日本が中国を無視できない理由

10月 7th, 2010 Categories: 1.政治・経済, 3.中国ネタ

To be determinedさんが質問削除の中で、「日本以上に中国人に対する入国制限が緩い国は、どこかにありますか?」という質問への私なりに回答したところ、コメント欄で再度の質問を頂きました。

「ところでビザの件ですが、ご紹介のビザ発行条件を見ると、bobbyさんによれば他国より特に緩いということはないとのことですが、欧米先進国とその他の国の差のようにも見えます。この件に関しては日本は先進国側から離れて、発展途上国よりの態度に変わったという見方もできます...単なる個人の体験例ではありますが、こういうことをどうお考えになりますか?」

かなりの長文になってしまったので、コメント欄ではなく、こちらで以下に回答させて頂きます。

中国(と中国人)が関心を持つ途上国の多くは、ビザ無しであったり、到着後に空港で取得可能であったり、申請条件が非常に緩い(資産証明も所得証明も不要)ようです。これは中国政府の外交力と、相手国政府が期待する経済効果が主因と考えます。

中国(と中国人)が関心を持つ先進国の中で、日本政府は財産証明と所得証明の両方を要求しているが、(紹介したページにある)米・仏・カナダでは所得証明を必要としていないところに着目し、日本の申請条件が他の先進国に較べて緩くない根拠と考えました。

中国人が入国拒否される理由ですが、米国は中国人に限らず欧州以外の国に厳しいようです。たとえばホリエモンも経済犯罪で係争中なので、米国には入国できません。(カナダはOK)たぶん国際テロの対象になり易いという理由で、フィルター条件が非常に厳しいのだと思われます。中国はいまだに社会主義政権で、軍事大国で、産業が急速に発展していますから、欧州各国が警戒する事も理解できます。(欧米の先進国が中国に対して「民主的」とか「人道的」という言葉で非難したり制約条件を持ち出す時には、多くの場合、別の目的を達成する為の道具として使われているのだと思います。)

中国が直面している問題は、日本が明治から昭和にかけて欧米先進国から受けた「問題」に近い面があると感じています。白人主体のロシアは別として、大きいとはいえ黄色人種の東洋の国が、欧米中心(日本と韓国もやっとの事で仲間入りした)の先進国社会へ、かなり強引に割り込んできているのですから、既得権を守る為に、欧米諸国がいろいろな面で過剰に警戒するのは仕方が無いかと思います。

そういう壁を「外交力」で突破する為に、中国は大きな軍事予算を長期的につぎ込んで、陸・海・空・宇宙への軍事力を高めているのでしょう。中国はそういう長期的な戦略を実行できる国だと理解しています。また中国には、それを行うだけの国内資源(国土、人民、資源、技術)があります。中国の指導者(鄧小平)が1970年に改革開放へ国の舵を切り、それから40年間、中国の歴代指導者はブレずに、国の繁栄の為にこの長期戦略を実行してきました。その結果がGDPで世界第二位です。

日本は残念ながら、そういう資源が極めて限られており、憲法で軍事力(敵地攻撃能力、核武装)にも制約がかけられ、輸出産業がなければ国内経済の維持もできません。また、リーマンショック後の日本の税収の落ち込みを思い出してください。日本から輸出産業(と海外の支店や工場から吸い上げる利益)が無くなれば、税収が一気に減り、世界一素晴らしい社会福祉(医療、年金など)は10年以内に崩壊し、まもなく日本は途上国の仲間入りする可能性が極めて高いと感じています。

米国が今後、世界経済を牽引する極端な消費市場に戻ると考えている人は少ないようです。とすれば、中国が世界最大の消費市場を維持し続ける可能性が高い。そういう状況で、すぐ隣国で「領土」や「歴史」問題を抱える日本が、中国に対してとれるオプションの中に、領土や経済で敵対したり、無視する事は、日本の没落を招くだけであり、政治的に困難であろうと考えています。私を含めて、多くの人がそういう日本の未来を望んでいない事は理解していますが、現実は現実として直視しなければ、日本にとって建設的な道は開けません。

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9 Responses to “日本が中国を無視できない理由”

  1. 10月 8th, 2010 at 09:42
    1

    >米国は中国人に限らず欧州以外の国に厳しいようです。
    ニュー・カマーは非白人が圧倒的に多いので、そういうわけではないと思いますよ。

    >中国はいまだに社会主義政権で、軍事大国で、産業が急速に発展していますから、欧州各国が警戒する事も理解できます。(欧米の先進国が中国に対して「民主的」とか「人道的」という言葉で非難したり制約条件を持ち出す時には、多くの場合、別の目的を達成する為の道具として使われているのだと思います。)
    その共産主義政権に対して、日本は欧州と違って警戒しなくて良いというお考えなのですか?また、別の目的とは何だとお考えですか?

    >日本が明治から昭和にかけて欧米先進国から受けた「問題」に近い面があると感じています。
    その当時は本当に人種差別もあれば、人権という考えも日本同様、欧米にも行き渡ってはいなかったのではないでしょうか? たとえば太平洋戦争中は有色人の移民一世は、アメリカでは市民権を取れませんでした。その上で、財産没収の上強制収容所に入れられた日系一世は、アメリカに忠誠を誓うかどうか問われたのです。

    現在欧米先進国では有色人種が専門職、大学教授、研究者等々(政治家はよくわかりませんが)、社会的に高い地位に上っているので、中国人は当時の日本人の苦労に比べるとずっと良い環境にありますね。私も米国で、別段人種差別というのは感じません。
    米国は地域によって違うようですが、affirmative action などのために、都市部ではむしろ逆差別の方が目立つように思います。日本の在日特権、男性差別もこれと似ているところがあるかもしれません。

    >領土や経済で敵対したり、無視する事は、日本の没落を招くだけであり、政治的に困難であろうと考えています。
    言い回しの違いだけで、実は同じ意見なのかも知れませんが、どうもbobby さんの御主張は中国にやたらに迎合すべしのように聞こえてしますのですが、そうではないのでしょうか?

  2. 10月 8th, 2010 at 16:07
    2

    > 日本は残念ながら、…(略)…輸出産業がなければ国内経済の維持もできません。

    これは中国も同じではありませんか?

  3. bobby
    10月 8th, 2010 at 18:43
    3

    ap_09さん

    >どうもbobby さんの御主張は中国にやたらに迎合すべしのように聞こえてしますのですが、そうではないのでしょうか?

    私はいま、日露戦争の日本海海戦で有名な秋山真之の日露戦争回顧録を読んでいます。日露戦争で勝つ為に日本は、数十年の月日をかけて戦争に勝つ為の準備をしてきました。周到な準備と、少しの運により、日本はロシアに勝ちました。願望や気合だけで戦争(外交交渉でも良いですが)に勝つ事はできません。

    尖閣諸島の問題で明らかになったのは、いまの日本にとって中国は、ある意味で当時のロシアに匹敵する潜在的な脅威となっているという事です。それに対処する為の力(軍事力、経済力、国際的影響力)が、いまの日本には十分にありません。そういう日本のおかれた状況を客観的に把握して、その上で、どうするのか(中国の空軍・海軍に正面から対応できるだけの軍備増強をやるのか、核武装するのか、米軍との連携をより強化するのか、NATOへ加盟するのか、それとも中国の軍門に下り中国経済圏の中で香港のようになるのか)日本が実際に実行可能な方法を決め、それを長期戦略にして実行するしかないと思います。

    長期的な戦略を練るときは、悲観的な方が良いのです。一旦、戦略を決めたら、今度は楽観的になって戦略の実現にむけて努力するほかありません。

  4. bobby
    10月 8th, 2010 at 18:48
    4

    >これは中国も同じではありませんか?

    同じ条件ではありません。

    中国には日本に無いもの(地下資源、低賃金労働者、意欲的な起業家)が豊富にあります。中国はリーマンショック前の米国のように、巨大な過剰消費マーケットになる事もできるし、世界の投資資金を集める事もできます。これらは遠い未来の可能性の話ではなく、すでに起こり始めている現実の話です。

  5. 10月 9th, 2010 at 04:35
    5

    こちらには、トラックバックが送れないのですね。私のブログで言及しました。ご返事の意味合いもあります。

    よろしければご覧ください。
    http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/c480d1a5b132884bea995f8e5a613e0f

  6. bobby
    10月 9th, 2010 at 16:00
    6

    memo26さん

    私もリプライの記事を書きました。ご参照ください。
    http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=2777

  7. 10月 10th, 2010 at 06:37
    7

    >長期的な戦略を練るときは、悲観的な方が良いのです。一旦、戦略を決めたら、今度は楽観的になって戦略の実現にむけて努力するほかありません。

    大変思慮深いお考えのように聞こえます。が、

    >日本のおかれた状況を客観的に把握して、その上で、どうするのか・・・、それとも中国の軍門に下り中国経済圏の中で香港のようになるのか)日本が実際に実行可能な方法を決め、それを長期戦略にして実行するしかないと思います。

    よほど良く考えてすぐさま実行し始めないと、あっという間に『中国の軍門に下』ってしまいそうですね。その際、はたして日本は『中国経済圏の中で香港のように』なるでしょうか?既に香港がありますから、第二の香港を日本で作る必要はあまりなさそうです。
    中国にとって、米国を仮想敵国と考えると、日本は地理的に大変おいしい盾であり、米国を直接射程内におさめる足台にもなりますね。
    中国が南シナ海、東シナ海等シーレーンを押さえ、日本に物資が届かないようにブロックすれば、別段一戦交えるまでもなく、日本は干上がって簡単にお手上げです。今のところそれは米国の死活問題に発展するので、米国がそうはさせないよう動くでしょうが。そのとき日本の協力は欠かせませんね。
    ギリシャ援助も世界の海運業を押さえ(ギリシャには世界の主な海運業のヘッドクウォーターが集中しているそうです)、従ってアジア・ヨーロッパを手中に収め、米国を孤立させる布石でしょう。

  8. bobby
    10月 10th, 2010 at 12:27
    8

    ap_09さん

    >既に香港がありますから、第二の香港を日本で作る必要はあまりなさそうです。

    中国は台湾政府と穏当に統合できる場合、香港・マカオのような「一国二制度」で対応しようとしており、香港だけで満足していないようです。

    また日本について、日中戦争で事実上負けた事が誇り高い中国人の歴史的汚点となっています。歴代の中国皇帝に「服属」していた日本は、「もともとわが国の属領」であったという意識が強くあるようですから、いつか中国領に吸収して「中国人民共和国日本特別行政区」にして、同時に歴史的屈辱を晴らしたいという「愛国的」に偏向した願望が無いとは言い切れません。

    中国人の意識の中で「もともとわが国領土」だったと思っているのは日本や朝鮮半島だけではありません。チベットはいまや西蔵自治区になっています。ベトナムに対しては、1979年に中越戦争を仕掛けて強引な「領土奪還」に失敗しています。これらの事を考えると、中国人に「機会があれば領土を取り戻したい」という意欲が継続的に存在する事を、我々は忘れてはいけないと考えます。

    そして中国は国連常任理事国でありアフリカなどの国連加盟国へ大きな影響力を持っています。一旦、人民解放軍に占領された国土は、国連平和維持群によって「助けて」もらえるという可能性は極めて低いでしょう。そうなったら、米軍が単独で、大きな人的犠牲を払ってやって来る事は政治的にも軍事的にも困難です。

  9. bobby
    10月 10th, 2010 at 12:43
    9

    (続き)

    >中国が南シナ海、東シナ海等シーレーンを押さえ、日本に物資が届かないようにブロックすれば、別段一戦交えるまでもなく、日本は干上がって簡単にお手上げです。

    中国が海南島から出撃して南シナ海のシーレーンを海上封鎖すれば、日本と韓国と台湾は干上って経済崩壊するでしょう。中国内の日本企業の資産凍結するだけもかなりの経済的打撃を受けます。

    そういう訳で、日本が中国と正面から敵対したり無視する事は、冷静かつ合理的に考えて、決して日本の為にならないというのが私の意見です。

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