社会主義と資本主義は相容れないか

11月 3rd, 2010 Categories: 1.政治・経済, 3.中国ネタ

チベット問題を通じて、中国の人権についてap_09さんと議論を続けています。まず印象的なのは、世間で盛り上がっているステレオタイプな「反中」意見の問題点を正そうとする事が、「中国礼賛」であると受け止められる事です。最近、似たような意見を耳にしましたが、世の中にこのような風潮があるとすれば、民主主義の趣旨に反するものであり問題ではないかと考えます。ちなみに私は、親中でも反中でもなく、偏見やバイアスをなるべく排して、事実に基づいた合理的な判断を行いたいと願っています。

さて表題の件ですが、78年に鄧小平により改革開放へ転換して30年、私は中国の社会が大きく民主化されたと延べました。その理由として、資本主義と民主主義(政治体制としての民主主義ではない)は表裏一体であり、資本主義的経済体制を維持する限り、中国全体が豊かになれば社会がより民主化されると述べました。

しかしながらap_09さんは、下記のように述べ、中国は社会主義国である事を理由に、私の意見を否定されました。そこで、本意見の問題点を更に批判してみたいと思います。

>社会主義は経済体制として、資本主義とは相容れません。

まずは社会主義の理論的な定義を見てみましょう。「資本主義の原則である自由競争を否定または制限し、生産手段の社会的所有・管理などによって、生産物・富などを平等に分配した社会を実現しようとする思想と運動の総称(wikiより)」とあります。

確かに、中国が上記の国であれば、そもそも論として資本主義制度を導入する事は不可能です。逆に、資本主義制度を導入するようにルール変更した時点で、中国は定義上の社会主義国ではなくなります。

さて、現実はどうでしょう。中国は78年に社会主義経済から改革開放(資本主義経済)に実際に転換しました。その結果、現在の中国では、中国人であれ外国人であれ、(一部の規制業種を除き)自由に会社を設立できます。社会主義の定義で禁止されている「資本」や「生産手段」や「知的財産等」を所有し、「自由競争」により利潤の追求を行う事が認められています。(私が深圳に会社設立した経験に基づく記事はこちら

今度は資本主義の定義を調べてみましょう。「社会に貨幣を投下し、投下された貨幣が社会を運動してより大きな貨幣となって回収される場合、この貨幣が「資本」とよばれる。資本が利潤や剰余価値を生む社会システムのことを「資本主義」という(wikiより)」とあります。

もう一度、現在の中国が持つ経済制度の特徴を列挙してみましょう。これは、私が深圳に設立した会社で、企業活動を通して行っている事ですので間違いありません。
1)私有財産が認められているか? YES
2)私企業による生産が認められているか? YES
3)労働市場を通じた雇用、労働が認められているか? YES
4)市場における競争を通じた需要、供給、取り引き価格の調整、契約の自由が認められているか? YES

さて、結論です。

「社会主義と資本主義は相容れない」は理論的に正しい。しかしながら現代中国の経済制度は、定義上は明白な資本主義である事を示している。資本主義と民主主義は表裏一体である(私の意見)。故に中国が、この経済制度を維持したまま経済発展し、中国全体が豊かで安定した国家になる事により、国内がより民主的な社会体制に移行する可能性を理論的に否定する事はできない。この可能性と、改革開放の30年間で大きく民主化された事実により、この先も富裕エリアの拡大と共に民主化が進む事を期待する事は合理的である。

上記に論理的な破綻や事実誤認があればご指摘下さい。

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9 Responses to “社会主義と資本主義は相容れないか”

  1. 11月 3rd, 2010 at 18:17
    1

    資本主義が何かということは、突き詰めて考えて見ればなかなか難しいところがありそうですし、概念自体もかなり昔に作られたもので、必ずしも今の世界にしっくりくるのだろうかという疑問もあります。

    また、俗に政治経済と言いますが、政治と経済が完全に一体化と言えば、ある程度までリンクしていても、完全にそうでもないような気がします。

    経済的には、自由市場に重点を置く国とそうでない国に分けた方が良いかもしれません。その意味で、中国が自由市場の方にシフトしていることは間違いないでしょう。一方いわゆる資本主義諸国にしても、完全自由な市場競争が行われている国はひとつもなく、何かしら、政府や中央銀行によるコントロールが存在します。

    一方政治的な観点からは、一党独裁である限りは、民主化されたとはとても言えないでしょう。民主化とは、思想信条の自由が認められ、国民により代表者が公平な選挙で選ばれなくてはなりません。その意味で、中国はどうでしょうか?

    政治の民主化と市場の自由化は、ある程度はリンクしているものの、必ずしも一心同体というわけでも無いように見えます。

  2. bobby
    11月 3rd, 2010 at 22:38
    2

    風竜胆さん、コメント有難うございます。

    >一方政治的な観点からは、一党独裁である限りは、民主化されたとはとても言えないでしょう。

    民主主義の定義は「諸個人の意思の集合をもって物事を決める意思決定の原則・政治体制(wikiより)」です。一党独裁の政治体制を強いている国家は、定義上、民主主義国家ではありません。

    ところで、民主主義と民主主義的は意味が異なると考えます。

    ある一党独裁国家が、過去と比較して、現在は「より民主主義的になった」という文章は、理論的に問題ないかと思われます。

    中国が共産党による一党独裁を制度として維持している限り、民主主義国家になる事は、定義上不可能です。しかしながら30年前と比較して現在の政府(社会制度)はより「民主主義的」になったという事はできると思われます。その点については、どう思われますか。

  3. 11月 4th, 2010 at 18:41
    3

    民主化度をどのように測定するかということは、非常に難しい問題です。余談ですが、とても民主的とは思えない国が、国名に民主主義とつけている例もありますね。

    民主化というのは、極めて政治的な概念であり、経済の自由化とは別の概念だと思っています。もっとも、経済の自由化が進んでくれば、他国の情報もどんどん入ってくるので、民主化を求める声は強くなっていくでしょう。

    民主化が進むということは、端的に言えば、政府のやることを公然と批判しても身の危険はなくなるということでしょう。経済の自由化が進んでも、それがお上の掌にある限りは、果たして民主化が進んでいるかどうかは疑問です。

  4. bobby
    11月 4th, 2010 at 23:28
    4

    風竜胆さん

    たしかに民主化度を定量的に測定するのは難しいですね。国家が分裂するリスクがなくなり、政府内部が安定すれば、治安維持の為に言論を制限する必要もなくなると推測しています。

  5. bobby
    11月 7th, 2010 at 11:57
    5

    ap_09さん

    ap_09さんは中国を「共産主義の国」と定義されますが、中国共産党はもはや共産主義の定義から外れている事をどう思われますか?

    共産党という「名前」の党が運営する国は、その党がどんな社会を目指すにしても共産主義国家と言うのですか?(それはおかしいですね)ミッテラン大統領時代のフランスは社会党政権でしたが、当時のフランスは実質的な民主主義的国家(単に定義上の民主主義だけではない)でした。

    一方で、定義上は民主国家だが、それほど民主的でない国の代表選手がロシアです。複数政党により選挙もあるが、強大な軍事・警察国家であり、チェチェン共和国など連邦からの独立に対する弾圧は、中国のチベットに対する姿勢を「穏健」と思わせるような激しさですね。

    政治形態上の民主国家であるロシアと、政治形態上の一党独裁国家であるシンガポールを比較すると、シンガポールの方がよほど実質的に民主主義「的」な社会といえます。

    このように、政治形態や一党独裁の有無や政権運営政党によって、その国が民主的であるか否かを判断するのは簡単ではありません。ラベルによってその国を定義するの方法は、ソ連が共産主義国家を目指す事をギブアップし、米ソ冷戦の終結とともに賞味期限が切れたと言えます。

  6. bobby
    11月 7th, 2010 at 11:57
    6

    (続き)
    中国の少数民族の問題や人権問題をすべて、中国が共産党の一党独裁国家であるから、という理由にこじつけてしまう事で、問題の根本原因を見失っていると考えます。

    ap_09さんが指摘するチベット問題や人権問題の根本原因は、共産党が中国の政府を運営しているからでもなく、一党独裁だからでもない事は、先に述べたように定義上の民主国家であるロシアがチェチェンの連邦独立を武力で激しく弾圧している事で明白です。

    中国がチベットや新疆ウイグルを併合したのは、共産党だったからでも一党独裁だったからでもなく、長大な国境線を持ち、何千年間も外敵からの侵略リスクに対処してきた国の防衛意識が理由であろう事は、中国の歴史が証明しています。

    中国が(外敵侵略リスクの減少した現代においても)チベットや新疆ウイグルを手放さないのは、日本が沖縄を手放さないのと同様に、一度手に入れた領土を手放したくない「民族意識」によるものです。いま欧州は右傾化し、民族主義が高まっています。同様に中国でも、もしいまこの時に民主主義に転換し、複数政党による直接選挙が行われれば、最大多数である漢民族の民族的利益を最大限に追求する極端な政権が(ロシアのように)誕生する可能性があります。そうなれな分離独立活動を行うチベット人や新疆ウイグル人はいまとは比較にならないくらい酷い弾圧を受けるでしょう。

    中国がチベットや新疆ウイグルへ漢民族を大量に入植させているのは、確かに同化政策といえますが、それが共産党一党独裁だからというのは何の合理的根拠もありません。どんな政権であれ、自国領土である辺境地区を貧困のまま放置するのは無責任です。ならば、広大な辺境地を開発する為に、都市部で有り余っている漢民族を入植させて、辺境地区の発展を行う事は、どんな政権であれ合理的な政策といえない事はありません。

    中国が、自国民であるチベット人や新疆ウイグル人へ普通語(北京語)を話す事を求める(民族固有の言葉を禁止するという意味ではなく、学校の授業を共通語で行うという措置)事は、共産党一党独裁でなくとも、どんな政権においても当然行われる事と考えます。中国には多数の民族がおり、家庭や同郷人とは民族語で、学校や会社では普通語を話すのは中国どこでも同じです。中国では誰か知らない人に会うときは「あなたは何人ですか」と普通語で挨拶するのが慣例となっています。それほどまでに他民族国家なのです。ところで英国やオランダ等も近年、自国語をきちんと話せる事を移民の必要条件にしています。一つの国で、全国民が同じ言葉を話せるようにするというのは、欧州の各国政府ですら当然と考えているようです。

    このように中国が現在かかえる問題は、共産党固有の問題でも、一党独裁政権がかかえる固有の問題でもありません。その根底にあるのは、漢民族の利益を追求する強い民族意識が問題の根源です。

    その点で現在の政権は、少数民族を漢民族にくらべて優遇(産児制限や大学進学やその他)する事で、なんとかバランスを保とうとしているように見えます。(私見)

    それともap_09さんは、中国が民主化して共産党の一党独裁が解消するのであれば、その代償としてチベットや新疆ウイグルがチェチェンのようになっても良いと仰るのでしょうか?

  7. 11月 10th, 2010 at 12:54
    7

    コメントする場所間違えました?
    http://blog.livedoor.jp/ap_09/archives/3751386.html

    >漢民族の利益を追求する強い民族意識が問題の根源です。
    中国の政治形態がどう変わろうとも、ますます中国とは距離を置くべきだと感じました。

  8. bobby
    11月 12th, 2010 at 00:53
    8

    ap_09さん

    >>漢民族の利益を追求する強い民族意識が問題の根源です。
    >中国の政治形態がどう変わろうとも、ますます中国とは距離を置くべきだと感じました

    こういう問題は日本でも欧米でも同じですね。ap_09さんや私のような大和民族が、沖縄周辺のシマンチュやアイヌの血を引く人たちの本当の気持ちを知らないだけではないでしょうか。

  9. 12月 3rd, 2010 at 14:23
    9

    京都の大学に通う大学生です。

    今年の夏、縁あってチベットに行きました。
    教授の調査団に随行していたため、現地の官僚の方とお話しする機会に恵まれました。

    そこで統計資料を見せてもらったのですが(具体的な数字は忘れてしまいましたが)、チベット自治区の財政の75%は中央政府からの補助金で賄っているそうでした。

    そのおかげからか、街中を歩いても、どのレストランも求人広告が貼られていて、非常に好景気のようでした。

    もちろん、現在では多くの漢族の方がチベットに流入しているため、現地のチベット族が必ずしもこうした好況を享受できるというわけではありません。まだまだ課題は多いと思います。

    ですが、チベットで中国政府がいろいろと努力しているのを見て、中国を嫌いになることはできなくなってしまいました。

    また、もし中国が多数派の意見が反映される民主主義国家であれば、現在のように多額の税金をチベット族等の少数民族に投入することは、人口の大多数を占める漢族が容認しないので困難になるでしょう。

    その点で、民主主義が絶対的善ではないと思い知らされる旅になったと思います。

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