内部留保は賃金でなく国内投資へ回せ

2月 23rd, 2010 Categories: 1.政治・経済

経済101のRion氏が、すくらむのトヨタもキヤノンも内部留保を使うが雇用には使えない? -10年で2倍増の内部留保こそ“埋蔵金”を批判して、余剰資金は成長産業へと提案されています。この記事の中で、「日本企業が不必要に資金を保有しているとしてこれをどう使うのが望ましいだろうか。もし企業の雇用・賃上げに使えば、不景気に関わらず利益を出している好調な企業にいる社員やそこで運良く採用された人は喜ぶだろう。しかし、それが社会全体からみて効率的な活用方法だとは思えない。労働者を助けるというなら、失業者や不調な企業の従業員が先だろう」の部分について、小倉弁護士が「かくも痛い提案」をされているので、氏の記事を批判してみたいと思います。

氏の記事を要約すると、「内部留保を賃金という形で従業員へ移転すれば、家計を通して内需を潤して、新しい雇用を生み出すきっかけに成り得る」という事だと思われます。(要約が間違っていたらご指摘ください)

さて、労働者がもらう主要な賃金を大きく分けると、月次でもらう給与(基本給+残業費+手当等)と、年1-2回のボーナスになります。まずは内部留保(以降は利益余剰金という言葉を使用します)を給与アップの原資にした場合について論じます。

給与は毎月、継続して発生する固定経費といえます。年に1度だけ計上される可能性がある利益余剰金を原資に、固定費である給与アップを行う事は、経営者として非常識と非難されて当然の行為と言えます。

なぜ非常識なのか。会社を経営した事がある人にとってはあたりまえすぎる事ですが、毎月発生する(給与を含む)経費は、月次の損益計算書が長期的に負担可能な範囲内で経費予算をつくります。「利益余剰金で給与アップする」と、経費が月次損益で負担可能な経費総額レベルを上回り、毎月の月次損益が連続して「赤字」になる可能性があります。赤字にならないまでも月次損益の利益が圧縮されます。そのような上場企業は、株式市場から嫌われて、間違いなく株価が低下し、銀行からは貸付金の早期返却を求められ、株主総会では非難轟々、経営者の末路は明白です。

「利益余剰金を給与アップへ回す」事には、他にも経営上の問題があります。給与は一度アップさせると、労働者の気持ちの中では既得権となり、アップ分を年度末でリセットする事が容易ではありません。減給は、法律的な問題だけでなく、労働者のモチベーションを低下させて、経営上のいろいろな問題を発生させますので、あとから給与を下げる事を前提とした給与アップは、経営的には下策中の下策といえます。

次に利益余剰金をボーナスの原資にした場合について論じます。利益余剰金を「ボーナス増額分」として、労働者のモチベーションが利益増大に大きく貢献する職種(経営、研究・開発、マーケティング・営業など)へ分配する事は、経営者にとって正しい選択だと考えられます。弊社でもその手段を取り入れていますし、既に実行している企業は既に多くあると思われます。しかし一時金としてのボーナスは、ごく短期的な経済効果しかなく、Rion氏が指摘するように限られた企業の労働者だけが対象となります。ゆえに、景気を(継続的に)良くしたり、ボーナス需要が新しい雇用を生む実質的な効果があるとは考えにくいと言えます。過去の例として、2008年のリーマンショックまで、大手輸出メーカーは円安特需でたくさんの利益を出し、社員の給料アップ、ボーナスアップがあったと思われます。しかし、この時期の国内景気は良かったでしょうか?我々はこの時期を、「失われた20年」と呼んでいるのではなかったでしょうか。小倉氏の提案は過去の歴によって、すでに否定的な結論が出ていると言えます。

最後に、Rion氏とも小倉氏とも違う、私なりの利益余剰金(の中の現金残高)の具体的な使い方を2つ提案します。(Rion氏の考え方と、基本的な方向性は同じかもしれません)

私の持論は、日本の経済成長が止まった理由は、製造業のグローバル化による国内成長余白の縮小です。国内で一般消費者が購入する製品の工場(生産ライン)を日本へ戻す事で、国内の成長余白を生み出す事ができると考えます。また、海外から戻す生産ラインは、既存の工場へ戻すのではなく、東北や北海道あたりの未開発の農村エリアに新設した工業区の中へ工場建設するようにします。さすれば、国内で労働者の新規雇用は間違いなく増大します。

上記で国内製造によるコストアップを売価アップへ結びつける方法として、部品から人件費まで、すべて国内調達された製品に「内需振興支援シール」でも貼りつけて、マスコミを使ってプロモーションし愛国心(のようなもの)を喚起すれば、2-3割高くても商品者に受け入れられ、継続して商売になる可能性があります。総務省や経済産業省や財務省が強力して、「内需振興支援シール」や「法人税免税特区」などのターゲット政策で業界を支援する事が可能です。(このような非関税障壁的行為は嫌いですが、利益余剰金を国内成長と雇用促進に用いるという点で、ある程度効果があり、なおかつ投資対便益を定量的に補足し易い方法であると考えます)

もう一つの提案は、大手企業(製造メーカーや商社)が、利益余剰金で、高い技術を持つ国内の中小企業零細を積極的にM&Aする事です。この時、買収した中小企業を本体内に完全に取り込むのではなく、もとの企業の実体を残したままで増資や自社製品への組み込みを行い、株式市場へ上場できるまで成長させた後に、MBOで経営者へ買取らせるか、外資へ売る事で利益を出します。国内中小零細企業の成長を促進させる事は、実体経済の成長と新規雇用を生み出す事は間違いありません。

Facebook Comments
Tags:
Comments are closed.