大学教育と企業人事の改革で競争力アップ

8月 16th, 2009 Categories: 1.政治・経済

この世に存在する様々な組織の中で最もトップダウン指向の強いもののひとつが軍隊でしょう。手元のミリタリー小説をざっと眺めてみると(たぶん正確ではないでしょうが)作戦を練って部隊の指揮を行う佐官(大佐・中佐・少佐)があり、その下で部隊単位での指揮を取る尉官(大尉・中尉・少尉)があり、細かく編成された隊の兵士を直接管理する下士官(曹長、軍曹など)があって、命令系統と仕事の役割分担は極めて明確になっています。もう一つ、軍隊でユニークなのは、士官(士官候補生)を生み出すシステムです。軍隊には士官養成学校があり、そこでは士官として必要な理論から実務まで広範囲に教えられ、卒業するといきなり士官あるいは士官候補生となって、隊の指揮(あるいは指揮官の補佐)を任されます。新任指揮官の下には、古参の下士官(軍曹や1等兵)がいて実務をアシストしますが、それぞれの兵士(指揮官とその下の兵士)には求められる役割が異なる(指揮官は考え、兵士は銃を持って作戦を実行する)ので、経験の差によって兵士が指揮官の仕事とコンフリクトしたり衝突する事態は基本的には起こりません。

日本の(大きな)企業を見た場合に、大卒(あるいはMBA卒)ですぐに係長や課長を任される事はおそらく有り得ないでしょう。日本の組織では、末端で実務を行うサラリーマンと中間管理職との間に、明確な役割の差はなく、求められる知識に本質的な差がありません。「兵士」として入社したサラリーマンは、実務能力が優秀であれば、同期との競争に勝って昇進し、主任、係長、課長、部長と組織の階段を上ってゆきます。これはあたかも、一兵士が軍曹になり少尉になり、最後には大佐(部長=取締役)になるようなものです。経営の専門知識の無い社員が、経験の蓄積だけで経営者になったらどうなるか、という事を考えれば、日本の企業の状況(長期戦略が無く、経営努力といえば経費削減で、円安でなければ利益が出せない組織体質)が見えてくるのではないかと思われます。

軍隊を参考にして考えるのであれば、日本の企業も兵士(実行部隊の社員)と指揮官(課長・部長)は別の人事制度(採用基準、昇進制度、給与体系、権限と責任)を考えた方が良いのではないでしょうか。そして管理者(未来の経営者)を教育する為の専門教育を行う大学(学部)を検討すべきではないかと思います。そこでは実務、組織の管理方法、財務会計、マーケティングからERPによる経営情報の応用まで、管理者として必要な知識と技能を学びます。卒業したら、大企業の下級管理職(係長クラス)から出発して、経験と能力を積み重ねる事により部長への昇進を目指します。

そういう専門的管理職の中から、さらに(部長から上)の経営者を目指す人が大学院の経営学科あるいはMBAで大企業の経営ノウハウを身に付けるようなしくみにすれば、日本の企業の長期的な競争力を増大させる事ができるのではないかと思われます。池田信夫氏もこちらのブログで日本の教育と企業の有りようを批判し、「企業システムを変えないで教育システムを変えることはできない」と述べています。

Facebook Comments
Tags:

2 Responses to “大学教育と企業人事の改革で競争力アップ”

  1. Isaac
    8月 17th, 2009 at 10:05
    1

    この「士官養成学校」方式をとっているのが、他ならぬ日本の省庁のキャリア制度ですよね?キャリア制度の疲弊・弊害・腐敗しきった状況を考えると、果たして日本人に合うのかどうか、考えてしまいますね。日本の戦前の軍隊も、ある時を境に地獄にまっしぐらでした…

  2. bobby
    8月 17th, 2009 at 10:49
    2

    Isaacさん、コメント有難うございます。政府の中での指揮官といえば政治家です。政治家が下した決定を、粛々と実行可能な状態へ持って行く実行部隊が官僚組織です。

    とはいえ、官僚組織の中にも指揮官が必要です。もしも東大法学部を官僚組織の為の士官養成学校にするのなら、せめて政治学、経済学、経営学、会計学、システム工学(他にもあるかもしれませが)も十分に履修して、国力(企業の収益)を増大させ、国・自治体の経営を効率的に行う為の基礎理論を身に着けて頂きたいものです。

    更に「官僚コース」の学生は卒業を2年延ばして、民間企業で1年、自治体で1年、インターンとして実地訓練制度を取り入れるべきと思います。

Comments are closed.