日本のエコシステムの合理性について考察する

松本徹三氏がアゴラで、SIMロック解除論について再論を試みていますが、その論旨はまったく変わっていません。しかし、今回記事の冒頭文は、松本氏の意見がシンプルにまとまっているので以下に引用します。

「通信事業者が、端末、コンテンツ、ネットワークの「三位一体」の「要」となり、ワンストップショッピング、ワンストップサポートのメリットを実現している「日本の携帯のエコシステム」は、歪んでいるどころか、極めて合理的、且つ先進的なものであり、欧米の通信業者にも「一つの模範」と考えられているものです。」

日本のキャリアが行っている「三位一体」のエコシステムが先進的である事は確かです。しかしその合理性は、海外(欧州、北米、アジア)でも合理的と言えるのでしょうか?

日本は、「三位」のすべてを国内企業が提供でき、全国一律料金が可能なほど国土が狭く、島国なので日常的な海外ローミングが発生しません。人口が1億人を超える市場規模なので、国内だけでメーカーが食ってゆけます。ガラケーにおける「三位一体」のエコシステムの合理性は、日本市場の特殊性と切り離す事はできないようです。

上記をふまえて、いくつかの国を見てみましょう。

中国は、自国で端末開発とネットワーク構築ができる技術力と市場を有するまでに成長しています。しかし国土が広く、同一キャリアでも全国一律料金になっていません。上海から蘇州へ転勤すると、多くの人は現地調達のSIMに買い換えて、同じ端末を使い続けたいという強い要望があるようです。

フィリピンは、国土が狭いので全国統一料金です。しかし、自国で端末とネットワークを開発する技術力がないので、ガラケーをつくれず、標準品のGSM/3Gのセットを導入する他に手段がありません。

欧州大陸は、国境を越えた人の移動が日常的に発生しており、自国の特定のキャリアでしか使えないガラケーや、そういうサービスを望む人は非常に少ないでしょう。

このような例を見ても、松本氏が主張する「三位一体」の合理性を満たす前提条件は、日本以外では非常に難しいと言えます。

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3 Responses to “日本のエコシステムの合理性について考察する”

  1. heridesbeemer
    5月 11th, 2010 at 19:50
    1

    日本と北米のCDMA市場は、独自システムをきづいているので、事情はべつですが、それ以外のところは、電話の共通性は高い。それに非常に多数のSIMロックなし、メーカーブランド端末があって、そういうものは、国境を跨いで流れていく。周波数もテクノロジーも同じだし。違うのは、搭載言語だけ。

     NOKIAなどは、自社のサイトで、国別のオペレータと自社フォンの型名で、オーバーザエアーで、設定パラメータを、ユーザーが降らせることを可能にしているくらいだ。

     実は搭載言語対応は日本語といえど、難しい話ではないし、レッドバロンが逆輸入二輪車をいれるように、ヤマダ電機とか日本通信が、海外ベンダーと話して、入れればいいと思うのだけれど。

  2. hitoshiy19
    5月 14th, 2010 at 19:36
    2

     こんばんは。
     アゴラは検閲がきついのか、筆者の発言に反したことを書くと全然載らないので、ここに書いてみます。

     米国、欧州のメジャーなオペレータには、日本と同様の「キャリア仕様」が存在します。つまり、顧客のenclosureは欧米においても同様に存在します。特に、最近は日本型のコンテンツ囲い込みの収益構造が理解されてきており、網状の設定だけでなく、ポータルサイトの要件が細かくなっています。なので、松本さんの「先進的」(ビジネスモデル)というのは、その通りだと思います。

     欧州においても、国境を越えてグループ企業(例えばVodafone系)が存在するので、国境を越えるから汎用端末の需要があるというのも、そもそも国境を越えるような場合にヘビーなコンテンツアクセス需要があるという仮定もずれていると思います。当然割高な料金になるので、普通は音声通話以外にはかなり抑制的です。

  3. bobby
    5月 14th, 2010 at 20:45
    3

    hitoshiy19さん、

    >筆者の発言に反したことを書くと全然載らないので
    真正面から批判コメントを書く場合、きちんと理屈が通っていないと「ばっさり」斬られる事もあるようです。お気をつけ下さい。(笑

    専用端末+専用コンテンツで日本が「先進的」である事は否定しません。しかしながら、それは中・長期的には袋小路のエコシステムになる可能性が高いので、標準端末によるオープン系のコンテンツにした方が良い、というのが私の意見です。

    ひとつの例を挙げると、ホストコンピュータ(あるいはオフコン)と、Unix/Linuxによるオープン系コンピュータの競争を思い出してください。技術でも性能でもホストコンピュータが勝っていましたが、結局はオープン系の普及により淘汰されました。

    オープン系が勝利した理由はいろいろあるでしょうが、汎用のCPUやメモリやHDDやIO等の性能が著しく向上した為に、費用対効果が10倍以上になった事が大きかったと思います。

    国内は、2Gの頃はiモードでインターネット利用者が爆発的に増えました。しかし3.5Gの時代になり、HSDPA対応でブラウザも付いた標準多機能端末が2万円で買える時代になりました。そろそろエコシステムの転換をはじめないと、遅れてきたオープン系に根こそぎやられる事になりかねないと考えています。

    ところでAppleは、オープン系の中でもSUNのようなポジションかと思います。その抗馬であるアンドロイドはさしずめLinuxでしょうか。Appleはジョブズのカリスマと神業的なUIで今はトップを走っていますが、何年か後に、最終的に勝利するのはアンドロイドであろう予想しています。ジョブズが永遠に生きている訳ではないし、アンドロイドもいづれAppleのUIをキャッチアップするでしょう。そうなれば、何の縛りもないアンドロイドの自由さは、多くのプログラマを引き付けて、iPhone/iPadの何倍ものアプリで消費者を引き付けるようになると考えます。

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