政府の仕事、企業の仕事

市場原理主義という言葉があります。wikiによれば「政府が市場に干渉せず放任すること」とあります。これを原理主義的に追求する人の事のようです。昨年前半に雇用問題の議論が沸騰した時、私を「市場原理主義者」と罵倒した方もおられましたが、繰り替えし否定しました。私の信条は、「目的を達成する為に合理的である事」であって、市場を原理主義的なレベルで信用してはいません。

市場の参加者が自由に競争できる環境があり、参加者が公正な競争を行っている場合に、政府はなるべく、市場に介入するべきではありません。JALのような大企業が倒産する場合も同じです。

しかし電波(放送局・携帯キャリア)のような、政府の許可と、特定の周波数帯の電波の貸与を要する事業は、業界発足時から自由競争を阻害する条件が組み込まれています。市場参加者は、そのような阻害条件を最大限に利用して、自社の利益を増大させる事は合理的な行動といえます。自由競争の結果として市場に歪みが発生している場合、政府は参加企業が中長期的に健全に成長し、消費者へ適正なサービスを提供し続けられるような方向へ、誘導する努力を行うべきであると私は考えています。

松本徹三氏はアゴラに、国策決定に必要な三要素という記事を投稿されました。その冒頭で、「国の将来を変えるような大きな決定をしようと思えば、そのベースとして、大雑把に言って三つのことが必要です。先ずは「ビジョン」、次に「発想(戦略・戦術)」、そして最後の一つは「検証」です」と述べています。

日本の携帯電話業界(特にソフトバンクとドコモのW-CDMA)が歪んだ市場を発達させて、グローバリゼーションが進む世界から置き去りにされようとしています。この歪みのもとになっている自由競争阻害条件は、限られた特定企業への、無線アクセス方式と関連した電波周波数帯域の割り当てであると思われます。

企業が「市場の事は市場に任せろ」と主張するのは合理的な行動ですが、民の財産である電波をつかっている市場では、政府がユーザーである人民の中長期的利益を考えた市場デザインを行う事もまた、合理的な合同であると考えています。私の目には政府が、国内携帯市場のグローバル化を「ビジョン」とし、その戦略として携帯端末のポータビリティー獲得、更にその為の戦術がSIMロック排除と周波数帯域を海外と合わせる事のように見えます。

ガラケーという言葉に、国内携帯市場の歪みの問題が集約されています。この歪みを正す為に、原口総務大臣がSIMロック排除を検討しています。ガラケーの問題は「SIMロックとは関係ない」とは松本氏が繰り返し主張していますが、「SIMロック排除」を前提とした自由競争を行えば、結果として、市場は専用サービスのアンバンドルへ向かわざるを得ず、最終的には国内と海外の端末機能にほぼ完全な互換性が生まれる事で、携帯業界のグローバル化が加速し、ユーザーの便益も更に向上するでしょう。

Facebook Comments
Tags:

2 Responses to “政府の仕事、企業の仕事”

  1. heridesbeemer
    5月 9th, 2010 at 18:40
    1

    SIMロック排除などをやれば、寡占オペレータの術策に陥り、政治的負債をかかえこむことにより、日本のガラパゴス化は、よりすさまじいことになることでしょう。

     必要なのは、端末とサービスのオープン化で、あって、断じてSIMロック排除などではない。

  2. heridesbeemer
    5月 11th, 2010 at 19:15
    2

    さきのコメントだけでは、なぜ、SIMロックの排除が、ガラパゴス化の促進にいたるか、はしょりぎみもあるので、改めてコメントしておこう。

     iPhoneを除くと、日本の端末の圧倒的多数は、日本の端末ベンダーによって製造されて、オペレータが承認したものである。
     日本の端末ベンダーは、端末市場の冷え込みにより、どこも経営状況はいい、とはいえない。

     さて、SIMロックを強制排除すると、端末の仕様はそのままで、値段はあがるから、端末市場は冷え込んで、中古端末が値をあげることになるだろう。(機能的には、既に、3.5Gという枠内では踊り場なんだし。HPDSAも必要としない人も多いだろうし。)
     それで、この事は、端末ベンダーが政府に泣き込みをいれることになろう。そのこと事態は、オペレータは、痛くも痒くもない。
     そして、端末のオープン化もサービスのオープン化も、何も達成されずに、政府の失策という結果が残る。
     すると、どうなるか、というと、寡占オペレータをレギュレートできる唯一の駒、政府を消費者は、失うわけだ。

     すなわち、SIMロックが、どうのこうの、という話は、まるきり、的をはずしているわけである。
     大事なのは、日本における端末とサービスのオープン化の進展であり、今の寡占オペレータ承認端末に、SIMロックがかかっていようが、いまいが、そんなことは、全然関係ない。
     

Comments are closed.