市場原理が世界の貧困を解消する

8月 17th, 2010 Categories: 1.政治・経済, 3.中国ネタ

金融日記の藤沢数希は、ネクスト・マーケットの書評記事で、先進国の多国籍企業の多くが途上国へ進出し、その安い労働力を利用する事で住民を豊かにしてきたが、貧しい人々を哀れむ温情主義的な試みの全てが失敗してきたと述べています。この文章を読んで目から鱗がポロッと落ちた感じがしました。思わず私の脳裏に浮かんだのは、広東省の深圳市と東莞市の大きな発展を目の当たりにしてきた20数年に記憶でした。

89年の旧正月にはじめて羅湖国境を越えて深圳国境前の赤土を踏んだ時、そこにはおおきな空き地と、猥雑なバラックの店に群がる人々の姿があるだけでした。羅湖国境前から長距離ミニバス(マイクロバス)に乗り、東莞市を通って広州市までの道程の大半は高速道路ではなく、綺麗に舗装された国道でもなく、赤土が広がる一般道路を5時間くらいで走破しました。その翌年の旧正月に広州旅行した際は、羅湖国境前から鉄道で広州まで3時間ほどで着きましたが、ボロボロの客車を引くディーゼル機関車でした。それから20年経った今、深圳と東莞はどうなったでしょうか?


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羅湖国境前にはシャングリラホテルが建ち、国境ビルの下に地下鉄電車が通り、市内から郊外にかけて、いくつもの地下鉄が建設ラッシュを迎えています。羅湖から地下鉄で一駅の国貿駅周辺は、「ここは香港か?」と目を疑うほど、高層建築のオフィスビルやホテルが建ち並び、欧米の高級ブティックが軒を連ねています。深圳から広州までのだだっ広い荒地は、広深高速や莞深高速などの高速道路網でつながり、深圳から広州までを1時間程度で結ぶ新幹線が開通し、深圳市と東莞市は中国沿岸都市の中でも特筆すべき発展をとげました。

その発展の原動力となったのが、(一部の人達には蛇蝎のように嫌われている)市場原理とグローバリゼーションである事は間違いありません。日本・台湾・韓国・香港の企業が、このエリアに無数の進料加工工場を建て、単純労働の組み立て作業に従事するワーカーを20年以上に渡って「搾取」した結果、工業区の周辺に街が出来、それがどんどん成長して、ビルが建ち並ぶ大きな鎮(日本の地方都市に匹敵する規模の地方自治体単位)が、東莞の代表的な鎮だけでも長安、虎門、厚街、常平、石龍などに出現しました。

そして今の中国は、いわゆる3K的な職種である工場ワーカーの成り手が急速に減少しています。多くが出稼ぎである工場ワーカーの内陸部出身地が急速に発展をはじめたので、若者が(楽に稼げる)地元のサービス業に吸収されているからです。

途上国の政府(あるいは地方政府)が、長期にわたる意図的なワーカーの賃金抑制を行わない限り、会社は労働者を奪い合うので賃金は年々上昇し、チープレイバーの国が消費市場へ進化するのは時間の問題だと思われます。

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