経済心理学的シミュレーションによる未来予測は可能か

8月 14th, 2009 Categories: 1.政治・経済

池田氏はこちらのブログ記事で、「経済学者の役に立つ経済学ではなく、経済の役に立つ経済学が必要である」と述べています。

経済学が扱う市場という対象は、生産と配分とか、需要と供給とか、資本とかマネーサプライといった視点でアプローチしても、極論すれば、それは結果としての経済現象から架空の原因を追いかけているに過ぎないのではないかと思います。

いかなる市場も、それを構成するひとりひとりの人間の非合理的個人活動の集積であるとか、熱狂時やパニック時における群集心理であるとか、政府やメディア(構成要素は人間である)による世論の誘導であるとか、更には政府やメディアへの世論のフィードバックの影響などの要素が無視されています。

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経済学を役に立つようにする為のアプローチとして池田氏は、「私は経済学は物理学ではなく医学に学ぶべきだと思う」と提案しています。ここでいう医学とは恐らく「臨床医学」つまり医療の事を指しているのだと思われます。なぜ医療かというと、対象とする「生きた人体」が複雑系だからだと理解します。

しかし私はもっとストレートに、経済学は心理学を取り入れるべきではないかと考えるのです。経済心理学とか心理経済学という単語でgoogleを検索してみると、すでに多くの人がこのような考えを持っている事がわかります。たとえば「経済心理学のすすめ」という本がすでに書かれています。(この本の良し悪しについては、読んでいないのでコメントできません)

new-econimic-scheme-2009-08-14

そこで私なりの経済心理学を考えてみました。市場を構成する消費者、企業、政府、メディアはすべて非合理的な個人の活動の集積であるとみなし、ある状況での個人の価値判断や意思決定や活動の「傾向」を心理学的な研究と分析から取得して、「ある状況」にける市場のシミュレーションを行う事により、ある状況が継続した場合の未来予測を行う事を目的とします。

その為に何が必要となるかを試しに書き出してみました。

1)平常時において個人の行動の集積が市場へどのような影響を及ぼすのか。
2)好況時と不況時において、個人の行動の集積が市場へどのような影響を及ぼすのか。
3)好況時と不況時において、個人の行動の集積が大きなベクトルを構成して市場をある方向へ強く方向付けるのか。
4)企業や政府やマスコミ(市場に大きな影響・誘導を与える組織)が、市場を構成する個人の行動にどのような影響を与えるのか。
5)企業や政府やマスコミの内側で、それを構成する個人の行動が組織の方向性の決定にどのような役割を果たすのか。
6)企業や政府やマスコミが市場を構成する個人へ影響・誘導を与えた場合で、そこから発生する個人の反応の集積がおおきなベクトルを構成した場合に、市場を構成する個人、政府やマスコミを構成する個人に対して、どのようなフィードバックが起こるか。
7)フィードバックが市場全体の個人に対して、どのようなバイアスを生み、どのような強化や減衰が発生するのか。

現在の市場の結果を定量的に数式化する事によって、未知の事象におけるブラックスワンは発生します。私がここで書いた「経済心理学的シミュレーション」の目的は、定式化された経済理論を用いず、市場に参加するグループを常に個人に分解して、各局面における個人の行動傾向の集積によってダイナミックに未来予測する事で、ブラックスワンの発生を減らそうというものです。

これの最大の問題は、非合理的かつ予測困難な個人の意思決定と行動の傾向をいかにして「取得するか」という事につきると思われます。その為にこそ、心理学の導入が必要になるのです。

追記:
1)上記では、市場全体の行動を予測する主シミュレーションの他に、個人の意思決定と行動の集積である組織(企業・政府・メディアなど)の活動を予測するサブレベルでのシミュレーションが必要です。市場に参加するすべてのメジャーな組織は、カテゴリー毎にパターン化されてグループを構成します。

2)現在のコンピュータでは、少なくとも何がパラメタになるかをプログラム時に想定する必要があります。しかし現実正解は常に流動しているのでプログラムが完成した瞬間に、未知のパラメタが発生する可能性によって、別種のブラックスワンが生まれる可能性は排除できないと思われます。

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