当時、関東軍に所属した731部隊が実際に行った人体実験を題材にした映画です。捕虜をマルタと呼称し、3000本以上のマルタが生体実験の犠牲になったそうです。アメリカはその研究成果が喉から手が出るほど欲しくて、731部隊の細菌研究者の戦争犯罪責任を免責し、最終的に研究成果は米軍の手に渡ったそうです。

仮に中国政府が非道な拷問や、その結果として容疑者を殺してしまう事があったとすれば、それ自体は非難されるべきです。中国でも、拷問が法律で認められているとは思いませんし、まして容疑者が裁判によらずに殺される事は認められていない筈です。しかし、担当者が頑張りすぎて暴走してしまう不幸な出来事は、イラク占領下の米軍や、米政府のアルカイダ関係者への取調べではしばしば発生しているようです。ゆえに、あたかもそれが中国政府の専売特許のように主張されるのは事実に反するしフェアとも言えないと考えますが如何でしょうか。

補足:
間違った情報・意見や、バイアスのかかっていると思われる情報・意見に反論しているだけで、中国政府の行為を正当化したり、中国の肩を持つ事が目的ではない事を繰り返し述べておきます。間違った前提から出発して、正しいゴールにたどり着く事はできません。

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4 Responses to “中国の力が増大する時、どこまでが適正な距離といえるのか”

  1. 11月 12th, 2010 at 11:41
    1

    あのう、何度も指摘しているのですが、私の主張とあなたの主張はかみ合わず平行線です。議論が成立していないのです。

    私から見ると、bobbyさんがばりばりのバイアスなのですが、それもよろしいでしょう。

    という訳で、この辺でお止めくださいませんか?
    私もコメントしないことにしますから。

  2. bobby
    11月 12th, 2010 at 12:28
    2

    (修正有り)ap_09さん、ブログの議論というのは、一方がレスを止めれば終了します。いつでも終了してください。

    >私から見ると、bobbyさんがばりばりのバイアスなのですが、それもよろしいでしょう。

    私の主張のどれがどのように、何のバイアスがかかっているか、個々の件について具体的に、客観情報を含めてご説明頂ければ幸いです。

    私はこれまで、ap_09さんの主張に対して、下記の件について個別かつ具体的に、私が「間違っている」と考える点について説明してきました。

    -人権問題の原因が共産主義であるという点について
    -チベットの暴動鎮圧について
    -人権問題について
    -中国が資本主義的な市場経済に移行している件について
    -法輪功がカルト教団である件について
    -中国人だけが残虐だという点について
    -その他

    ap_09さんが提示される情報の多くは、中国政府と対立している当事者の意見です。中国政府にしろ、政府と対立する側にしろ、すべての利害関係者の主張には、自己の利益を守る為のバイアスがかかっているのは自明です。公平な議論をしようとすれば、両者の意見、利害関与しない第三者の意見も含めて総合的な判断をするのが理想的です。私は中国政府の一方的な見解だけを用いて反論してはいませんよ。

    たとえばチベットについて私が下シンガポールのリークアンユー元首相の意見を引用した時、ap_09さんは、「これは中国の理屈で、チベット人のものではありません」と述べました。

    「中国はチベットを支配して以来、インド的な身分制度や農奴を廃止し、医療施設、学校、道路、鉄道、空港などを作り、少なくともチベットの生活水準を上げてきた」と語ることによって西側メディアの中国批判を牽制した」

    リー氏は中国系とはいっても客家系華人4世で、英語を話す両親から英語教育を受けており、中国共産党との繋がりもありません。故に、ap_09さんが(中国人のDNAは何世代後においても主義・主張に影響すると主張するのなら別ですが)リー氏の意見について「中国人の理屈」というのは間違いといえます。リー氏のチベットに関する意見は、利害当事者の意見ではなく、利害を共有しない第三者の意見として、参考とするべきであろうと考えます。

    チベットの農奴の有無について、(wikiには)ペマ・ギャルポは「多くの地域は遊牧生活の地であったため、そこで「農奴制」が実施されることは不可能である」と述べいますが、彼女の意見はダライラマ側の人間であり、「政治的な意見」と考えます。ではチベットと良く似た周辺国の状況を調べると、農奴はネパール(未だにいる)とブータン(1952年に開放)にもいました。この状況証拠から見て、チベット「にも」農奴がいたと考えるのが、現時点では妥当かと思います。(中国政府側が唱える、農奴と人民解放軍の連携で、の真偽は不明ですが...)

    公式的なチベット人の意見として明らかなのは、ダライ・ラマ氏は米国の報道機関に対して、「武力による独立運動に反対」という事です。彼が一般のチベット人の大多数から慕われていると仮定すれば、それが一般のチベット人の総意に近いのではないかと類推します。

  3. 11月 13th, 2010 at 14:39
    3

    >一方がレスを止めれば終了します。

    それでは、名指しで記事を立ち上げるのを止めて頂けますか?

  4. bobby
    11月 14th, 2010 at 18:49
    4

    シンガポールは中国と同様に、一党独裁の政治体制を敷し、政治体制の定義上は民主主義国家ではありませんが、若者が目指す国の人気トップになっているようです。日本の金融関係者も、国内の社会主義的傾向を嫌い、民主主義国家から非民主主義国家へ移住する者が増えているというのはなんだか印象的です。

    【若者が目指す国、捨てる国】
    http://news.livedoor.com/article/detail/5138858/

    ところで今日は、グリーンゾーンというマットデーモン主演のイラク戦争もの映画を見ました。独裁国家にむりやり民主政権を打ち立てる為に、「大量破壊兵器」という嘘情報を意図的に流した米国の話です。陰謀があったかは別として、結果として大量破壊兵器は無く、イラクは破壊され、暴力と混乱が長期に渡って続く事になり、その原因をつくった米国は、安定した民主主義社会ができあがる前に、無責任にも撤退する気配です。

    中国の非民主政権を無責任に非難する方もいますが、米国式の安易な民主主義の押し付けによって、ベトナムでもイラクでも大量の人間が不要な血を流しました。中国の非民主政権を非難する人は、中国に破壊と混乱と流血が蔓延する事になっても、それは民主主義という「崇高」な目的を達成する為の必要悪と言うのでしょうか。

    目的の為に手段を選ばずというのは、米国のタスキーギ梅毒実験を連想してしまうのは私だけでしょうか。

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