SIMロック排除は効率的なビジネスモデルの再構築を促進する

SIMロックの排除を国が強制するかもしれないという事について、松本徹三氏が「恨み節」を長々と詠っているようです。確かに、何事によらず国に強制されるのは心情的には不愉快ですが、(外から見て)日本の歪なケータイ電話市場を是正する為に、今回は、国による市場への干渉が正当化されるケースかもしれません。

松本氏は、日本のケータイ市場はもともと「特殊な背景」で成長したので、(東芝やシャープのような)メーカーでなく(ドコモやソフトバンクのような)キャリア主導でケータイの仕様決めや販売が行われているのであって、そのビジネスモデルが成立する為にSIMロックは必要である、と述べています。SIMロックを外すと、キャリア毎の独自サービスの互換性が「無い」ので、販売側もユーザーも混乱するだけで、ユーザーのメリットにならないと主張しています。

では視点を変えてこの問題を眺めてみましょう。ドコモやソフトバンクが、他社と接続の互換性の無い「サービス」構築をしたり、販売奨励金を出せるのは、SIMロックという前提条件が出発点です。逆に言えばSIMロックがあるからそこ、集客の為に独自サービス構築に投資しなければならず、その為に「我社専用仕様」のケータイをつくる事になり、その為に製造原価が世界一高いケータイを売る為に販売奨励金や特別な割引制度が必要になってしまうと考える事ができます。この状況を改善するきっかけが、SIMロック排除です。

ドコモやソフトバンクの事業目的は、通信による利益の追求です。SIMロックや、独自サービスや、販売奨励金に固執する必要がどれだけあるでしょうか。ノキアやサムソンの普通のWCDMAケータイを売って、今までと同じように利益を得られるのであれば、そちらの方が事業効率がより高いと言えます。ケータイを供給する業者も世界中から選択できるようになります。

もうひとつ、SIMロックを外して海外へ輸出する問題ですが、これは松本氏が述べているように販売奨励金や特別割引による不自然な安売りが原因です。これがなくなり、国内でのキャリア間移動ができるようになった時点で、激減すると断言できます。なぜなら、そのような状況では安価に調達したケータイには「縛り期間」が導入されて、購入即中途解約すると正規購入額を一括支払いする事になるでしょう。調達コストが増して旨みがなくなれば、それを行う者が減ると考えるのは合理的でないでしょうか。

以上のような理由から、国による「SIMロック排除」は、お互いの首を絞めあっているキャリアの問題を解決して、世界標準かつ効率的なビジネスを再構築する機会を与えてくれるものと考え、松本氏のSIMロック批判は再考の余地有りとご指摘させて頂きます。

Facebook Comments
Tags: , , , ,

3 Responses to “SIMロック排除は効率的なビジネスモデルの再構築を促進する”

  1. Tetsuzo Matsumoto
    4月 3rd, 2010 at 20:29
    1

    失礼ながら海外の事情をあまりご存じないようですね。欧米でもSIMロック端末は勿論ありますし、端末の高度化と共に増える傾向にあります。ロンドンでは、ノキアの同じモデルの端末が、ロックありなら持ち帰りゼロ円、ロックなしなら約6万円という値段がついて並べて売られています。米国でも「やはり端末コストが500ドル近くなると、長期利用を前提とした販売奨励金モデルでないと売れない」と言われ始めています。日本の携帯市場のエコシステムは歪んでいるわけではなく、むしろ世界に先んじているとも言えます。勿論日本メーカーの端末が世界市場で売れないこととは何の関係もありません。

  2. bobby
    4月 3rd, 2010 at 22:37
    2

    Tetsuzo Matsumotoさん、コメントありがとうございます。

    >海外の事情をあまりご存じないようですね。

    この記事は、私が住んでいる香港を参考にしております。うちの会社にはモバイルマニアも沢山おりますので、欧米の事情も承知しております。

    >むしろ世界に先んじているとも言えます。

    ただの思い込みでしょう。増える傾向というのは、高機能化ではなく高価格化の為かと。高額端末をたくさん「買わせる」為には、販売奨励金は不可欠ですね。

    販売奨励金で高額端末を安く売りたい場合は、基本料金を高くして2年契約で縛り(クレジットカード払いなら逃げられない)端末代を回収するか、最初に本体価格分の「預かり金」を払わせ、それを1年とか2年かけて月額費用から機械的に引いてゆくというスキームなら、SIMロックは必要ないでしょう。香港ではおおむねそのような縛り方のようです。

    日本では逆に、高額端末を普通に購入して、好きなキャリアのSIMを挿せるオプションを早急に用意するべきです。ソフトバンクで購入したiPhoneをドコモのSIMで使いたいユーザーは大勢いるはず。アップル香港で販売しているSIMロック無しiPhoneは、けっこう日本へ輸入されているという話を聞きます。

    国内ケータイを購入即解約して海外へ売るユーザーがいる一方で、SIMロックの無い海外仕様のケータイを個人で輸入して使用しているユーザーいる事もお忘れなく。

  3. akira.takahashi
    4月 4th, 2010 at 16:32
    3

    初めてコメントします。「日本では逆に、高額端末を普通に購入して、好きなキャリアのSIMを挿せるオプションを早急に用意するべきです。」とありますが、この高額端末が売れなかったらだれが責任をとるのでしょうか。キャリアに売りたくもないものを強制的に販売させるという社会主義的な発想ではなく、
    この様な高額端末を、メーカー(特に海外メーカーに期待)が自主的に販売できるような、周波数やプラットフォームの国際標準化などの環境整備を政府が支援することが大切だと考えます。

Comments are closed.