日本が津波警告したら大規模な人的被災は防げたか?

1月 11th, 2005 Categories: 1.政治・経済

日本や米国では、地震により発生する津波の予報が発達しています。もし我々の国が今回の被災地へ警告を発していたら、これほど多くの人命が失われる事は無かったのではないかという意見があります。私の友人の香港人SEも、米国の政府機関を非難していました。しかしながら、私はこのような考えに対して否定的です。

被災国の政府機関が、津波警報を2時間前に受け取っても、それが十分に効果を表せないと思われる理由を以下に列挙します。

●政府機関内で、津波警報を誰が受け取り、誰が審査し、誰が最終的な許可をするか?
  政府機関はお役人が運営している。予め明確な指示のある仕事を行うのが(どこの国でも)お役人の責任です。これらの被災国では、政府が津波というものを認識しておらず、それに対する用意を行っていなかった可能性が極めて高い。そのような状態のところへ、いきなり日本や米国のから津波警告が来たとして、どのような仕事が期待できるでしょうか。政府機関内で、津波警報を誰が受け取り、誰が審査し、誰が最終的な警報の許可をするのか?また、このような審査をどういう手順で行うかが予め決まっていない場合に、警告がその部門で止まってしまう可能性は限りなく高い。まして1時間か2時間以内になにかの有用な結論や許可を出す事はきわめて困難でしょう。

●津波警告は、100%を保障していない。
  日本の優れた予測技術も、100%の津波の発生を計算によって知る事は(今のところ)できない。だから予測なのです。めったに津波が来ない国の政府へ、「津波が来るかもしれません」という予測を伝えたとしても、津波警報というしくみがないのだから、受け取った方は困るだけでしょう。「絶対に1時間か2時間以内に津波が着ますよ。ほら衛星写真をお送りしましょうか?」と、小泉首相が相手国の首相か大統領へ国際電話すれば、それなりの効果はあったかもしれませんが、それこそ非現実的なはなしでしょう。

●よしんば政府が津波警報を発令しようとしたとしても...?
  政府の1機関が「よし、津波警報を報道させるぞ」と決断したとして、前例のない警報を1-2時間で現地メディアへ伝えられるでしょうか?台風などの気象情報の伝達経路を利用するのは一つの手段ではあるでしょうが、ふつうの気象情報にはこれほどの緊急性がありません。ですので1-2時間で放送の準備ができるかは、大いに疑問です。また、海岸線のある町や村の役場へ連絡をしようにも、連絡する相手が何百もあるわけで、普段からコンディションの悪い国内長距離電話では、とても迅速な連絡はできないと思われます。

●もしも予備知識のない現地の人が津波警報を受け取ったらどうなるか?
  津波という大規模な自然災害について聞いたこともなく、生まれて一度も津波に逢った事もない人たちであれば、多くの人は警報を無視するでしょう。もし、津波の恐ろしい面を殊更強調したり、現地の警察を動因したりすると、今度は大勢の人がパニックを起して暴動になるでしょう。

●実際の津波は、予想の範囲を超えていた。
  インドネシアのバンダアチェは、今回の被災地の中で、最も多くの被害者を出したところです。バンダアチェの街中へ押し寄せる津波の映像をNHKで見ましたが、あれは私がこれまで抱いていた津波の範囲を超えていました。多くの日本人にとっても、そう感じられたかもしれません。よしんば津波警報が海岸線のホテルや家々に伝わっていたとしても、海の見えないところにいる人々が津波警報に注意を向けたとは思えません。数万人以上の犠牲者を出したバンダアチェの人々の多くは、津波警報があっても助からなかったのではないでしょうか。

日本や米国は、今後は津波予報をインド洋の国々にも出すという事ですが、実際に津波予報がきちんと効果を現すには、(日本のように)国をあげての大規模なしくみ(予報の送り手、中継者、受け取る人を含む)が必要です。

●政府の中で、津波予報を伝える経路、責任者を決定する。
●報道機関、地方自治体への迅速な伝達手段を構築する。
●地方自治体から、海岸線のホテルや漁民へ迅速に警報を出せるしくみを構築する。
●報道機関が、受け取った津波予報を即時放送できるようなしくみを構築する。
●学校や家庭で、津波の教育をする。
●日頃から自然災害の予報を出して、無視したりパニックを起したりしないよう、予報が予報の効果を得られるように広く徹底させる。
●地震や津波災害の予報が出たときの、避難訓練を行う。

これらすべてをもって、津波予報のシステムといえるのではないでしょうか。

Facebook Comments
Tags:
Comments are closed.