スパコン予算を復活させる条件

池田氏は沈没した「スパコンの戦艦大和」で、経済学的観点から世界一のスパコン開発を否定しました。一方で西氏はスーパーコンピューターを復活してほしいで、IT業界的観点から世界一のスパコン予算復活を願っています。

私もIT業界に属する者として、日本のスパコン世界一の復活を願っているのですが、政府予算での開発については条件があります。IBMやクレイのように、最高性能のプロトタイプマシンの技術を用いて、世界中に売れる量産モデルを生み出して欲しいという事です。もしも富士通が、今回の予算を使って世界一のスパコンを生み出し、その技術やノウハウを用いた量産モデルを、日本メーカーが世界中にたくさん販売できるようにるのであれば、政府によるターゲティング政策には、それなりの意味が生まれると考えます。

かつてNECが自前で開発したSX-4(地球シミュレータに使用されたSX-5の前のモデル)は、米市場でクレイのスパコンと立派に戦って通商摩擦を引き起こし、1996年に米政府によりSuper301条を発動させるほどの商品力がありました。

初期型の地球シミュレータに使用されたSX-5は、クレイ社にベクトル型スパコンの開発をギブアップさせて、NEC製品をOEMで米市場で販売するほどの勢いがありました。

これらのスパコンは、政府の援助無しで、製造メーカー独自の技術開発と苦労によって生み出されました。

それから10年近い歳月が流れ、スパコン業界はクレイもIBMも、世界中がスカラ型に軸足を移してしまいましたが、いまだにNECはベクトル型CPUという要素技術にこだわり続けて、世界の潮流から取り残されてガラパゴス化しているように見えます。

現在のスパコンの潮流はCPU単体の速度(半導体要素技術)アップではなく、OpteronのようなCPUをどれだけ沢山、効率よく並列接続させるか、というシステム化技術がキーになっているようです。

スパコンというのは、いってみればコンピュータの中のスーパーカーです。フェラーリやマクラーレンは、F1で優勝する事で、世界中でスーパーカーを売っています。IBMが自動車業界のトヨタである事は間違いないですが、NECや富士通が業務用ハイエンド・コンピュータを製造・販売している事は、残念ながら世界のコンピュータ市場では忘れられています。(トヨタのF1撤退とF1文化に関するこちらの記事は、参考としては面白い)

私企業である富士通やNECが、税金を使って技術開発を援助してもらうのは褒められた話ではありませんが、それで日本に一流のスカラ型スパコン技術が根付き、スパコンランキングの上位に名を連ねるようになり、量産モデルが世界中でたくさん売れて、コンピュータ業界が再び活性化する事を「目的」とするのであれば、「やってみたい」と考えています。

追伸:ターゲティング政策というものは、企業側に「積極的なやる気」がある場合にのみ成功する可能性があり、政府の提案に企業が乗る場合には「予算消化」が目的になるので成功しない可能性が極めて高い。ゆえに今回も、企業側にどれだけ「自主的なやる気」があるのか、キーになると思われます。