企業文化と効率性

3月 8th, 2006 Categories: 1.政治・経済, 3.中国ネタ

海外で生活しているとある事に気づきます。日系企業駐在員と欧米企業駐在員の生活レベルに、大きな差がある事です。たとえば家。
日系企業では、銀行や大手商社でもないと、駐在員が70万円もするような家賃のアパートに住む事は稀です。
普通は家賃1500~3000USDです。しかし、香港島のミッドレベルや、上海の浦東にある金橋には、
家賃6千USDくらいする欧米人向けマンション群がいくつもあります。このようなレベルの違いは、どこから来るのでしょうか?

日本企業の収益が、欧米企業にくらべて極端に少ないとは思えません。何倍もの差は、何処から来るのか?収益にそれほど差が無いなら、
海外へ派遣する駐在員全体への予算にも何倍もの差はない筈です。同じくらいの予算でありながら、このように差が生まれるのは何故か?

 

【同じ予算を分配する人数の差(分母が大きい)】

最初に考えたのは、駐在員の数に差があるのではという事です。日系の商社やメーカーへ行くと、会社規模に応じて、
多数の日本人駐在員を目にする事ができます。組織の中枢にある管理職ポストは、ほぼ日本人で埋められています。一方の欧米企業では、
(私が目にした限りにおいてですが)現地のトップだけが本国から派遣された駐在員で、
あとの管理ポストは現地人で占められている事が多いように思います。駐在員関係の予算が同じくらいなら、割り算の分母(駐在員数)
が少ない方が、駐在員一人当たりが使える予算は多くなります。現地駐在員数が何倍も違えば、
何倍もの生活レベルの差が生まれる事は容易に想像できます。

 

【組織の現地化】

駐在員数において、欧米企業と日系企業は何倍もの差が生まれている事を書きました。この差はどこから生まれるのでしょうか?
日本的経営にあっても、人件費を削る事は必須項目に含まれていると思われます。しかも、日本から連れてくる駐在員(その多くは家族帯同)
はよりコストが高い。ある試算によれば、駐在員1名(とその家族)に要する経費は年間で1000~1200万円くらいを要するそうです。
この金額があれば、優秀な現地管理者を3人から6人くらい雇えるでしょう。だから、
現地の日本人総経理も好んで駐在員を呼び寄せてはいないと思いますが、気がつくと多数の日本人駐在員が膨れ上がり、
社内の管理職ポストを埋めているという現実があります。ところが欧米企業では、新しい会社を現地で立ち上げた場合、早ければ数ヶ月、
遅くとも1-2年のうちに本国からの支援チームは立ち去り、あとは現地に残った総経理(本国から来た駐在員)と、
現地で雇用した管理者だけで会社の運営を行っているようです。欧米系企業は、駐在員の数が少ないというのは結果であって、
その原因としては会社組織の現地化の度合いが非常に高いという事が言えるでしょう。

 

【組織文化の違い】

欧米企業で、組織の現地化度合いが高いのは、欧米人しか知らない秘密の理論でもあるのでしょうか?逆に、なぜ日本人総経理は、
その真似ができないのでしょうか?実は最近発見した事ですが、日系と欧米系の現地企業では、
以下のような企業文化の差があるのではないかと推論します。

欧米企業:一般社員の雇用は職能別に行い、仕事の境界線が明確な組織(部門)をつくり、
責任の範囲をはっきりさせて決まった仕事しかさせない。

日本企業:一般社員の雇用は職能別に行わず、柔軟な組織(部門)をつくり、
責任の所在をはっきりさせず出来る事はなんでもやらせる。

この違いが、組織と人との係わり合いに大きな差を生み出して。日系企業の組織がと欧米系企業の組織と「似て非なる」
ものになっているのではないかと良く感じています。(日本側で会社規模がかなり大きい場合は、
必ずしも上記の条件が当てはまるとは限りません)

 

【欧米系企業の組織構成】

トップダウン指向が強い欧米型企業では、経営陣の意思を実行するのが組織であるとの観点から、
現地雇用の管理職でも適正な資質を求める事が多い。本国からの支援社員は、現地雇用された管理職へ、管理業務の教育・指導を行います。また、
現地人管理職の業務範囲と責任/権限は、本社側の組織に準じて明確になっている場合が多いので、
支援社員からハンドオーバーされる内容はマニュアル化されていおり、組織の立ち上がりが早いようです。

本国からの支援社員が帰国した後は、総経理独りだけが長期に駐在する事になり、あとの組織は全て、
現地人管理職が運営と管理を行う組織となります。

 

 

【日系企業の組織構成】

日系企業(特に製造業)では、管理部門の人件費は経費(利益を生まない出費)との意識が強いので、優秀だが(現地社員としては)
高給な人を管理職に採用する事に最初から強い心理的抵抗があるようです。従って、会社立ち上げ当初の管理職は、日本からの支援社員で埋まり、
その下に低学歴・低スキル・低賃金のアシスタント社員が入る構成になる場合が多いと思われます。

 

しばらくすると、アシスタントの業務スキルが向上し、その中でパフォーマンスの良い人をグループリーダーへ昇格させます。
低学歴であるので、業務レポート作成能力などの欠如から、管理職へ上る事は難しく、業務責任は負うが権限は無い現場責任者に留まります。
従って、日本人総経理への報告は、依然として日本人が行わざるを得ず、日本からの支援スタッフは永続的な駐在員に置き換わって、
この組織構成が永続的に続きます。

この状態で営業が伸びてゆくと、増大する業務を管理する為に、更なる日本人駐在員の増員が予想される事になります。

 

 

【どちらの組織が合理的か?】

どちらが優れているのか?これは一概には言えない問題です。小規模な組織で運営可能な場合には、
日系企業型の組織は管理組織の人件費を低く抑えられるというメリットがあります。しかし、これから伸びてゆく事が明らかな会社や、
現在伸びている最中の会社にとって、日系企業型組織はキーパーソン(日本人管理職または現地人リーダー)
がボトルネックになり得るという弱点があります。

日系企業型組織では、1人の日本人管理職またはリーダーに多くの仕事が集中する傾向があります。平時はこなせる仕事も、
各課で通常以上に仕事量が増えたときや、業務システムの新規導入・システム入れ替え時などを行うと、
これらのキーパーソンがボトルネックとなり、仕事が停滞して流れなくなくなるという現象が見られます。

この場合、ボトルネックを解消するためには、日本から支援社員を緊急に派遣してもらう他に、対処の方法がない場合が多いと思われます。

欧米企業型組織では、キーパーソンは各課に分散されていて、もともと仕事を処理する容量には余力がありますから、
残業などで対応します。それでも足りない時には、アシスタントを増やす、他課のリーダーを一時的に借りて支援させるなど、
対処法はいくつも考えられます。

 

【どちらの管理組織が生産的か】

日系企業型管理組織では、一般的に権限委譲が少ない(上の人間が権限が独占している)状態が多い。欧米系管理組織では、
各人の責任と役割が明確になっており、多くの権限が下位管理者へ委譲されている場合が多いと思われます。これらの状況を考えながら、
下記の図をご覧下さい。

 

Facebook Comments
Tags:
Comments are closed.