電子カルテは道具である(2)

電子カルテの問題には、病院全体の管理システムの問題もいろいろと述べられています。また、Mixiの医療とITコミュには、こんなトピもあります。しかし、病院管理システムの問題は、医療業界の特別な問題に起因しているのでしょうか。

最初からシステム化されていない病院では、受付であれ、医療事務であれ、診療業務であれ、人間の担当者を中心として業務フローや書類がつくられます。その後で、より少ない担当者で、より多くの仕事をこなせるように現場レベルでの改善が行われます。ところが現場担当者の実作業の効率を改善する度に、管理部門や他の部署との情報の整合性は減少傾向が増し、結果として組織間での事務書類の負担はより増大します。そして最後は事務作業が手に負えなくなって、なんとかする為に病院管理システムの導入を検討します。

病院管理システムを含めて業務管理系のほぼあらゆるシステムは、リレーショナルデータベースというデータを管理する道具を利用します。これは大量の情報を管理する為の非常に強力な道具である反面、柔軟性が低くて融通が利きません。予め、必要とされるデータの定義(長さや文字の種類)や情報の因果関係をきちんと決める必要があります。そしてデータベースの構造は、業務フローと密接に関連します。病院管理システムのデータベース設計をする事は、病院の業務フローを設計する事とほぼ同じ意味になるほどです。

システム導入前に構築されていた、人間を中心とした業務フローを、システムにあわせて変更する事ができれば、(導入するパッケージソフトに問題さえなければ)その病院のシステム導入は比較的スムーズに終了するでしょう。しかし、システム導入は現場の担当者の(事務作業以外の)作業効率を改善しませんし、むしろシステム導入前よりもっと多くの担当者を必要とするでしょう。何故なら、これは事務作業を軽減する為のシステムですから、「より少ない担当者でより多くの作業を行う」事が目的ではありません。基本的に、管理系の生産性アップと、現場の生産性アップを、同時に行う事はできないのです。

多くの病院では、どんなに優れたパッケージソフトでも、それに合せて組織や業務フローを変更する事には現場担当者からの非常に大きな抵抗があるので、その方法は選択できません。その結果、管理系ソフトであるのに、現場の作業効率を維持する目的で、「現在の業務フロー」に従ってシステムの改造を始めます。するとどうなるでしょうか?管理系の生産性アップと、現場の生産性アップは、本来は矛盾した課題です。それを同時にやろうとすれば、システムは見るも無残な改造結果となり、プロジェクトが頓挫するか、バグだらけで使えない「出来損ない」が生まれるでしょう。

まさに、二兎を追うもの一兎を得ず、となります。

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