孫氏の「光の道」提案は、トリックに満ちている

孫氏と夏野氏と池田信夫氏による対談は、孫氏の130ページに及ぶプレゼンによって、光ファイバの必然性については、孫氏の圧倒的な勝利で終了したとの見方が大勢を占めているようです。私もこの対談をUSTREAMで見ましたが、孫氏の提案になぜ下記のような疑問を提起しないのか不思議に感じています。

1)20年でトラフィックが100万倍になるので電波では間に合わないという結論:
インターネットの利用帯域が20年で100万倍になるという推定は有り得るかもしれないが、それは基幹ネットワークの話である。ひとつの基地局にぶらさがる利用帯域が100万倍になれば、既存のどんな技術を用いても吸収できない。

2)主要な利用場所が屋内であるという前提:
100万倍になる利用帯域の「利用場所」について、屋内87%、屋外13%という数字を提示した。しかしながらこれは、過去のアプリをベースにした数字である。インターネット利用が移動端末へ急速に移っている現在の動向を見れば、未来に提供されるアプリの「利用場所」が屋外へどんどん移る状況は容易に推測できると考えられる。

3)電子教科書と電子カルテの無償提供で光ファイバの利用促進するという提案:
孫氏が「光の道」を有効活用するアプリケーションとして、電子教科書と電子カルテの無償提供を提案しているが、

 電子教科書のユーザーは学校に集中する。家庭での同時アクセス・ユーザーは数人である。電子カルテのユーザーは病院へ集中する。開業医での同時アクセス・ユーザーは数人である。

電子カルテと電子教科書アプリの利用帯域を吸収する光ファイバは、学校と病院(開業医を除く)に設置すればよく、同時利用ユーザー数の少ない家庭では現在のADSLでも十分でしょう。

孫氏のプレゼンは、20年でトラフック100万倍と屋内利用が87%を固定パラメタとする事により、池田氏と夏野氏とおよび対談を見ていた視聴者の目を眩ませて、そこから先のな話(100万倍のトラフィックがどこに発生し、それは電子教科書と電子カルテで可能)の議論を巧妙に避けているように感じられます。

捕捉:
全国家庭への光ファイバの必然性については懐疑的ですが、回線会社を孫氏が経営する(あるいはソフトバンクがNTTから買収する)事については、私は肯定的です。孫氏のようなベンチャー経営のプロに、日本の通信業界を牽引してもらい、日本の経済を発展させる事に賭けたい気持ちが大きい。

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5 Responses to “孫氏の「光の道」提案は、トリックに満ちている”

  1. 6月 27th, 2010 at 09:58
    1

    >100万倍のトラフィックがどこに発生し

    正にここに議論を尽くすべきなのに、
    「全国にあまねく光を敷設する以外に救国の道なし」
    という馬鹿な議論になっていますよね。

    おかしい。貴方の意見こそが正論だと思います。
    我が意を得たりという思いです。

  2. Tetsuzo Matsumoto
    6月 27th, 2010 at 11:47
    2

    アゴラの私の記事「光の道と…(まとめ)」のコメント欄をご参照ください。

  3. ステゴザウルス
    6月 27th, 2010 at 12:34
    3

    ブログ主やはんてふさんの仰るようにバカな前提が一人歩きしてるのと、孫さんの坂本龍馬気取りのやり方が受けてるだけで、中身を真面目に検討すると頭から拒絶されるのは明らかにおかしい。ましてや孫さん自身は光ファイバーの敷設に責任を持とうとせず国やNTTにやらせようという卑怯な態度であり見過ごせない。彼自身が自分でやるならそれはとても良い事だが。

  4. bobby
    6月 27th, 2010 at 16:50
    4

    はんてふさん、ステゴザウルスさん、
    私は孫氏の提案が馬鹿げていると思いません。だからこそ、このような記事を書き、当事者が議論を深めて頂たいと考えています。

    松本さん
    ご指摘のブログ記事は、冒頭のUST評価以外の部分では、今のところ違和感を感じるところはありません。もう少し議論が深まって具体的になるのであれば、その時にまたコメントさせて頂きます。

  5. maimai
    6月 30th, 2010 at 18:45
    5

    通りすがりですが、こちらに対して疑問がありましたので。

    1について。
    基幹のある位置が100万倍になったと仮定した場合でも、そのさらに下位は100万倍になっていないだろうということですかね?
    現在の下位トラフィック値が1で基幹システムに100ほど接続された(=基幹トラフィックは100)と仮定した場合、機関トラフィックが100から100倍の10000になれば最低でも一か所以上の下位トラフィックが100倍になっていると思うのですが、これは誤りでしょうか。
    また、この吸収できないという状況において、電波では間に合わないという結論はどのように変更されるべきだとお考えでしょうか。

    2について。
    屋外へどんどん移る状況は容易に推測できる、とありますが、人の行動をそこまで変える既存の電子機器やアプリケーションは現在までに開発されているでしょうか。
    個人的には、車や電車などの移動機械、WalkmanやiPodといった電子機器によって、人の生活が便利になったとはいえ様式がそこまで変化したようには思えないのですが、どのようなビジョンで外にどんどん移るとお考えでしょうか。

    3について。
    電子教科書が学生のものと制限するのはなぜでしょうか。
    また、電子カルテも同様に医療従事者や患者のものと制限するのはなぜでしょうか。
    いずれもその範囲である必要はなく、それを使ったサービス次第で利用範囲は大きく拡大するものだと思います。
    例えば、WiiFitと電子カルテ、さらにはフィットネスクラブを繋げるようなサービスとか。

    もっとも、
    >池田氏と夏野氏とおよび対談を見ていた視聴者の目を眩ませて
    こちらには大きく同意します。
    そこに疑問をもたないのは孫氏だからという、専門家に対する後光効果のような過信があったと思います。

    単に疑問の鉾先に『?』と思ったまでですので。

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