政治が招いた口蹄疫禍

10年ぶり、2度目の口蹄疫禍が宮崎を襲っています。井上晃宏氏はアゴラで、口蹄疫殺処分は、食肉輸入の非関税障壁を維持することが目的であると述べています。口蹄疫の予防や感染拡大阻止にはワクチン接種が有効です。ワクチン接種すると、口蹄疫清浄国でなくなり、非清浄国である南米からの安価な畜産品が輸入されるので、国内畜産業者を保護する為に、汚染地で口蹄類を大量に殺処分する事が行われているのだそうです。口蹄疫清浄国が畜産業化の意思であり、それを自民党政権と官僚が維持してきたという事でしょう。

ところで井上氏も引用した人獣共通感染症の宮崎で発生した口蹄疫によれば、口蹄疫ウイルスは生物外に排出された後も数週間以上死にません。(ウイルスは生物ではないので死ぬという表現は妥当でないかもしれません)

「口蹄疫の最大の発生地域に日本は囲まれています。そして、口蹄疫ウイルスは物理的処置に非常に抵抗性が強いウ イルスです。藁に付着した口蹄疫ウイルスは夏では4週間、冬では9週間生存すると いわれています。家畜の飼料や 敷き藁として輸入される稲藁や麦藁に付着して入ってくる可能性もあるわけです。台湾や中国との人や物の往来を考えれば、これまで日本に口蹄疫が入ってこなかったのは、むしろ幸運だったのかもしれません。今回と同様のことは これからも起こりうるものと考えるべきです。」

宮崎に口蹄疫が再来し、山内一也東京大学名誉教授が予想した通りになりました。口蹄疫ウイルスの特性、ワクチンの存在、そして日本周辺の状況を考えると、口蹄疫清浄国である事を長期的に維持する事に合理性はありません。過去からの約束を守る必要のない民主党政権は、この機会に是非、ワクチン接種後の殺処分を止めて、口蹄疫防止に踏み切るべきです。

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9 Responses to “政治が招いた口蹄疫禍”

  1. 5月 30th, 2010 at 22:08
    1

    本文中引用の「口蹄疫ウイルスは物理的処理に強い」の部分ですが、口蹄疫ウイルスは、pH変化に弱く、pH6.5以下の酸、 pH9.6以上のアルカリにさらすと失活するそうです。
    逆にアルコールには強いです。(これは、ウイルスの表面構造に原因します。)(参考:http://www.d1.dion.ne.jp/~ckahongs/K39.htm)
    食酢(pH2-3) が、現地で使われていますね。熱処理も効果があるそうです。

    外界で生き延びる力はかなり強く、風にのって長距離を移動することも在ります。人の体について伝播することもあります。

    ワクチンをうった牛を処分することについてですが、ワクチンをうった後の牛が無症候性キャリア(症状なく、見た目普通で、ウイルスを撒き散らす)になる場合があり、それを完全に鑑別するのが難しいという問題があります。

    ワクチン接種後の牛では、感染したかどうかの検査として、NSP-ELISAという検査を用いますが、無症候性キャリアの場合、感度が90%、無症候性キャリア牛の10頭に1頭見逃す計算です。
    この牛を出荷・移動すればウイルスを散布することになりますし、種牛で精液を提供すれば、精液にもウイルスが入っています。

    どのくらいの割合でスルーされてしまうかはわかりませんが、今回の宮崎の流行も、はなばなしく症状が出ている牛や豚を宮崎を通過させたわけでもないのにこの有様ですから、1頭でもそういう牛がいるとかなりの影響がでると思われます。

    日本の畜産業が壊滅しても、輸入できるからよい、と言い切れるのであれば、ワクチン接種後の牛をそのままにしておいてもいいのかな、と思います。

  2. bobby
    5月 30th, 2010 at 22:58
    2

    foobirdsさん

    >無症候性キャリアの場合、感度が90%、無症候性キャリア牛の10頭に1頭見逃す計算です。

    感染力の強いウイルスである事から、ワクチン接種後、その地区での感染が沈静化した後に、各畜舎内で抗体の無いモニタ用の口蹄類を混ぜて飼い、その動物に抗体ができるかで、キャリアの有無を確認できるかと思います。牛のキャリア期間は最長で2.5年だそうです。キャリアを特定できない場合、畜舎内の牛全部を、その地区内で消費すれば良いのではないでしょうか。

    また、「これに対して,豚はキャリアーにならないとする見方が一般的である」そうなので、豚の感染についてはワクチン摂取は積極的に行って良いのではないかと考えられます。

    輸出入で見た場合、日本は畜産の消費地としての正確が強い国です。国内消費目的の国内畜産と、海外からの輸入に支障がなければ、清浄国である必然性はないと考えます。

    如何でしょうか。

  3. 5月 31st, 2010 at 03:03
    3

    >畜舎内の牛全部を、その地区内で消費

    これが果たして現実的かどうかということがまず一つあります。
    いわゆる大消費地を含むところで大規模に農業をやっているわけではないとおもうので、食べきれない気がします。

    また、確か牛の場合、たとえば宮崎で生まれた幼牛を松坂でそだてて、松坂牛として出荷、といったように、一箇所で飼育が完結しないはずです。
    もしそのなかに無症候性キャリアがいた場合、長距離を移動させるリスクがあると思います。

    豚にワクチン接種をした場合の反応や、どのくらい感染予防効果があるかに関してはあまり調べられていないようです。
    不活化ワクチンなので、接種した豚にちゃんと免疫がつくかということにも不確定要素があります。

    また、日本の農場には全国どこでも、ある確率で口蹄疫ウイルスが存在するということになれば、問題は国内だけではすまないのでは無いでしょうか。

    お隣韓国は、口蹄疫流行を沈静化させて、清浄国復帰を果たしたいと願っていましたが、つい最近また流行を発生させて、清浄国復帰が延期されています。

    JETROのHPにある統計では、食肉だけの統計は出ていないものの
    2008年の韓国の農林水産物の輸入額24,526(100万ドル)輸出額4,352(100万ドル)で、ここも国全体としては、食料の生産というより消費が多いところです。

    2007年くらいから働きかけを開始し、2009年には日本向けの豚の輸出再開、と順調にきたものの、また2010年1月に、感染豚を出して、対米輸出解禁が無期限延期になっています。
    今年の感染流行では、不足している消毒薬(ビルコン)を軍隊までだしてかき集めています。

    なんで韓国は、そんなにがんばって清浄国リスト復帰を目指しているのでしょうか。牛の対米輸出をしたいかららしいのですが、それだって防疫にかかるお金>輸出額となったら損だと思うのです。

    その辺の経済的な話はかなり複雑になりそうですが、韓国に程近い九州で爆発的流行があれば、向こうにとっては迷惑な話かも知れませんね。

    国内の畜産業者保護、という観点もありますが、こういった流行の防疫体制がきちっとしてない国、というレッテルが貼られてしまうのは、多方面に影響がある気がします。

  4. bobby
    5月 31st, 2010 at 10:04
    4

    >これが果たして現実的かどうかということがまず一つあります。

    自分の畜舎にキャリアがいる場合の対処法は、検討の余地がありますね。

    >確か牛の場合、たとえば宮崎で生まれた幼牛を松坂でそだてて、松坂牛として出荷、

    キャリアがいる畜舎では、それは禁止という事ですね。

    >豚にワクチン接種をした場合の反応や

    下記文献を参照しました。
    http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/japan/murakami.html

    >問題は国内だけではすまないのでは無いでしょうか。

    10年前と今年の口蹄疫が九州で発生したのを偶然と考えるのは間違いでしょう。九州と韓国は既に経済圏を共有しています。また、西日本と中国は人の往来が急速に増大しています。口蹄疫ウイルスの特性を考えれば、国内だけの対策で清浄国を保つのはもはや困難だと考えます。
    【中国の口蹄疫発生】
    http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/china.html
    【韓国の口蹄疫発生】
    http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/korea_2010.html
    【台湾の口蹄疫発生】
    http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/taiwan_2009.html
    【2005年の東アジアにおける発生】
    http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/location_EastAsia2.jpg

  5. 5月 31st, 2010 at 18:11
    5

    韓国は、今後これまでと同じように、再度ワクチン未接種清浄国に復帰する試みを続け、それが成功した暁には、米国をはじめとする海外に畜産物を輸出しようという計画を続行するでしょう。

    もし、そのときに日本がワクチン接種を恒常的におこなって口蹄疫の感染をコントロールしている状態(汚染国、あるいはワクチン接種清浄国)であったら、これは国際問題になりえますね。

    なぜなら、口蹄疫を予防するためにワクチン接種を恒常的に行っているということはつまり、そのような地域では口蹄疫が風土病化しているということだからです。

    >九州と韓国は既に経済圏を共有しています。また、西日本と中国は人の往来が急速に増大しています。

    と、いう状況で、韓国がワクチン非接種清浄国をめざすのであれば、当然

    「日本が口蹄疫を撲滅してないから、韓国がいつまでたっても清浄国になれない=畜産物が輸出できない!」
    「近所にウイルスが跋扈している地域があるなんて、迷惑なんだよ!」

    という抗議が来てしまうのではないでしょうか。

    ワクチンが口蹄疫ウイルスを殺すものでもなく、口蹄疫ウイルスの感染を100%予防するものでもないことはわかっています。

    全世界で口蹄疫が当たり前のように風土病化してしまえば、まぁ、どこか一つの国だけ口うるさく言うことも無いんでしょうが、(共生??)
    ワクチンである程度、重症の患畜がすくなくなればいいかなみたいな。
    専門家たちはこういう道には行かないみたいです。あたりまえだと思います。

    >口蹄疫ウイルスの特性を考えれば、国内だけの対策で清浄国を保つのはもはや困難だと考えます。

     もちろん隣接地域だけでなく、かなり広い範囲での連携を必要とすると思います。

  6. bobby
    6月 8th, 2010 at 11:51
    6

    foobirdsさん

    下記記事をご参照ください。
    http://nibs.lin.gr.jp/tayori/tayori508/tayori508.htm

  7. 6月 9th, 2010 at 10:32
    7

    Bobby さん
    山之内一也氏の記事を拝読いたしました。

    >現在の技術により自然感染と区別可能なマーカーワクチンの開発はそれほどむずかしいものではない。また,上述のほかの欠点を克服することも技術的に可能と思われる。
    というのは山之内氏の意見で、今現在一般予防薬として使用に耐えるワクチンという意味ではないようですよ。これ読んでると、だから研究開発のための予算ちょーだいと訴えているようにも聞こえます。

    http://www.foot-and-mouth-disease.com/Binaries/68_30720.pdf
    オランダは2001年のイギリスからの流行の時に「緊急ワクチン」という形で使用し、ある程度”流行時の広がり“が防げたとしています。おそらくこの経験をもとにOIE もヨーロッパでは2006年から流行時の緊急ワクチンが認められたのだと推察しますが、あくまで補助的な使用で、根本的解決ではなさそうです。
    オランダの経験でも感染個体発生地点から1-2キロまでの範囲の動物はすべて殺処分、ワクチンは感染動物から2キロの地域で接種し、これらのワクチン接種動物も後にすべて殺処分しています。こうしてもワクチン防波堤の外側に感染個体が発生したようですし、殺処分のみでもワクチン投与地域でも、清浄状態再認定までの期間は1年で、両者同じです。
    と言っているこの報告は、獣医学製薬会社(Intervet.com)からなので、製造者でさえ、この控えめな表現ですから、ワクチンの現状については推して知るべしです。

  8. bobby
    6月 9th, 2010 at 10:41
    8

    ap_09さん

    >山之内一也氏の記事を拝読いたしました
    読まれた記事が、上記コメントで紹介た「口蹄疫との共生を考える」であれば、山之内氏が大学での講義内容を簡単にまとめた人獣共通感染症シリーズ下記の記事もぜひご一読下さい。         

    【人獣共通感染症 第116回追加 口蹄疫との共生】
    http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/05_byouki/prion/pf116.htm

  9. 6月 10th, 2010 at 06:11
    9

    bobbyさん

    参照致しました。これはさらに昔の2001年の記事なので、同じです。山之内先生はあくまで将来有望な技術の開発について「可能性」をおっしゃっているだけです。

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