押しても駄目なら引いてみな

10月 26th, 2009 Categories: 1.政治・経済

文理両道の風竜胆さんは、労働者の雇用規制を緩和して流動化を高める事ついて、「、雇用を流動化して市場原理に任せたとしても、はたして労働市場が効率的に働くかという疑問を持っているということです。市場は失敗をすることもあります。よく引き合いに出されるアダムスミスの「見えざる手」は、仮定を積み重ねたような実際にはありえない市場でしか働いてくれないでしょう」と、みえざる手の効用に疑問を持っているようです。

日本では終身雇用という幻想が広く社会全体(経営者、労働者、家庭の中、裁判官、政府の官僚、政治家など)に深く浸透しています。雇用問題は、理論や制度の問題ではなく、風竜胆さんを含む多くの日本人のエモーショナルな問題になっています。こういう問題の解決は、制度を変えただけでは解決しないと思われます。この状況を改善するには、「みえざる手」に任せるのではなく、「誰か」が適当な戦略を持って雇用・労働改革を進める事が必要と思われます。

私は、その「誰か」とは経団連が適任だと考えています。経団連主体の「雇用改革」は日本を変えるかで、「終身雇用」や「新卒雇用重視」という慣習は、高度成長期の中で、成長する企業による労働者の囲みを目的とした、「企業の都合」によって広がったと書きました。ならばこれを終わらせるのも、企業によって行えばよい。

具体的な手段は単純です。経団連とそれに加入する大企業が率先して、新規の雇用を「4月に新卒採用」から、「経験者を優先的に年中募集・採用」する方法に3-5年で段階的に切り替えて、ホワイトカラーの経験者が年中転職できる労働市場を構築します。(詳細は、こちらを参照ください)

大企業の転職者が多くなると、社会的なインパクトが起こり、もはや「終身雇用は終わった」という認識が社会に広がります。すると労働者は、自分のキャリアや待遇の改善を目的として、3-5年程度で転職を繰り替えすようになります。企業側も、年功賃金ではなく、現在価値への賃金を支払うようになり、年金、退職金などの制度もポータブルに適応するように変化します。

人は不思議なもので、会社から「整理解雇」といわれると絶望しますが、人材バンクから「ヘッドハント」されると「前向きに考える」事ができます。同僚がより良い待遇で転職すれば、「自分だって」と考えるようになります。

日本で「終身雇用」の幻想の呪縛から解き放たれ、企業と労働者層方の利益の為に雇用の流動性を高めるには、まずは経団連がリーダーシップを取り、大企業が率先して経験者の転職市場を構築するべきだと考えます。これの方法は、政府の法律改正の不要、裁判所の判例も不要、そして労働者が自ら進んで流動性を高める方向へ動く事ができます。

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3 Responses to “押しても駄目なら引いてみな”

  1. twice
    11月 4th, 2009 at 17:37
    1

    大企業の雇用の硬直を以て中小以下の雇用をはかっても無理があります。私は大企業から零細、重厚長大の旧態企業から新興のブラックと言われる企業までその現実をつぶさに見て参りましたが、大企業の組織プレーと中小の何でも屋は業務内容からリスクの取り方まで全く違います。ですが募集する企業も応募する個人も何が必要なスキルなのかが明示的に理解できていません。実際の募集をご覧になったことがありますか?また採用された人が業務とスキルのミスマッチでどれだけ苦しんでいるかご存知ですか?同規模で成り立ちの似た同業に転職する以外、ご提案が当てはまるとも思えません。人は経歴でははかれません。大企業であれば似た経歴を持つ人たちが毎年作られていきます。ですが、彼らは全く同じスキルや適性を持っているのでしょうか。面接で選別できるだけのノウハウを採用側は持っているのでしょうか。恒産無ければ恒心は持てないということを、ここ数年の社会状況は厳粛に語っています。例えば教育の荒廃は雇用の荒廃の結実です。また個人への与信は著しく縮小しました。将来は治安や収入格差による文化の断絶にまで問題が拡散するでしょう。雇用問題は政治問題であって経済問題ではありません。経済問題であれば、固定費を可能な限り変動費化することが経営リスクを引き下げるという点で、全ての雇用が流動化し、かつ経済状況で人件費の高騰と失業率の大幅増が繰り返されるでしょう。結果、雇用する側が大きく力を持つと同時に人心が荒廃することは間違いありません。とても頷ける意見ではありません。

  2. KY
    11月 6th, 2009 at 13:34
    2

    終身雇用幻想。
    いわゆる上から目線の自己責任論や、弱者への差別的視線というのは、全てここから生じていると考えます。
    なるほど、と思えるコメントがありましたので、転載させていただきます。

    >公務員の削減、大いに結構です。また、不謹慎かも知れないけれども、大企業の1つや2つ、潰れてくれないかな、とも思う。
    >今の貧困や社会福祉への無理解というのは、結局のところ、安定した立場にいる人たちの、「自分だけは定年まで安泰だろう」という(あり得ない)自惚れが生じさせていると思う。終身雇用幻想とでもいうのか。
    >公務員や大企業の社員でさえ首を切られるという現実があれば、他人事とは思えなくなるだろう。そして、現在のような企業中心の雇用、福祉制度ではなく、あくまで人間中心の、オランダ型のような社会体制をみなが志向するようになるでしょう。
    >以前カナダ在住の人が語っていたことで印象的だったのは「自由市場経済の中では誰もが困難に直面しうる。高給取りの銀行マンだって首になる。だからこそ、福祉やNPO活動などでみなが助け合うのだ」ということ。
    >もちろんキリスト教的正義感が根底にはあるだろうが、そうした制度からくる点も見逃せない。「情けは人のためならず」。日本の自殺率考えると、欧米の方がその考え方強いのかもしれません。
    >abdullah the butcher 2009-11-05 22:32:16
    http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10381088607.html

  3. bobby
    11月 6th, 2009 at 14:06
    3

    twiceさん、
    「大企業の雇用の硬直を以て中小以下の雇用をはかっても無理があります」
    労働者の大部分は中小零細企業に雇用されています。しかし「日本の雇用制度」という認識は大企業によって作られ社会が共有します。ですので、雇用の流動化を大企業からアプローチする方法は有効と考えています。

    「採用された人が業務とスキルのミスマッチでどれだけ苦しんでいるか」
    それは、現在の職場環境を前提として雇用が流動化された状態を考えるからです。大企業の雇用が業務知識や経験ある者(転職者)中心になり、労働者が企業間を循環すると、企業内スキルは業界内で平準化されてきます。故に、同じ業界内で、零細->中小->大企業への転職パスが開け、転職後のスキルのミスマッチも現象すると考えます。

    「面接で選別できるだけのノウハウを採用側は持っているのでしょうか」
    真っ白な新卒より経験者の面接の方が、いまやっている業務を中心に質疑応答で相手の力量が測れる分、面接は容易になると思いませんか。私の経験ではそう感じています。

    「雇用問題は政治問題であって経済問題ではありません」
    この記事で述べたアプローチはまさに、雇用問題を政治問題にせず、産業界の中で解決しようという趣旨です。政治問題にしたとたんに、いろいろな意見が噴出して、解決はとても難しくなるでしょう。

    「結果、雇用する側が大きく力を持つと同時に人心が荒廃することは間違いありません」
    産業が好況の時には、企業は人手不足になり、良い人材を引っ張りあうので、労働市場における労働者の力が相対的に増す事は明らかです。それが流動性の高い市場のメリットでもあります。

    KYさん、
    興味深い内容をご紹介頂き有難うございます。仰るように雇用の流動化は、正社員にとってもセーフティーネットを「他人事」でなくするでしょう。むしろ大企業の高給社員の方が、不況時に最初にリストラされる事が予想されます。そうなれば大企業の正社員も工場の労働者も、セーフティーネットへの関心はより高まる事になるでしょうね。皆が関心を持たなければ、何時まで経ってもよい「しくみ」は出来ないと思われます。

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