民主化問題をこう考える

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中国の人権問題について、チベットや内モンゴル等についてどう考えているのか、という宿題をap_09さんより頂いておりました。チベット問題に続き、今回は民主化活動に対する抑圧を「ネタ」として考察します。

この話題の代表選手といえば、獄中でノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏、昨年のノーベル平和賞候補者であった胡佳氏、成田空港で篭城した馮正虎氏がすぐに思い出されます。これら民主活動家の人たちの共通項目は、天安門事件に参加した事を隠そうとしなかったり、民主化問題で中国政府への批判を繰り返した人たちと思われます。

日本や米国や私の居住する香港特別行政区では、人民が政府の、特に民主化政策を公然と批判する事は、それぞれの国内法に違反しません。故に、それらの国では、政府を公然と批判する事で政府から酷い目に会う事は、少なくとも表面的にはない筈です。しかしながら中国では、社会を不安や混乱に陥れる可能性があるような政府批判は、「社会の治安を乱す」為に法律違反となるようです。故にそのような民主活動家は、政府によって強制的に「口を塞ぐ」処理がとられるようです。口を塞ぐといっても、昔の南米のように、政府の暗殺部隊の標的にされるほど酷い訳ではありません。更生施設へ送られて「従順さ」を身に付けさせられるか、スーチーさんのような自宅軟禁になるか、刑務所に入るか、この3つの道があるようです。

さて、政府の民主化政策を公然と批判する事が、どうして「社会の治安を乱す」事になるのか、あるいは国家政権転覆扇動罪のような罪状で投獄されるのでしょう。安全で平穏な日本に住んでいる我々には想像もできない事かもしれませんが、他民族国家であり、13億人の人民の多くがまだ貧困から抜け出せていない中国は、社会的に不安定な状態がずっと続いています。チベットなどの民族問題、改革解放後にはじまった経済格差問題、なくならない地方政府の腐敗問題、軍閥問題などが縦・横・斜めから複雑に入り組んでおり、中国は見た目ほど「一体」ではありません。そこで、不安定な社会的バランスを意図的に崩そうとする勢力の代表選手である民主活動家は、たとえ少数でも感染性の強いウイルス病原体のように、中国政府から忌み嫌われていると考えられます。

ところで中国政府は社会の民主化をどのように考えているのでしょう。これは私の推測ですが、中国政府は経済システムとしての資本主義を社会に導入し、経済の発展の道具にしました。しかしながら、社会の民主化を積極的に行う事を目標にした事は一度も無いと考えます。なにしろ指導者層はみんな、エリート共産党員であり、バリバリの社会主義者である筈ですから。

しかしながら資本主義と民主主義は表裏一体ですから、資本主義が浸透すると、民主的な社会システムも同時に広がりました。資本主義制度によって人民の生活が豊かになった地域(特に沿岸地方)では、人民の民主化要求圧力は高まりました。この圧力を封じ込めたままで資本主義的経済発展は困難です。

経済発展を最優先目的の一つとする中央政府指導部では、経済発展と民主化意識向上の因果関係を、ある時点で理解したと考えます。内部でいろいろ検討を重ねた上で、社会の民主化圧力の段階的開放を「必要悪」として受け入れた筈です。ニュースや出版物の表現の自由、インターネット検閲などを比較すれば、30年前・10年前・5年前・現在で、平時の政府検閲レベルは明らかに違う(だんだん緩くなっている)事が見て取れると思います。これが中国における、結果としての民主化の進行状況です。

今後も中国政府(指導者)は、社会的安定の度合いと経済発展のレベルに応じて、人民が求める民主化圧力を段階的に認め、社会制度を更新して行くと考えます。必要悪とはいえ、それを認めなければ資本主義的発展が安定しないからです。このような理解の上に立ち、中国の経済発展が民主化レベルを今後も継続的に向上させるという事を述べました。

最後になりますが、人権という思想は、私にとって多くのメリットを与えてくれる便利なものと理解ており、これを否定するつもりはありません。しかしながら人権とは、資本主義や民主主義と同様に西欧文化の産物であって、世界共通・時間軸を超えて共通の絶対的な権利だとも考えていません。20世紀から21世紀にかけて、他にもっと良い社会システムや思想がないので、取り得る最善のものとして資本主義、民主主義、基本的人権などのスキームを採用しているに過ぎないと考えます。

要するに、「人は生まれながらに基本的人権を持っている」というのは実際にはフィクションです。日本の江戸時代は、人権という思想がなくても、それなりに人道的な政治を行った時期もありました。つまり人権思想がなければ常に非人道的国家になるという事ではありません。故に今の中国が、仮に日本の人権レベルに遠く及ばないとしても、それを理由に中国を「野蛮人」と批判する事は合理的と言えないと考えます。

追記:
こんな記事を書いていたら、私も有る日、中国で入国拒否される事になるのだろうか。そうなると、お客と共同経営者に迷惑をかけそうだ。

参考:
1)民主主義は魔法の杖か