お客様は神様か?

5月 28th, 2007 Categories: 1.政治・経済

三波春男がTVで言った「お客様は神様です」という言葉は、日本のサービス業界へ大きなインパクトを与えた。それも負のインパクトである。

サービス業とはお客へサービスを提供して、その対価として料金を頂く生業である。サービスを提供する側も、受ける客の側も、対等な立場であり、同じ目線であるべきだ。低い儲けにはそれなりのサービス、大きな儲けにはそれなるのサービスを期待するのが基本だと思う。その上で、期待以上のサービスに満足すれば、余分のお金を(たとえばチップとして)支払うとか、こちらも笑顔で「ありがとう」と返せば良い。

しかるに今の日本では、「お客様は神様です」という言葉がお客を甘やかして育て、スポイルしてきた。その結果、金額や利益の大小にかかわらず、つねに最高のサービスを求めるという過度な要求が目立つようになっている。この悪影響はサービス業に留まらず、いまやあらゆる産業へ浸透して、どんなに安いものでも、常に最高の品質を求めるようになった。

これは一見、産業界の努力を促して競争力向上に貢献したように見えるが、その為に企業が投下したコストは莫大である。その生産コストは、しかしどこかでかならす消費者から取り返している。つまりは消費者が莫大なお金を余分に支払っているという事だ。過剰品質の問題は、日本から注文をもらい、中国の現地工場で生産させている中間業者にはよく分かるだろう。

日本の産業を駄目にしたもう一つのインパクトは、日本マクドナルドの「スマイル0円」ではないか。東南アジアを旅すれば気が付くと思うが、安宿や安い食堂では、従業員はみなぶっきらぼうで、良いサービスを提供しない。それが普通だ。笑顔には相当の付加価値があり、それなりのお金を出してこそ得られるものであるとわかる。日本マクドナルドは、その笑顔という付加価値をゼロにしてしまった。そこで日本のサービス業界は付加価値アップの為に余分の努力を強いられている。

最近、ある開業医さんのブログで、耳鼻科のお医者さんが、自分の都合で一方的な要求を求める患者さんについての小言を書いた。すると通りすがりの人からコメントで激しく非難された。予約して診察してもらうのに、どうして30分も待たないといけないの?企業努力が足りないんじゃないの?という意見である。たしかに正論のように聞こえるが、お客の側の正論である。しかし医療サービスには政府による規制業種という側面もあり、来院した患者を正当な理由無く追い返せないそうで、予約患者の間にいれるしかない。そうすると予約患者も待たざるを得ない場合がある。それはサービス提供する側の正論でもある。このような場合には、お互いの事情を考慮して解決策を考えるのが本来の対等な姿だ。

そのような事情を説明しても、「俺はお客だ!神様だ!」と上から目線で居直ったコメントを入れる人を見て、病んだ日本の社会に気持ちを暗くさせられる。

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