太陽光発電の収支計算
太陽光発電は原子力を補完するという記事の中で、太陽光発電の収支を計算してみました。1ヶ月晴天が続くと仮定した場合、収入から主な支出を引いた残額は34億円/月でした。この数字に対して、フロレスタンさんからこちらのご指摘を頂いたので、もう一度調べて反論を試みてみました。
【太陽電池ユニットの価格】
国内で個人住宅へ販売している製品を見ましたが、ずいぶん高いですね。そういえば、東莞のお客さんの工場で構内交換機(外線10本、内線50本程度の容量)の導入をする時、交換機本体と配線込みで50万円くらいの見積もりをしました。そのお客さんの日本の工場でもちょうど構内交換機の入れ替えを検討していたのですが、本社が(地元の業者から)某N社からもらった見積もりは300万円くらいになっていて驚いたと言ってました。日本の業者は何でも高い値段にしないと売らないのでしょうか。本記事の内容に戻ると、電力会社は、国内製品を買わなくても、米ファーストソラー社と直に契約して輸入すれば、中国と同様の価格で購入できるでしょう。設置時の人件費が(日本人が設置する場合)高くなるだけです。その分を2-3割と見込んでいます。
【パネルの面積】
日本では変換効率の高い多結晶型のものが主流のようですね。もともとの記事にあったファーストソラー社の太陽電池は変換効率が半分の薄膜型のようですから、同じ発電量を得るには、多結晶型の倍の面積を要すると思います。
【1日の発電時間】
日照時間と発電量の相関関係を表したグラフが下記URLにあります。
発電効率には差がありますが、晴天であれば1日に10時間以上発電するようです。最大効率で発電するのは午後の数時間のようですが。
http://219.121.16.30/blog/archives/000681.html
【太陽電池の寿命は25-30年】
太陽電池の寿命は、下記によれば25-30年くらいのようですが、DC/ACコンバータユニットの寿命は10年くらいだそうです。ですからコンバータユニットは10年で交換を前提とします。また減価償却期間は、前の記事で書いた通り、行政が太陽光発電を優遇する為に太陽電池設備の原価償却期間を30年にする事を前提としています。
1)wikiより
「屋外用大型モジュールの場合、過去の製品の結果などから、一般的には期待寿命は20~30年以上と考えられている」
2)サンテック社のサイトより
標準型太陽電池モジュールの納品書の日付から、10年以内は公称最大出力の下限値(公称最大出力の90%)が90%以上、25年以内は公称最大出力の下限値(公称最大出力の90%)が80%以上であることを保証します。
http://kk-suntec.jp/taiyo/jumyo.hml
【人件費の件】
すみません、企業の形態をあやふやにしていました。既存の電力会社へ電気を売るだけの会社か、あるいは既存の電力会社の子会社という事にします。社長と事務系管理者と技術系管理者を20人(こんなに必要か?)として、全員が月給100万円とっても、人件費は0.2億円/月です。メンテと敷地の警備はアウトソーシングしますが、たいした仕事ではないので、月額で0.05億円程度とします。
【月あたりの発電量と売電金額】
1ヶ月晴天が続くと仮定した場合(実際にはそんな事はありませんが…)、1日の変換効率を100%で2時間、70%で2時間、50%で5時間、20%で2時間と仮定し、売電単価を15.58円とした場合、1月の売電総額は54億円となります。つまり、
54億円 – 15億円 – 6.5億円 – 0.25億円 = 32.25億円
逆に経費割れする条件を考えて見ます。実際の日照時間と変換効率による積み上げを机上で計算するのは困難なので、単純に30日間晴天を100%として、雨天は変換効率0%とした場合、雨天が60%以上になると月次で赤字を計上するという事のようです。ちなみに、こちらのサイトによれば、山梨県甲府市の年間平均日照時間は1日あたり5.8時間です。
*上記の計算には仮定や理想値が含まれていますので、あくまで机上の空論としてお読みください。
事業計画に対する出資や融資の審査ではないので(笑)、これ以上は突っ込みません。
こういう形で、発電効率、売電価格、耐用年数、会社形態などが議論されて、よりよい形になっていけるとよいですね。
今回のやりとりはその一つのパターンとして認識してもらえたらよいと思います。
あ、あと一つだけ、日照時間のこと。
甲府市が5.8時間/日とありましたが、気象庁のデータを見ると、日本の場合太平洋側で日照時間が長い、東海、瀬戸内・四国、関東平野といったようなところで一番長くて、年間でだいたい2200〜2300時間くらいです。日平均だと6時間強。甲府市の5.8時間は最も長い地域の一つと考えられます。
>事業計画に対する出資や融資の審査ではないので(笑)、これ以上は突っ込みません。
おかげさまで、最初のバージョンより多少マシになりました。太陽光発電は、なんか「見え難い」ところがいろいろあって数字を煮詰め難い感じがします。実際の天候のもとで、どれくらいの発電パフォーマンスがあるのか、買電の単価はいくらかとか、良い資料が無くて中途半端にしか煮詰まりませんでした。
国内で値段が高いのは、工務店レベルが商売にしているからでしょうね。米国産の安価な薄膜型のユニットが価格破壊を促して、安くカンタンに販売・取り付けできるようになれば、国内価格ももっとリーズナブルな価格に下がるのではと思います。