中国の会計ソフト事情2006
私は今、上海にある某日系企業でシステム導入の為のコンサルを行なっていますが、
中国の会計ソフト事情を大分勉強しましたのでご紹介します。自社で会計ソフトを開発される方、
マイナーな会計ソフトの使用を検討されている方、または海外の会計ソフト導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
中国で会計ソフトを使用する場合、政府(財政局)に承認された会計ソフト以外は使用できないという都市伝説がまかり通っていました。
また、金蝶(チンディエ)か用友(ヨンヨウ)という2大会計ソフトのどちらかを使用しておれば、
簡単な申請で企業は会計ソフトを使用できるという伝説もありました。これは真実なのでしょうか。弊社では昨年10月に、
中国内で使用する為の会計ソフトを開発しました。それを客先へ導入する仮定で、以下の内容が判りましたのでご紹介します。
今回調査したのは下記7箇所の財政局です。
- 上海市闵行区財政局
- 上海市奉賢区財政局
- 上海市徐汇区財政局
- 浙江省寧波市鄞州区財政局
- 蘇州市呉中経済開発区財政局
- 江蘇省蘇州市蘇州新区財政局
- 東莞市沙田鎮財政局
●財務局ではどのような内容を審査していたか?
審査内容は大きく分けて3つあると考えています。
- その企業が中国の会計基準に合致しているか?(会計・出納の有資格者の確認、
勘定科目の確認等) - 会計ソフトを使用する会計係・出納係が会計ソフトを使いこなせるか?(3ヶ月の平行稼動と双方の帳票を比較確認)
- 会計ソフトが中国の会計基準に合致しているか?(出力帳票フォーマットの確認)
上記1については、当該企業の会計環境を審査しているのだと思います。
上記2について、会計係、出納係は中国政府が承認した有資格者ですが、
昔の教育内容や資格審査の内容は、会計ソフトを前提としていなかったのではないかと(個人的に)推測しています。そこで、
手帳簿から会計ソフトへの運用へ変更するにあたっては、その企業の会計係と出納係が、
会計ソフトを使用する能力があるかどうかを審査して確認する必要があったのではないでしょうか。
上記3については、多分に国産ソフト産業の育成と保護政策であったように思います。
●現在でも会計ソフトは承認が必要か?
不要です。
財政部からの告知に基づき、2004年にルールが変更されました。各地の財政局が定めたフォーマットの用紙か、
それと等しい帳票に印刷されて提出される限り、会計ソフト自体の承認は不要。但し、提出する用紙のフォーマットは、
各地の財政局により微妙に異なっている事は確認していますので、会計ソフト側でそれに対応させる事が必要です。
これとは別に、2004年度から上海では、財政局へ提出する書類の電子化を行なっているようです。
印刷帳票と電子ファイルの両方の提出が必要ですので、会計ソフトで対応しなければなりません。電子ファイルの仕様については、財政局または
上海财会信息技术研究会
へ問い合わせれば良いかと思います。
●現在でも手帳簿から会計ソフトへ移行する為の承認は必要か?
場所(財政局)により用不要が分かれます。
財政部からの告知に基づき、浙江省寧波市、江蘇省蘇州市の
(上記リストの)財政局では、2004年にルール変更を行い、
承認手続きを廃止しました。推奨される方法は、社内で3ヶ月の平行稼動を行い、
社内評価で問題無しと判断されれば、あとは所轄の財政局へ報告するだけで良いという事です。(一例として、
蘇州市呉中経済開発区財政局のウェブサイトを参照して下さい)
帳票などのコピーなど承認に必要な書類を添えて申請します。申請後、財政局側で書類審査して、書類の不備、
記述内容の不備がなければ承認されます。申請した書類の内容に問題があると、更に詳しい書類の提出を求められる事があります。
徐汇区財政局の書類は少しずつ異なっていました。
ひとつの有力な方法と思います。筆者も、東莞市での最初の申請は、この方法で行ないました。
●上海地区で承認が必要という根拠
以下に、闵行区と徐汇区で取得した関係書類を示しますのでご参照ください。
●既に会計ソフトを使用している企業が、金蝶や用友へ変更する場合は届出だけで良いか?
申請・承認が今でも必要な地区では「違い」ます。
会計ソフトの使用は届出だけでよい財政局(寧波、蘇州)もありますし、申請と承認が必要な財政局(上海市、東莞市)もあります。
承認が必要な地区では、たとえ金蝶や用友への変更でも、原則として同じ申請と承認の手続きが要求されています。
●東莞市で実際に申請した時に要した申請書類の一覧表です。
●東莞市で実際に取得した承認証書です。
●正確な知識を得るには?
自分で財政局へ行く事です。
私がここ数ヶ月間をかけて調査した経験では、正しい情報は各地区の財務局へ入って、
実際に担当の役人から自分の耳で話しを聞く事だと思います。企業内にいる財務や経理のマネジャー
(たとえ中国での公認会計士資格を持っていようとも)や、会計監査法人のコンサルが、
必ずしも最新の情報を持っているわけではない無いという事が良くわかりました。
●上海で始まった財務帳票の電子化は、何年後かには中国全土へ広がる可能性があります。
●2006年度中にも、上記のルールや内容は新たな告知により変更され、より簡単になる可能性もあります。
(*)2006年1月に調査した上記記載内容に誤記、誤認がありましたら、
コメント欄にてご指摘頂けましたら幸いです。それ以外にも、誤りに気づいた場合には筆者の判断で本文を随時更新致します。